表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/65

ちょっぴり早めに加護を得る

 お社の引き戸を開けると、正面に正座しているにぃに(・・・)の背中が飛び込んできた。聖印を祀る祭壇の前で、祭服を身にまといピンと背を伸ばしてお祈りをする姿に『あ、この人。ホントに神官様なんだ』と、ちょっとばかり失礼な思いが頭をよぎる。

シンと静まり返った拝殿には厳かな空気が満ちていて、一瞬だけ、わたしは中に入るのをためらってしまった。


「――ああ、来たね」


 静かすぎるほどの空間に、わたしが立ち止まる音は思いの外大きく響いたらしい。ゆったりとした動作で振り返ったにぃに(・・・)の表情は逆光になって見えなかったけれど、わたしの姿を見て小さく微笑んだようだった。


「儀式用の服は用意してあったんだ」

「うにゃ」


 子どもの普段着は大人の服を縫い直して作ることが多い。

体も小さいし、すぐに着られなくなってしまううえにたくさん汚すからね。


 でも、加護の儀のときに着る晴れ着は別だ。

一生に一度のことだというのもあるし――特別なご加護を授かった場合、神殿入りをするときにきちんとした祭服が必要だからね。


 って、なんか。拝殿の雰囲気が、変わった?


 厳かな雰囲気から一転、なぜかウキウキワクワク踊りだしそうな喜びと期待感に満ちた気配に変わってる。というか、完全にかかさま(・・・・)の嬉しいが溢れまくった結果だね? この感じだと。


「この雰囲気だと、フェリシアの知ってる通りの儀式をやってたらお叱りを受けそう……」


 わたしが知ってる通りの儀式というと、アレだよね?


 基本的にどんな儀式でも、一番最初に祝詞(のりと)に節を付けて歌いつつ巫女様(もしくは神官様)が舞を舞う。いわゆる神楽舞というやつだ。

この神楽舞で神様の気を惹いて、それから「この子に加護を授けてちょ」だとか、「今年の狩りが上手くいきますように」とかの願掛けをしたりするのだ。

 もちろん、一方的にお願い事をするような儀式だけでなく、日々の暮らしの感謝を捧げるための儀式もあるけど、流れは一緒。


 今回の場合、にぃに(・・・)がその神楽を舞うお役目をする予定だったんだけど……。たしかにこの空気感だと、すでに十分すぎるほどに神様(かかさま)の注目は集めてしまっているわけだ。


「どうする?」


 困惑した様子のにぃに(・・・)と目を合わせ、肩を竦める。

にぃに(・・・)の神楽舞を間近に見られないのはちょっぴり残念だけれど――


「前座は抜きでお願いしちゃおっか」

「最善だと思う」


 しかつめらしい表情を取り繕っているけれど、にぃに(・・・)はちょっぴり残念そう。

ソレもそうか、と他人事のように考えつつ祭壇の前に膝をつくと、ひざまずいたわたしの後ろでにぃに(・・・)が鈴の音を鳴らす。


 神楽が終わった直後の部分から始めるとなると……


 スゥッと息を吸ってまぶたを閉じ、パンと大きな音を立てて手を打つ。


「我が名はフェリシア。理神(ことわりしん)の庇護する大地にて、狩猟の神の加護者フェリックスと、結実の女神の加護者トリステスが娘として生を受けし者なり。十歳(とう)になるにはあと三月(みつき)足らぬ身なれど、創世四神の名の下、神々のご加護を賜らんことを願い候」


 名乗り・大まかな出身地・両親の加護申告・年齢と、形式通りに言葉を並べ、『できたら特別なご加護を頂戴ね』と心の中でおねだりをしてから頭を下げる。


『もちろん、喜んで!』


 頭の中にひびくのは、当然のようにかかさまの声。

まるで、隣りにいるみたいに鮮明で驚いた。

今までは、雑音混じりだったり声が小さすぎたり、イメージ的ななにかしか伝わってこないこともあったのに。


 声と同時に、柔らかな青い光が拝殿を満たす。

おもわず周囲を見回すと、お社の屋根を通り越して大きな雪の結晶がヒラヒラふわりと舞い落ちてきた。加護の儀でこれだけ派手な演出があったのは、五年前のにぃに(・・・)の時以来のことだ。ということは――


『創世四神が一柱・魔神レイティア。今ここに、フェリシアを、我の神子として認めるものなり』


 やっぱり!


 産まれたときから小神殿で寝起きしていたとはいえ、儀式前からそれなりに会話が成立していた時点で、かかさまがかなり力の強い女神様だということは分かっていた。最低でも上位十二神だろうと予想してたんだけど……


 チュッとリップ音がして、おでこがちょっぴり熱を持つ。

魔神さま(かかさま)からの祝福だ。

ちょっぴり不満なのは、その御姿が見えないこと。しかも、くやしいことにあちらから触れてくることはできるのに、わたしの方から触ろうとしてもスカスカ空気をすり抜けるんだよ!


 抱きつきたいのに、不満不満~!!


 プクッと頬をふくらませると、クスクス笑う声が複数聞こえてきた。

どうやら、かかさまだけでなく他の神々もこの場にご降臨なさられているらしい。


『もうすこしだけ、我慢してね』


 かかさまのささやきに、小さく頷く。

他の神さまたちの前で、恥をかかせるわけにはいかないからね。ちゃ~んと、聞き分けますともっ。


『フェリシアのスキルは【愈食(ゆしょく)】【調理】【従魔術】のふたつみっつがDランクで、【神楽舞】はGランク』


 【愈食(ゆしょく)】と【調理】は、美味しい安全なごはんが食べたくて、一生懸命料理上手なおねーさんのお手伝いした結果覚えたスキルだ。師匠がスキル化してるだろうっていってたけど、ホントに努力が実っててメチャクチャ嬉しい♪

 【従魔術】も、似たような理由で熱心に取り組んでいた。果物も穀物も、魔化植物――魔樹から採れるからね。頑張った会があったよ!

 どちらも魔神さまの眷属神が司るものだし、スキルランクが高いのにも納得だ。


 Gランクの【神楽舞】は、春になってからやっとオカンから教わり始めたところだし、舞や音楽なんかの芸能系は森羅神(しんらしん)さまの領分だ。これはこれで納得の低ランクだね。


『まだ身につけていないスキルでも、私の系譜の神々が司るスキルは習得・習熟ともに容易です。また、魔法はすべての属性の習熟が早くなります』


 魔神さまの三大眷属神といえば、魔法神・魔具神・獣神の三柱だ。

 わたしが使えるようになったスキルは、魔具神さま由来の【愈食(ゆしょく)】と、獣神さま由来の【従魔術】。そのうえで、魔法神さま由来の【全属性適性】も授かれるってことだから、最上位神のご加護を賜るということの価値がよく分かる。


 オカンいわく、加護の儀で授かるのは日頃の行動に基づいたスキルでランクはFかG。EランクやDランクはかなり珍しいと教わった。

あとは特定の神さまからのご加護を賜った場合に、その神さまが司るスキルか魔法適性がひとつらしい。


 魔法属性は十二種類あるから、コレをひとつとして数えると十二個のスキルをもらったのと同等だし、スキルランクもDと最高ランクなんだもの。


『それから、武神が神子に授けたのと同様の空間――スキルフィールドを授けます。現し世と神域の間にある空間になるため、私や私の眷属神があなたのもとを訪れることもあるでしょう』


 それって、どういうご褒美空間?

そこで待ってたら、かかさまが遊びに来てくれるってことだよね?


 想像しただけで嬉しくて、お耳がピコピョコ、尻尾の先がくるくるくるりんしてしまう。

 そして、浮かれついでにひとつ納得したことがある。

今いるのはにぃに(・・・)が武神さまから授かった空間だから、本来なら魔神さまが出入りする場所ではないのだろうということ。

きっと、【加護の儀】という特別な儀式だからご降臨くださったんだね!

すごくすごく、もんんんんんのすっごく、嬉しい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ