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指南書の価値

「にぃに(・・・)は何か見たいものがある?」

「とりあえず武器屋――と言いたいところだけど、昨日のマリアちゃんのとこにお邪魔するのがいいんじゃないかな」

「そのココロは?」

「フェリシアが、あの子に会いたいんじゃないかと思って」


 どうやらにぃに(・・・)。

昨日、マリアちゃんに対して大人げない態度をとったことを、ちょっぴり反省しているらしい。


「私も本日は同行したいと思います」


 今日は特に用事がないからと、クリスさんも着いて来ることになった。


「フェリシアさまは、何か欲しいものはないのですか?」

「ある。わたしはあるよ」


 お外でも使える深鍋を三~四個に、揚げ物用も二個。

フライパンや土鍋も欲しいね。どれも、大きなものを買い足したい。

だって、人数が増えたから!


「あと、指南書の値段を見てみたいな~と、思ってる。買えそうだったら買いたいし」

「スキルの指南書ですか?」

「うにゃ」


 マルコ君たちが、アレコレとスキルを習得しようと頑張ってるのを見て、思ったんだよね。

『指南書を読んでからの方が効率良いんじゃないかな?』と。


 前にトリーのお父さんが売っていた【魔石作成指南書】のHランクを使ったことがあるんだけど、どうもコレ。使ったからと言って必ずスキルが身に着くわけじゃないっぽい。

 スキルを習得できるかどうかは個人差があるようで、適性高い人は習得できる。

だけど、向いてない人の場合は気持ち早く習得できたかな~という程度の効果しか期待できないみたいなんだよね。


「にぃに(・・・)も苦戦してたでしょう? 【騎獣術】」

「まあ、そうだね……」

「少しでも習得の助けになるなら、みんなに買ってあげたいな……と」

「【騎獣術指南】でしたら、千ラーメくらいですね。交易が盛んな街ですし、売っていると思います」


 ……なんか、クリスさんの言葉まわしからすると、千ラーメでもお安いっぽい。

モリエロ王国で【魔石作成指南】を買ったときは銅貨一枚だったんだけど、千倍ってすごく高いよね?


「クリスさん、【騎獣術指南】以外のお値段がわかるなら参考までに教えてもらえますか?」

「よほど希少なスキルでない限りは存じ上げております」


 頼もしいお言葉と共に、クリスさんは手帳を取り出してサラサラと価格表を書いてくれた。

それによるとスキルランクはH~Fまでで、【戦闘系・一般生産系】は千ラーメ~十万ラーメ。【魔法生産系】が一万ラーメ~百万ラーメ。最後に【補助系】は五千ラーメ~五十万ラーメとなっている。

値段に幅があるのは、スキルランクによって桁が一つずつ増えるせいです。


 【魔法生産系】は、魔神さまが司る【癒食】【魔石作成】【魔道具作成】【魔法薬作成】【呪符作成】【魔法鍛冶】の六種類のことだよね。作るときに、魔力が必要になるヤツだ。

 【一般生産】は、それ以外のモノを作るスキル全般のこと。

うん、きちんと覚えてるね。


「ずいぶんと値段に差があるんだねぇ……」


 需要がありそうなのに、戦闘系は価格表の中では一般生産系と並んで最安値だ。


「戦闘系と補助系は、主に犯罪者からスキルをはく奪処理をした際の副産物です」

「スキルはく奪?」

「人を殺めた場合、神々のご加護を失うことはご存じですね?」


 ソレは知ってる。

直接的にでも間接的にでも、人を殺すような人は神々にも嫌われるからね。【加護の儀】で授かったスキルだけでなく、全身の体毛が失われるらしい。


 大きくうなずくのを確認してから、クリスさんは口を開きなおす。


「殺人の罪を犯した場合、即座に神々の加護は失われます。失われた加護は、罪人の魂から切り離され、休眠状態になるのだとか。この休眠状態になったご加護のうちランクC以上のモノだけは、神官の裁きを受けたのちに書物の形で物質化するのです」

「その書物が、【指南書】?」

「その通りです」


 【加護の儀】で授かるスキルは戦闘系のものが一番多いから、ある意味納得。

ちなみに、補助スキルの類も罪人から得られることが多いそう。ただ、補助スキルは絶対的に所持者が少ない。それで希少品になってしまうため、どうしても高額なるんだって。


「あとは、不当な方法で他者のモノを奪う行為も罪科に入ります。戦闘系以外のスキルは、詐欺や窃盗を行った者からはく奪されたものが多くなります」


 そのため一般生産系のスキルは、大体が詐欺・窃盗で捕まった人のものになる。

ここに魔法生産系スキル所持者が含まれることはごく稀らしい。


 なにせ魔法生産系の場合、習得者の人数が少ないんだよ。

非加護者最高位(Eランク)の素質を持った人でも、五万人に一人だと言われているくらいなので。

それに、基本賃金――というか、犯罪行為をおかすよりもまじめにモノ作りに励んだ方がお金になる。

なので、ごくまれに市場にでてくる魔法生産系の【指南書】は、商売下手なスキル保持者が日銭を稼ぐために作ったか、後継者に渡すつもりが、相手がいなくなって――って場合に限られるっぽい。


 ……いや、前者は普通に売れるものを作ろうよって思うんだけどね。

なにせ、Cランク以上にならないと【指南書】は作れないのだ。そのランクまで上がってるなら、普通に売れるものも作れるよね?

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