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馬車の改造

 チビッ子たちの遊び相手を従魔に頼んで、魔導チップを作るぞ~――と思ったら、なぜかみんながわたしの周りに集まってくる。


「フェリシアさま、なにしてるの?」

「今から馬車の乗り心地を――」

「それなぁに?」

「えと、これは魔せ――」

「ねぇねぇ、コレは~?」


 次から次へと飛んでくる質問に、答えるのが間に合わない。


「みんな、フェリシアさまの邪魔をしちゃダメだよっ」

「ええ~!」

「なにすんのか見たい!」

「それじゃ、フェリシアさまの作業の邪魔になんだろ。ほら、散った散った」

「やだ~!」

「マル兄のケチっ」

「カル兄のあほ~っ」


 困るわたしを見かねて、マルコたち四人が間に入ろうとしてくれたけれど、むしろ騒ぎが大きくなった。

これがいわゆる火に油?

なんかちょっと違う気もするけれど、わたしの作業を見たいと声をそろえるチビッ子たちに、いくつかお約束を守ることを前提に、見学を許可することにした。

いや、だって。そうでもしないと収まりそうにないんだもの、仕方がない。


「じゃあ、みんなは魔道チップの作り方を初めて見るはずだから、説明しながらはじめるよ~」


 わくわく顔のチビッ子たちには一メータほど離れてもらい、作業を開始する。


「まず、材料はコレ!」


 ジャジャーン! とばかりに、取り出した魔石をかざして見せる。


「おお~?」

「なんか、ちっちゃい」

「ちっちゃいね」


 ……確かに。

直径一センテの透明な玉じゃ、一メータも離れてたらよく見えないし、インパクトも全然ないね。

チョイチョイとサラを呼び寄せ、人数分の魔石を取り出し配ってもらう。


「魔石といって、一般的には魔道具の動力源として使います」

「きれい!」

「これ、おいしい?」

「食べられません。美味しくないし、口に入れちゃダメだよ」


 毒じゃないけど、体に良いわけでもないので食べるのは止めてほしい。


「とりあえず、配った分はあげるからしまっておいてね」

「フェリシアさま、参考までに。買うとおいくら?」

「みんなに配ったのはCランクの魔石だから、二十ラーメだよ」

「二十ラーメ?」

「今日までお泊りしていたお宿の大部屋を貸し切りにしたのと同じ金額だね」


 イマイチ想像がしづらいみたいで、みんな首をかしげている。


「……あれじゃ、パン屋のデカいパンをひとつずつ買ってお釣りがもらえる」


 ピニャーシュさんが追加で例を出してくれて、やっとみんなピンときたっぽい。キラキラした目で歓声を上げ、「すげーすげー」と盛り上がっている。

一ラーメで買えるパン屋の大きなパンって味はイマイチだけど、ふつうの四人家族なら三食賄える大きさだからね。盛り上がるのも分からなくもない。味はイマイチなんだけどね……味はイマイチなんだけどっ!!


 なにはともあれ、落ち着いてくる頃合いで魔導チップ作りに取り掛かる。

【衝撃緩和】は慣れているから作るのにほとんど時間はかからない。

 とはいえ、せっかく見せるんだからね。

どうせなら何がどうなるのかわかるように、あえてゆっくりと魔道インクを拡散させないための魔力膜を大きく展開してから、刻印を大きく作って見せることにした。【駆け出しマーケット】でも人だかりができた魔導チップ作りの実演は、どうやらチビッ子たちにも面白そうに見えたみたい。前後の車軸を魔道具化させるためのふたつの魔導チップが出来上がると、周囲には歓声と共に拍手の音が鳴り響いた。


「ねーねー、オレもソレ、できるようになるかな!?」

「魔導具神さまに一生懸命お祈りしてたら、もしかするかも?」


 ここにいる子たちに魔導具師の家族はいないそうなので、可能性は高くないけれどお祈りしないよりはマシなはず。【加護の儀】までの間、毎日お祈りが続いていたら、だけど。


「あとで、魔道具作りのお勉強ができる方法、考えてみようか」

「やったっ」

「あたしもあたしもー!」


 引き続き、魔導チップを車軸に同化させる魔道具化で、車軸の反対側に向かって刻印が伸びていく様子をじっくりと観察したチビッ子たちは、もう大興奮。

 改造が済んだ馬車に乗り込んだあともずっと、「魔導チップの作り方がかっこいい」だとか「魔道具化するときの方がすごい」だのと盛り上がっていた。この反応は、馬車の揺れが大幅に軽減された効果もあるんじゃないかな。

実体験って、強いよね。


『このまま興味が続いたら、【加護の儀】で魔導具師の才能に目覚める子もいるかもね』


 などというかかさま(魔神様)の笑いを含んだ呟きに小さくうなずきつつ、どんな教材を作ればいいだろうかと思いを巡らせる。


 やっぱり、わたしが身に着けた順番で教えるのがいいかな?

なにせ、最高効率でスキル習得を目指せる魔導インク作りにスキルなしで挑むと、起きている時間の大半をつぎ込む羽目になる。さすがに目の前で盛り上がっている七~九歳のチビッ子に、それだけの長時間集中させるのは無理でしょう。

正直、わたしも最初のうちははくじけそうだったからね。マチガイナイ。

 その点、魔石を作るのはお手軽で、二分足らずの集中で成果品――魔石ひとつ得られるんですよ。やっぱり、頑張った後にすぐ成果品が手に入るのは嬉しいよね。

材料だって、小さな捕獲用の罠にかかる程度の魔獣でいいから親元に帰ってからでも挑戦可能だし。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 ご希望があったので、早速やらせてみたところ。

ほとんどの子が早々に飽きてしまったのを尻目に、最年少のアリーチェちゃんだけがひたすら魔石を作り続けるという結果におさまった。

 そういえば、物心つく前後の小さい子って気に入った遊びをひたすら繰り返す傾向があったっけ。

どうやらアリーチェちゃんには、魔石を作りは不思議楽しい遊びとして認識されたっぽい。将来有望な後輩ちゃん候補の出現は、ぜひともトリーにお知らせせねばと心に刻む。

トリーに贈る手紙のお返事が楽しみだね。

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