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禁止事項の再確認

「世界を作り給いし創世四神への感謝の祈りと共に供物を捧げます」


 食事前のお祈りの声とともに、目の前から供物が消える。

わたしやにぃに(・・・)からするといつものことだけれども、クリスさんの口からは驚きの声が上がり、リリーさんは小さく息をのむ。


「クリスもリリーも慣れてね。いつものことだから」

「はい……」

「いつものこと、なんですね」


 たしかに、いつものことだね。


 しみじみとした口調で呟いたリリーさんに、ロイさんは「うんうん」と頷きつつ、【お庭】の客室の居心地の良さを得々と語ってる。


「とりあえず、フェリシアさまが子供たちを連れて海上から逃亡してきた手段の一つについては納得しました」

「え。クリスはそこを、疑ってたの?」

「海上から陸までの移動方法も知りたいですね」

「ピニャーシュさんが【お庭】に閉じ込められた状態になっていたから、船の壁を切り抜いてもらってできた木の板を基礎にして氷のお船を作って、水流と風を操りつつ陸地に向かったよ」


 あの時、一番の問題は船の外に出る方法だったからね。

ピニャーシュさんが【お庭】にいてくれて、本当に助かったよ。でなきゃ、大きな音を立てて失敗していたかもしれない。

 ある意味『まさに神の配剤!』ってかんじだけど、実際には何の意図もないっぽい。

ただ、『いざという時の隠れ家になるし、便利だから』と神子や愛し子には必ず所持スキルに応じたものを拡張してくれているだけだそうなので。


「ん……フェリシアさま、料理上手ですね」

「でしょ? フェリシアの作るご飯はすごく美味しいって言ってた通りでしょ」


 あら汁を口に含んで頬を緩めるリリーさんに、なぜかにぃに(・・・)が胸を張る。


「確かに、これは店を出せるレベルだと思います」

「出しませんよ?」


 クリスさんまで持ち上げるようなことを言うので、思わず苦笑が漏れた。

自分や身内と食べるために作るのは好きだけど、料理だけを一日中するお仕事はしたくない。一日中やってもいいかもと思えるのは、今のところ魔道具作りくらいかな?

まだ、先人が作ったものを模倣しているだけだけど、もっといろいろと作れるっぽいのでいつかはオリジナルの魔道具を作ってみたいんだよね。


「なにはともあれ、子供たちと脱出した経緯と手段については納得しました」


 ついつい話が横に逸れそうになったのに気付いたんだろう、コホンとひとつ咳払いをしてクリスさんは続ける。


「現状、フェリシアさまのスキルや魔法を秘匿するという判断は正しかったと言わざるを得ませんね……とりあえず、トニエ神国に着くまでの間は継続した方がいいでしょう」

「だよね~。魔神さまがカバーする範囲が広いから、フェリシアは異様に多芸に育ってきてるし」


 クリスさんの言葉には『めんどくさいな』という感想しか浮かばないんだけど、にぃに(・・・)にはちょっと反論しておきたい。


「そんなに出来ることは多くないよ?」

「【従魔術】【魔石作成】【魔道具作成】――【癒食】と【料理】はセット扱いでいいかもだけど、どれもCランクは超えてるよね?」

「まぁ、それはそうだね」

「【魔法鍛冶】を除いて、ほぼ戦闘スキル系しかない僕からすると十分に多芸だよ」


 むしろ、わたし。戦闘スキルはひとつもないですが、なにか?


「魔法も素質的には十二種すべて使えるんでしょう?」

「まあ、それもそう」

「フェリシアが積極的に使ってない魔法っていくつあるの?」


 火・精神・幻影のみっつかな。

ジト目を向けてくるにぃに(・・・)から、無言で視線を逸らす。


「僕は錬金魔法しか使ってないからアレだけど、三種しか授かってないからね?」

「……多芸デシタネ、スミマセン」


 視線は逸らしたまま、小さな声で謝った。


 そういえば、一般的には魔法が一種類でスキルも一~四つだったね。忘れてたよ。

特にわたしの場合、魔法をすべて使えるようになるのが大きい。魔法属性は、スキルと違ってあとから増やすことはできないからね。


 スキルの場合は、【加護の儀】とは関係なく鍛錬によっても覚えることができる。

その上、場合によっては努力によって得たスキルの方が素質が高いなんてこともよくある話っぽい。

【加護の儀】では多くの場合、小さいころから親の仕事を見て覚えたり、好きで繰り返していたものをスキルとして授かるそうなので。

 サラの【描画】スキルが良い例だと思う。

あのスキルは、彼女がただただ絵を描くのが好きで身に着けたものっぽいので。


「……多芸なのは置いておきましょう。とりあえず、【お庭】(ここ)以外では【魔石作成】と【魔道具作成】は使わないようにしましょう」


 お金に直結する魔石と、作れるランクによっては大金が稼げる魔道具は作れることがバレると面倒だから、と説明が続く。


「今、【魔法薬作成】を鍛え始めてるんだけど――」

「では、それも外では使わない方向でお願いします。とはいえ、作成した薬を使う分には問題ありません」

「魔道具ほど高くないからねぇ」

「それなりにスキル保有者がいますから。この点に関しては【癒食】も同様ですね」


 それでもやっぱり、自作だと言うのは危ないので禁止らしい。

【癒食】も、スキル持ちだと言うのはダメだと念を押された。むしろ、何も言わなければ、魔素の調整された食材を買って作っているんだなと思われるだけなのでその方がいいっぽい。


「ややこしいね」

「ややこしくはありませんよ。フェリシアさまが息をするように呼び出す従魔は普段通り呼んでもかまいませんし、料理もし放題です」


 なんか、さも寛大にも許可します的に聞こえるんだけど、要は利便性からだよね?

多人数での移動には従魔がいた方がいいし、ご飯は美味しいものが食べたいに決まってる。


 でもまあ、いっか。

魔導チップを人前で作るのが危険なのは身に染みたし、魔石だって人前で作らないほうがいいのは理解できる。魔法に関しては、意味もなく使うことはないので特に制限もない。

特にごねるような無茶を言われているわけでもないので、素直に頷いておくことにしよう。


「ところで、この禁止事項はトニエ神国に着いたら解除?」

「トニエ神国で加護者登録をした後に解除しても良いと思います。かの国は、加護者が多いことで有名です。理神さまのご加護も厚い地ですので、犯罪者も少なく危険が少ないはずですから」


 それって一周回ると、他の国は危険がいっぱい的な意味かな?

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