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浜遊び 3

 カルロにはしばらくの間、魚の鱗取りをお願いすることにしてスプーンを渡す。


「コレでとれるもんなんすか?」

「うん、こうやってもって、尻尾の方から逆なでしていくかんじ」


 スプーンの背中に指をあて、しっぽ側をちょっぴり持ち上げるようにして頭に向かって滑らせる。スルスルと鱗がはがれていくのが、ちょっと気持ちいい。


「え、なんか楽しそう」

「うん、楽しい」


 鱗をはがし終わった分は別の氷のお船に入れてもらえるようにお願いし、マルコと別の作業に取り掛かる。


「マルコは、ルカのポモフェスと、みんなで捕まえたヴェルリーリョでミネストローネもどきを作ろう」


 ルカは毎日一回【お庭】に入って、せっせとポモフェスたちのお世話をしている。

定住先が見つかるまでのあいだは【お庭】で預かっている予定で、場所代替わりに生った実の一部をもらっているんだよね。たくさんあるので、こまめに使ってはいるんだけど、今日は大量消費を兼ねてスープにしちゃいます。


 ちなみにヴェルリーリョは、わりとあちこちに生えている【逃げる根菜】。

草の多い場所に群生していることがあり、捕まえたらすぐに水に漬け込まないとすごいエグ味が出て食べられなくなってしまうという面倒な魔菜です。草食性の魔獣も食べないくらいだから、どれだけエグい味がするのか想像つくかもしれないけど、たぶん想像の百倍はエグい。

もちろん、休憩タイムにとったヤツは、きちんと動いている間に水責めにしたから変な味は致しませんとも。


「なんか、串焼きよりも料理っぽい!」


 並べられた材料を見て、マルコが目を輝かせる。

このところ、騎獣術を獲得するために肉串づくりはご無沙汰になっているけれど、マルコは料理好き。作ったことのないお料理にワクワクする気持ち、わかりますよ~。


「あとで、鱗取りが終わったお魚も串に刺すけどね」

「それはそれで楽しいから、大歓迎です」


 お魚さんは、肉を刺すのともまた違うからね。

ちょっとビックリするかも?


 ポモフェスを湯剥きにしてもらう間に、ヴェルリーリョをせっせと刻む。

人数が多いぶん、刻む量が増えるのはしかたないけど地味に大変。


「そういえば、フェリシアさま。ミネストローネもどきって言ってましたけど、ミネストローネとは違うものを作るんですか?」

「ミネストローネは普通ならベーコンを入れるんだけど、今回はバリーシャ――槍貝の貝柱を使おうと思って」


 貝柱をマジックバッグから取り出して見せる。

乾燥させたので大分小さくなったけど、生の状態だと五百グランを超える重さだった。今はギューッと味が濃縮された状態になっているはずなので、いいお出汁が出るはず。

作り置きのスープベースと合わされば、『熊人にマサカリ』なのは間違いなしです。


 ポモフェスの湯剥きが終わったマルコに刻んだヴェルリーリョを炒めてもらう。

その間にわたしは、貝柱を水に浸して柔らかくなるように水を浸透させていく。

干すのも戻すのも自由自在な水魔法は、こういう時にとっても便利。

野菜が炒め終わったら、ざっくり刻んだポモフェスとスープベースを加え、塩とクシャの実で味を調えつつ煮込めばミネストローネもどきは出来上がり♪


「おおおおおお……食える。食える味がする……」


 味見をしたマルコ(味付け担当)の評価が微妙っぽいので、不安になって味見する。


「……普通においしいよ?」

「いや、だって。味付けしたのオレですよ?」


 味付けの指導はしたけど、まあ、たしかに?


「ふたりだけ味見っすか~? いいなぁ~いいなぁ~! オイラも味見キボンヌっす~!」


 わたしたちの話が聞こえたんだろう、少し離れた場所で黙々と鱗取りをしてくれていたカルロが元気に手を挙げた。

そりゃあ、一緒に作業しているのに自分だけ蚊帳の外は嫌だよね。スープを口に運んであげると、パクっとスプーンに食らいつき、ムグムグお口を動かしている。


「うまっ! うんまっ!! フェリシアさま、もういっぱいっ!」


 何とも言えない幸せそうな顔で味見を終えたカルロの長いお耳がピンと立ち、次いでピコピョコと忙しなく動き始めた。その上、お目々がキンラキラに輝いている。


「それ、お椀に欲しい的な方向だよね」

「正解っす~!」


 グッと親指を立てるカルロさんから、視線をマルコ君に移動させるとシッポがピンとお空に向いてて嬉しそう。いそいそとお椀によそったスープを持っていくあたり、ものすごくカルロの賛辞が嬉しかったぽい。


「カルロ、おかわりはお昼ご飯までおあずけだよ」

「ええ~!?」


 お椀の中身を一気飲みしそうな雰囲気を感じたんだけど、即座に不満の声が上がった。

どうやら、今の勢いで二~三杯は行くつもりだったご様子。たっぷり目に作ってはいるけど、さすがにひとりで飲み干すのは勘弁していただきたいところです。


「お昼までとろ火で煮込めば、お野菜に味がシミシミのトロトロになって、もっと美味しくなるからね」

「オイラ、待てができる男っす」


 『待て』の理由として美味しさ向上を挙げたところ、カルロの顔が『異議あり!』な表情から『キリっとできる男風』に劇的ビフォーアフターを遂げた。

ちょっとビックリ。

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