↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/158

みんなのねぇね

 ガタガタゴトゴト、荷馬車は進む。

……あ、改造したから幌馬車だったね。


 すでに季節は黄の半月――秋になったとはいえ、まだまだ暑い。

幌を全部下ろしてしまうと暑いので、半分上げている。外が見えれば、多少はヒマがつぶれるからね。チビさんたちが少しでも飽きないようにという理由もあるけれど、そこはまあ、副産物的な方向です。


 思ったよりもマシではあるものの馬車の中は結構な揺れ具合で、ときどき体重の軽い子が床からピョコンと飛び上がる。当然のように、わたしも跳ねる中の一人です。馬車に乗っている中では一番年上なのに、ちょっと悲しい。

 まあ、しゃべれないほど揺れるわけでもないので、おヒマな子供たちは歌を歌ったり手遊びしたりと相変わらずにぎやかです。


 いや。

むしろ前よりもずっと、みんなの声が明るい気がする。


「アイツらがいなくなって、ホントホッとした」

「ジュリアはまた、すぐにそういうこと言う~」

「でも、事実だろ」


 『もうすぐ、家に帰れるのが嬉しいのかな?』などと思おうとしたところで、羊人の三兄弟がそんな会話を始めたので『そっちかぁ~』と肩を落とすことになった。


 『アイツら』というのは、まあ、デンティゴルへ出発する前に居なくなった猿人兄弟のことだよね。


「図々しいし」

「乱暴だし」

「え、待って。乱暴って、暴力でも振るわれてた!?」


 わたしもね、たしかに思うところはある子たちだったけど、暴力沙汰があったなんて話は聞いてない。


「【お庭】にオレたちだけでいる間に何度かあったけど、フェリシアさまの従魔が守ってくれてたから全部未遂」

「ランチュウがずっと見張ってたもんね」

「うんうん、可愛くて有能。食べちゃいたいくらい」


 猫人のパオロと狐人のダニーロがサラっと頷き教えてくれた内容に、ビックリですよ。

わたし、ランチュウたちにそんなこと頼んでないし。


「ウチの子たちは食べないでね、マリアちゃん」


 さりげなく食欲をぶち込んできた、猫人のマリアちゃんの頭を撫でつつ苦笑する。

素直に頷くマリアちゃんはいい子だね。


「……今日のお昼、食べたいお肉は?」

「みるぎゅー」

「串焼きにしよっか」

「うにゃ」


 希望が叶うとご機嫌になって頭をこすりつけてくるマリアちゃんの姿に、一瞬、亡くした妹を思い出す。

まだみっつだったあの子も、大きくなれていたらこんな姿を見せてくれたんだろうか――なんて、考えても仕方がない感傷でしかないのに。


「じゃあ、ねぇね(・・・)がう~んと美味しい串焼きを作ったげる」

「「「「「「「やったっ!!」」」」」」」


 ふふっ、みんな、お肉は正義ですね?


「ねぇねぇ、フェリシアさま。アレ食べたい、アレっ」

「アレって?」

「なんか、色が変わるヤツ!」

「色が変わる――あ、アンブラキオンかな」


 火を通す前は黄色っぽいのに、赤くなるんだよね。アレ。

ピニャーシュさんが逃げ出した先の浜辺で獲ってくれた、すごく大きいカニさんだ。


「じゃあ、それも焼こうね」

「やったっ!」

「そしたらね、アレは? やきのぎー!」

「あ、外側がカリっと香ばしくて柔らかいヤツっ」

「焼きおにぎりだよ、アリーチェ」

「それじゃあ、おにぎりをまず作らないとだねぇ」


 あれもこれもと自分のお気に入りを口にしていくチビッ子たちが微笑ましくて、思わずうふふと笑ってしまう。


 いいよ、任せて。

みんなの好きなご飯、わたしがいっぱい作ってあげる。

今――デンティゴルに着くまでの間は、わたし、みんなのねぇね(・・・)だからね。

できる範囲のことなら、なんでもするよ。

親から引きはがされて、怖くてつらい記憶なんて吹き飛ばせるように。

みんなが、眠りながら泣かないで済むように。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 目的地へと移動する道中、一時間に一度は休憩をはさむ。

これは魔獣領域を移動していた時からずっとそうだったのだけれども、今回の道中では前よりもその必要性が高くなっていたらしい。

というのも、今回の旅路で新たな挑戦を始めたメンバーの身体的な苦痛を和らげてやる時間が必要になったから。

具体的に言うなら、【騎獣術】の習得も目指すことにした四人組が内ももヒリヒリになるせいです。要は、彼らに治療を施す時間が必要なのだ。


 これに関しては、にぃに(・・・)やロイさんも同じことをしていた時に、騎獣の体との摩擦でヒドイことになってたからね。想定内と言えば想定内ではあるんだけど。


「すみません、フェリシアさま……」

「大丈夫だよ~」


 ピニャーシュさんは鬼畜なスパルタ教師なので、今日の夜には体中が痛くて仕方ないこと確定です。

その上、筋肉痛は治癒魔法で治しちゃダメらしい。

シップの類は良いそうなので、夜までにはタイミングを見て作ったほうが良さそげだね。


 ……うん、貼り薬は挑戦できそうな気がする。

明日も乗らされるんだろうし、町についたら作ってみよう。


 それはそれとして、マルコ・カルロ・サラ・ルカの四人の治療を終えたら、今度は馬車の改良に取り掛かりますよ。

筋肉痛用のシップより、こっちの方が先に対応しておきたいからね。

チビッ子たちの移動環境、大事!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。