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浜遊び計画

 港町デンティゴルまでの道中は、毎日人里で宿をとるつもりでいた。

ところが実際に移動を始めた結果、最終的にみんなの希望で野宿中心の旅路に変更する羽目に……なんというか、村や町で宿をとった場合、安全が保障される反面、自由度が大幅に下がることにみんな気づいてしまったのだ。

休憩時間に、フォレルーポやハニブーンたちを護衛に付けて自由に遊ばせていたせいだね、きっと。


 その上、そこそこ人数が多いので必ず宿がとれるわけでもない。

一度、それが原因で村の片隅で野宿をしたんだけど――非日常的なその行為がとてもとても楽しかったチビッ子たちから「もう一回」とおねだりされまくるように。最終的にはもう、毎日の寝起きを街道のわきだったり祠のそばでするようになってしまったというわけです。


「フェリシアさま~!」

「うみ~!!」


 御者台に座って御者ごっこをしていたイバン君とジュリアちゃんが、はしゃぎ声をあげながら荷台に戻って来た。入れ替わるように御者台に向かった子たちの口からも大きな歓声が上がり、荷台と幌の隙間からも青くて大きな水たまりが顔を出す。チビッ子たちが海が見える方に固まってしまったので、わたしの位置からは見えなくなってしまったけれど、吹き込む風の中にかすかな潮の匂いを感じる。


「デンティゴルが近くなってきたのかなぁ」


 パンを買うために立ち寄った町で、そんな話を聞いた気がする。

まあ、目指す先が港町である以上、そちらへ向かう道が海に近づくのはある意味当然だよね。とはいえ、海が見えてきたのなら、あと数日に目的地に着くのだろう。


「え~! もうっ!?」

「もっと遊びたい~!」


 さては君たち、最近、遊び道具が増えたことに味を占めたね?


 馬車で移動し始めてから、チビッ子たちはヒマを持て余してドッタンバッタン大騒ぎをするようになった。

その騒動を鎮めるために、言葉遊びや文字遊び用のカードやボードゲームを買ったからね。今は、みんなそれに夢中です。まあ、休憩時のお外遊びの方がゲーム類より人気があるんだけど。


「ねね、フェリシアさま。海! 海であそぼう?」

「それはすごく気が惹かれるなぁ」


 なにせ、海に美味しいものがたくさんあるのはここにいる全員が知っていること。草原を走り回ったり、斜面を滑ったりするのも楽しいけれど、水遊びも違った楽しさがあるからね。

海の遊びも試したい、と考えるのは当然だろう。


「ギド君、海辺で遊んだことある?」


 海辺で生まれ育った子なら、なにか楽しい遊びを知っているかも?

そう思って声をかけたのは、熊人のギド君。今も飽きずに魔石づくりに励んでいるアリーチェちゃんを膝に乗せて、魔石が出来上がるたびに褒めたたえているところだったりする。


 アリーチェちゃん、褒めらえるのが嬉しくてずっと魔石を作っている疑惑があるね。

気持ちは分かる。

でも、妹が喜ぶと思ってひたすら褒め続けているギド君の、妹が見ていない瞬間の虚無顔がちょっと痛々しい。


「あ、えっと。海辺遊びだっけ?」

「うん。みんなが海で遊びたいって言ってるんだけど――」

「このメンバーだと、岩礁地帯はダメだ」


 なんか、足を滑らせて転んだだけでも怪我をするし、最悪の場合には潮だまりに落っこちておぼれてしまう可能性があるっぽい。たしかにそれじゃあ、岩礁地帯で遊ぶのはダメだね。


「浜も危ないけど、槍貝を飛ばした後ならたぶん大丈夫」


 槍貝って、アレだよね?

ピニャーシュさんが砂浜をピョンピョンしたら飛び出してきたヤツ。バリーシャって名前だと思ってたんだけど、俗名みたいな?

とりあえず砂浜があったら、遊ばせる範囲内を従魔に歩き回らせてバリーシャ(槍貝)を回収すれば安全ってことっぽい。


「ただ、水の中は危ない」

「水の中にも魔魚がいるもんねぇ」

「魔魚より先に、みんな泳げないだろ。調子に乗って、深いとこに行ったらヤバい」


 そうだった!

言われてみれば、わたしだって泳いだことなんてないもの。他の子もたぶん、泳ぐ機会なんてなかっただろう。


「そっか。……なら、足首くらいまでだったら?」

「それならたぶん、平気……かな」


 ギド君にお礼を言って、思考を巡らす。

遊ぶ前に、フォレルーポ(森狼)の背中に希望者を乗せて砂浜を走らせるのは確定だね。飛び出してきた貝は、他のメンバーで拾って砂抜きしてやろう。焼いて食べても美味しいし、そのまま放置するのはもったいない。

余った分は、干してしまえばあとでスープを作るときに使うのもいい。

多いようなら、お土産と称してチビッ子たちに配るのもアリだ。


 実際に遊ぶ時は、フォレルーポに安全地帯を囲ってもらう。

水に入り過ぎないように見張らせれば、きっと危険も減らせるはず。本当は海側からも見張らせた方がいいんだろうけど、水中行動ができるコルルーポ(水狼)は二頭しかいないんだよね。どうせお仕事を任せるなら、マジックバッグを持たせて海鮮集めをしてほしい。

あと、コルルーポはフォレルーポと違って、チビたちの捕獲に向いてないんだよね。


 フォレルーポは共生している魔蔦(マツタ)を操って生き物の捕獲ができるけれど、コルルーポにあるのは潜水・高速遊泳能力なので、出来ることが全く違う。

それぞれに向いたお仕事を割り当てるのが、デキる従魔師だと思うので、適材適所を考えますよ。


 まあ実のところ、砂浜があるとは限らないんけれど。

砂浜がなかったとしても、海の近くにいるのは間違いない。今日の野営場所からコルルーポたちが海に出れるような場所だったら、海鮮集めはお願いしようと思います。

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