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去る人、そして残る人

 浜遊びの日から、あっという間に二日が過ぎた。

時は、お昼を食べるのには早い時間帯。街道沿いの祠を朝早くに出発したわたしたちの前方に、港町デンティゴルの街壁が見えてきた。

 街道から分岐しているわき道から町へ向かう人々や荷馬車が合流してくるから、ミルギューの進む速度が鈍くなる。今までの経験上、この時間帯にやってくるのは近くの集落に住んでいる人々だろう。大都市の周辺には、日々の糧を賄う村とは呼べない規模の集落がいくつもあるのが普通っぽいので。


 デンティゴルの街壁が近づいてくるのを眺めながら頭に浮かんだのは、『ああ、やっと終わるな』という感想だった。

なんか、すごく薄情だと思うけれど、長い時間ほかの子たちがケガをしないかお腹壊さないかと気を張り続けてとても疲れた。ここで神殿の人にみんなを預けたら気が抜けるようになると思うと、ホッとしてしまうのは仕方ないと思う。

まあ、それでも国に戻らない子たちは残るんだけど。


 親元に帰る子たちには、すでにお土産を持たせた。

今使っている日用品のほかに、ミルギューのお肉を一家族につき十ケログランと、ミルギューミルクを三袋。それからフルーツトレントの実をワンセットづつ。

どれも全部、ひと月は保つようにマナラップした。おうちに帰ってから売り払ってもいいし、将来の自分のために取っておくのもいいと今朝の時点で話してある。

日用品を入れるように渡したマジックバッグだって、『返せ』なんて言いませんよ。

最初から、持たせた子にあげるつもりのモノだったので。だって、回収するのはいろいろとめんどくさそうじゃない。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 バッジ王国に戻らないのは、マルコにカルロ、ダニーロとパオロのオウトトウコウザン町の貧民街出身の四人と、ルカとサラの六人だ。

【加護の儀】前の子がふたりだけでプレッシャーが少ない。たぶん手を離れるまでは頑張れる。

 具体的に言うなら、人柄の良さそうな雇い主を見つけるor狩人として独り立ちかパーティーでそれなりの生活ができるラインの実力をつけるまでの予定。


 これに関しては、ルカは農村に行けば割とすんなり見つけられそう。

人柄的にも真面目だし、育樹術は高ランク確定だからね。植物魔法はそこそこレベルだけれども、育樹術との相性が良い辺りもポイントが高い。雇い主を探すよりも、自分の農地を手に入れる方が生活が安定しそうな気がするのでそっちを目指してもらう方がいいかもしれない。


 対してサラは……ちょっと、いやかなり微妙っぽい。

彼女の強みは幻影魔法なんだけど、農村などの人口が少ない場所では需要がなく、かといって都市だと犯罪者に目を付けられそうなんだとか。

そもそもサラは女性だから、それだけでも目を付けられやすいらしい。男女比が男性に偏ってるので、女性は引く手あまたなのがその理由。個人的にはお店の軒先で、看板商品のキラッキラな幻影を作るお仕事なんて良さそうだと思うんだけど……そういったお仕事は、きちんとした後ろ盾がないと厳しいっぽいんだよね。

むしろ、幻影魔法のことは内緒にして、別の収入減を考えた方が良さそうだという……残念すぎる。

そんなわけで彼女には、内向きの良いスキルを模索してもらう方向です。

解体スキルにかぎらず、スキルは努力次第で身に着けられるものだからね。



 問題は、貧民街出身の四人組だ。

ピニャーシュさんに相談した範囲だと、加護者として祝福を受けたマルコとカルロは神職に就く気はないらしい。また、神職についたところで、親のいない彼らは危険の多い仕事に就かされる可能性が高いと言う。

 ちなみに、ピニャーシュさんがなんでそんなことを知ってるのかというと、元々(むしろ今でも)オトン(加護者)の従者としてお勤めしている立場だったから。

加護者の祝福を受ける人が多いトニエ神国ですらそういったことがあったそうで、加護者の人数がそれよりも少ない国々でも大差ないだろうと言う判断らしい。


「具体的には?」

「人気の少ない場所の祠回りじゃな」


 想像がつかなかったので聞いてみると、そんな答えが返ってきた。

自分たちがわりとお気軽に祠巡りをしているから勘違いしていたけれど、半ば打ち捨てられたようになっている祠周りは魔獣が多いだけじゃなく、犯罪者のねぐらになっていることもあるらしい。祠巡りにたくさんのお供を連れて行くことはできないから、犯罪者に捕まってしまうこともあると聞いてガクブルしてしまった。

どう考えても、捕まった後にいいことはないよね?


 そして、マルコとカルロの弟たち――狐人のダニーロと猫人のパオロはまだ九歳。

でも、秋の終わりには十歳になる。孤児院に預けるよりも、いろんな経験をさせながら【加護の儀】を受けられるようになる日を待つ方がいいだろう。

 ちなみにこの四人は互いに助け合いながら一緒に育ったため、ハズレ村と同じように種族関係なくみんな兄弟って扱いなんだよね。マルコとカルロに、ふたりを手放すつもりはないと思うから四人セットで考えるべきだと思う。


 結論、現状すぐにバイバイできる人がいないので、この六人はにぃに(・・・)に頼み込んででも連れ歩くしかない。

とりあえず、しばらくの間は。

幸いと言ってはナンだけど、おんぶに抱っこで面倒見なきゃいけない人たちじゃないのが救いかな?

ピニャーシュさんに、指導だけはお願いしないとダメだけど。

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