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育樹師協会 上

 話を聞いていた店員さんが、「魔道具化の効果を増すのに必要なのは、媒染液を作る際に使用する魔力水だそうですよ」と教えてくれたので、染料は結局、買う必要も自作する必要もなくなった。

 かわりに、みんなで染物工房に行く用事が出来たよ。

明後日がちょっと楽しみです。


「自分で染めるのも楽しそうなのに」


 と、にぃに(・・・)はご不満そうだったけど、服地ですよ?

きちんとプロの人に染めてもらった方がいいに決まってる。

生地だって高いからね。遊び半分に自分で染めて、失敗してしまったら目も当てられない。


「そうだ、せっかくだからおそろいの柄で染めようよ」

「ええ? 女の子の柄はちょっと抵抗あるな」


 せっかくおそろいを提案してみたのににぃに(・・・)がごねる。

男女の区別のない模様もあると思うんだけど。


「マリーも、ねぇねとおそろいっ」


 クイクイと袖を引かれてそちらを見ると、マリアちゃんが期待に目を輝かせてわたしを見てる。


「んじゃ、マリアちゃんとおそろいにしようか」

「うにゃっ」


 嫌がる人に無理強いするのもナンなので、立候補してくれたマリアちゃんとのおそろいを仕立てることに。にぃに(・・・)とだったら暗色系……と思ってたけど、マリアちゃんが相手なら華やかな色の方がいいね。どんな色がいいかと考えながらも、次の予定が口からこぼれた。


「あとは、グレイントレントがどこに売ってるかだけど――」

「魔樹や魔菜のたぐいでしたら、育樹師協会ですね。染織工房のものと一緒にご用意します」


 サラっと紹介状の追加を手配してくれる店員さんにお礼を言いつつ、倉庫を後にする。

クリスさんを回収したら、お次は育樹師協会だ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 クリスさんもマリアちゃんパパも、どうやら納得のいく商談ができたっぽい。

わたしたちが戻ったころには、ふたりとも満足そうな表情で歓談をしていた。

どうやら、明日の朝一番に果物を取りに来るそうだから、夜のうちに忘れずに借家の方に移動しておかないとね。納品頻度は五日に一度だから、それほど無理のある納期でもないのがありがたい。


 しばらく歓談したあと、マリアちゃんと明後日のお約束をしてから商会を出る。

もちろん、書いてもらった紹介状も受け取ったよ。

これがないと、そもそもお店に入れない。忘れたら大変です。


 育樹師協会は、デンティゴルの町の北――王都方面にある。

たぶん、植物系の従魔は潮風が苦手だからね。苗を育てるための土地も、北の方がたくさん工面できるというのも理由の一つじゃないかな。


「現在、お取引可能な魔樹・魔菜はあちらでご確認ください」


 受付のリスおじさんに紹介状を渡してから要件を告げると、たくさんの衝立が並んだ場所を示される。


「魔樹・魔菜は、育樹師ごとに採れる作物の特徴などを記載した板が吊るされています。ランクや値段などもきちんとご確認なさったほうがいいですよ。相場はありますが、場合によっては相場を無視して高額を提示している場合もありますから。なにはともあれ、ご希望のものがありましたら板を外してこちらまでお持ちください」


 利用方法の案内も聞けたので、さっそくチェックしに行くよ!


「うわ……ひとくちに銀麦って言っても、ずいぶんとたくさんあるね……」


 衝立ひとつにつき、上から五段で横十列の木札がズラッと下げられていた。

一応は種別に分けられているみたい。だけど、私が欲しい銀麦と白麦の生る(なる)タイプのトレントは、二枚の衝立の表と裏にいっぱい吊られている。


「ざっくり数えても二百枚ですか……条件を決めて、手分けして探すしかなさそうですね」

「うにゃ。そしたらわたし、下の二段分を見るよ」


 ほかの人には見づらい位置だし、わたしの背丈じゃ上の方を確認するのは無理なので。


 条件は、銀麦・白麦ともにランクD以上であること。

とりあえずはそれだけにして探してみることになった。チラッとみただけでも、Dランクの札が少ない。まずはそれで様子見です。


「えっと、銀麦は全部で二十二枚だね」

「とりあえず、この中から良さそうなのを選んじゃおうか」

「その間に、わたしたちは白麦の方をチェックしておきますね」

「うん。大変だけどお願い」


 みんなで探し出したDランク以上の銀麦トレントは二十二枚。

九割はFやEだってことだから、ウチは食事でずいぶんと贅沢してるってことが判明した。


 いや……正確には知ってたんだよ?

肉類だって、Dランク以下のものを在庫にしていない。魚介類は大きさ的な問題も込みでDランク以下のモノはあるけれど、そもそも水棲生物って旨味が強いからね。低ランクのものでも、案外、味に関しては気にならないのです。


 っと、話が逸れた。

なにはともあれ、その中でさらに仕分けてみると、Cランクが三枚とDランクが十八枚ある。さすがに、Bランク以上のものはないっぽい。


「やっぱりというかなんというか、圧倒的にDランクの方が多いね」

「Cランクの値段がエグい……二十万ラーメって、大金貨だよ?」

「でも、にぃに(・・・)。Dランクだって、結構なお値段だよ」

「四万八千前後だもんねぇ……」


 Dランクの銀麦は一ケログランで六十ラーメ。

銀麦だけを食べるのなら大食らい多いウチの場合、ひと月で多く見積もっても七千ラーメ分は消費するんだよね。【お庭】で育てれば、少なくとも年に二回は収穫できると思うので――四年もあれば、元は取れるはずです。

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