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武勇伝?

「この度は、兄のわがままを聞き届けた上でのお招き、誠にありがとうございます」


 にぃに(・・・)が応接室に入ってしばらく時間をおいてから入室すると、にぃに(・・・)と一緒にお祈りをしていた人のよさそうな猿人の神官さまが出迎えてくれた。

嫌な顔一つせずに迎えてくれた神官さまに対しての第一声が冒頭のものだ。


 言い切るのと同時に静かに頭を下げ、「どうぞ楽になさってください」との声をかけられてから立位に戻す。


「神子様の妹御であらせられると伺っております。固くならず、楽になさってください」

「お心遣いありがとうございます」


 神官さまに微笑み返し、身振りですすめられたにぃに(・・・)の隣に腰掛ける。

すぐさま腰に巻き付いてきたシッポには驚いたけど、ちょっとだけ、甘えたい気持ちが落ち着いた。


「仲がよろしいのですな」


 猫かぶりで押し通すことに決めたらしく、にぃに(・・・)は笑みを浮かべて返すだけ。

いや、ここはキチンと会話をしないと気まずいでしょう。軽くシッポで背中をたたくと、ようやくにぃに(・・・)が口を開く。


「お聞き及びの通り、妹とはすでに半月以上も離れておりましたので……」

「バッジ王国だけでなくわが国にも根を張っているという、違法奴隷組織に捕らわれておられたのでしたな。ご無事な姿に、さぞかし安心なさられたことでしょう」


 どうやら神官さまは、わたしたちを誘拐&奴隷として売ろうとしていた人たちの話が聞きたいらしい。

その話ならわたしも興味がある。


「お話しするとなると、長くなってしまうのですが……」

「では、是非とも昼餉をともに摂りながらお願いしたい」


 神官さまとわたしの二方向から『聞きたい』と視線で責められ、にぃに(・・・)が折れた。

そして、神官さまと食べることになったので、ピニャーシュさんに伝言をお願いしてマルコたちとのランチは後日にさせてもらう方向で調整です。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 わたしが攫われたあと、どうやらにぃに(・・・)も大変だったらしい。

とりあえず箇条書きにしてみるとこんなかんじ。


【神殿関連】

 ・誘拐犯の一味だという濡れ衣を着せられて牢に入れられた。

  (手紙で見たね)

 ・大神殿が汚職まみれだった。

  (故郷の大神殿もそうだったんじゃないっけ?)

 ・大神官さまがすでに祝福を失っていたので追放&新任の大神官さまを選出した。

  (なんで誰も、大神官さまの状態に気づかなかったの?)

 ・神官・巫女の序列が能力と関係ないところで決まっていたので、能力順に整理した。

  (これも汚職の一部だったっぽい)

 ・縁故で入っていた能力のない神殿管理官と神殿守護兵を解雇させた。

  (そういう人事権って、にぃに(・・・)にあるの?)


【違法奴隷商関連】

 ・お役人さんが人さらいに協力していそうだったので、王様に国神さまと一緒に直訴した。

  (ついでに、別の汚職もたくさん見つかったっぽい)

 ・国神さまと人さらい組織の捜査の指揮を執った。

  (なんで、にぃに(・・・)が? 本職の人は何してたの?)

 ・見つけたアジトを強襲した。

  (にぃに(・・・)は神官だよね? なんで、強襲?)

 ・大規模なアジトを全部潰せたので、自力で逃げ出してきた妹と合流するためにソルベル王国に来た。

  (なんか、うっ憤を晴らすだけ晴らして、あとを丸投げにしてきたのでは?)


 以上!

口には出さなかったけれど、なんか、とてもツッコミどころが多い。


 というか、ポロポロと喋っちゃいけなそうな情報が紛れていた気がするんだけど、大丈夫?

……神官さまが一番反応していた部分、アジト強襲の話だったから大丈夫かな? 大丈夫だといいな。

奴隷商関連の話に、秘密にしなきゃダメなんじゃいけなそうなものが混じりまくっていてハラハラしていたら、狼人のお兄さんも同じタイミングでアワアワしていた。


 やっぱ、話しちゃダメだったヤツ!!

いやでも、大丈夫かも?

神官さまってば、政治的な話っぽい部分は聞き流し気味に見えたし、にぃに(・・・)も『いろいろあった』とか『あれこれヤバかった』とかの微妙な言い回しにしているし。気付かない人は気づかない……かもしれない。


 どうやら港神殿の神官さまは生粋の武闘派のようで、にぃに(・・・)の大立ち回り部分を熱心に聞きたがっていた。まあ、武闘派なんだろうなっていうのは、見ただけでわかるよ。神官服が、にぃに(・・・)とおそろいの武神色なんだもの。


「本当は神殿勤務ではなく、祠巡り希望だったのですよ」


 というのが本人の談。

うっかり見習い時代に婚約してしまって、外に出そこなったのだと苦笑していた。

なるほど、加護者の子どもは加護者になる傾向があるから、妻帯者は危険な場所に出さない方針。同じ理由で、巫女さまも神殿勤務が多そうだね。


 ……なんか、それはやだな。

わたし、オカンと同じように巫女になりたいと思っていたけれど、自分の居場所が自分の意志の外で決められるのはなんとなく嫌だ。


 神官さまの叶わなかった希望を聞いてなんとなくモヤモヤした気持ちを抱えつつ、会食の時間を終えた。

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