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デンティゴルへ

 ハテノナカ村での生活も四日目。

とうとう明日の朝には、港町デンティゴルに向かって出発予定です。

 昨日は、神殿前広場でチビたちを遊ばせてもらっているお礼代わりの奉仕活動をしているうちに終わっていたので、今日はハテノナカ村を出る前の確認作業をする予定です。


 宿から出かけるチビたちと解体組を見送ると、ピニャーシュさんとともに荷馬車の改造をしてくれている工房を訪ねる。幌を張れるように改造が終わったので、牽獣(ばんじゅう)に装着させるハーネスを合わせるらしい。


「おう、ピニャーシュの旦那」

「うむ。牽獣(ばんじゅう)を従えとる従魔師を連れてきたが、どこに出せばよい?」

「ああ、その嬢ちゃんが従魔師か。こっちに頼む」


 連れていかれたのは、改造途中(?)の幌馬車の前。

牽かせる魔獣候補はミルギューとカミカゼホースなので、順番に出してどちらの方が適切か選んでもらうことにする。カミカゼホースの方が背が高いけれど少しほっそりしていて、ミルギューの方ががっちり横幅広めなのでどっちが良いのか分からないんだもの。


「ミルギューの方が長い時間安定して牽いてくれるし、カミカゼホースよりも休憩が少なくて済む。カミカゼホースの方が足は速いが……装具を付けるのも楽だし、ミルギューでいい問題ないだろうな」

「では、ミルギュー用の装具を頼む」


 とりあえずお隣の村なり町に毎日夕方までにつければいいので、ミルギューが採用された。

子供が十人前後、荷物と一緒に乗ったとしても速度に大きな影響はないっぽい。

さすが、ウチのミルギュー。シゴデキだね!


 工房の人がなんやかんやしている間に、荷馬車の足回りを見て回る。

大きな町で乗ったことがあるから、馬車の乗り心地が悪いのは体験済み。なので改良――というか、魔導チップで誤魔化せそうな部分を探している。

たぶん、【衝撃緩和】を付与するだけでも乗り心地の改善はできると思うんだよね。


「とりあえず、荷台に付与して様子見……かな?」


 ちょっと観察してみた程度じゃ、どこをどうすれば改善できそうか想像つかなかったから仕方がない。

というか、いっそのこと車体全部に【衝撃緩和】を付与しちゃえばいいのでは?

いや、それはちょっと乱暴かな……やっぱり、荷台に付与から始めよう。


 ホントは馬車の改造をしてくれている人たちに意見を聞きたいところだけど、「子供がウロチョロするな!」って怒られちゃったからね。本職の人に、ご相談には乗ってもらえそうにないのが残念です。



☆★☆★☆★☆★☆★☆



 翌朝、幌馬車にグレードアップした荷馬車を受け取り、『さあ出発!』となった途端にとつぜん「いかない!」と騒ぎ出す子が現れた。

 古着屋さんから飛び出していったまま帰ってこなかった猿人、ドメニコの弟のミケーレだ。

まあ、想定内ではあったんだけど……ドメニコはわたしたちのところから逃げ出した後、翌日の朝にはハテノナカ村を出て行ってしまったらしい。当然、そのことはミケーレにも話したものの、この村に居れば迎えに来てくれる――と、思いたいのだろう。


 しばらくすったもんだしたものの、結局、神殿に敷設されている孤児院に入ることになった。

なにせ、わたしが保護した(する羽目になったとも言う)のはミケーレだけじゃない。ほとんどの子に、国元で帰りを待っている親御さんがいる。

彼らのことは、できるだけ早く親元に返してあげたいんだよ。きっと、すごく心配してるだろうし。


 こう言ってはナンだけど、帰っても迎えてくれる家族がいないわたしたちと彼らは違うのです。

――あ、わたしの場合、にぃに(・・・)がいたね。いや、にぃに(・・・)は本人がこっちに向かってくれるから問題ないんだよ。


「ひとりで残って、大丈夫かなぁ……」

「本人がどうしてもというのだから仕方なかろう」

「そう、なんだけどね」


 『お兄ちゃんは自分を迎えに来てくれる』――ミケーレはそう言うけれど、正直、来ないと思う。

だって、迎えに来るくらいなら最初から連れて行くでしょう?


 それでも一緒に行きたくないと思わせてしまったのは、きっとわたしのせいだ。

ドメニコが飛び出していったのも、そう。

自分がやれることを考えもせず、わたしに寄生したいというたぐいのことを言われたのはすごく嫌だったけれど、断るにしてももっといい言い方があったんじゃないかな、とは今更ながらに思うんですよ。

どう言えばよかったのかは、やっぱり今でも分からないんだけど。


「きれいごとを言うみたいだけど、あの子はハテノナカ村の子じゃないから、肩身の狭い思いをしそうで心配」

「フェリシア嬢があれだけ大金を積んだんだから、それなりに扱うじゃろ」

「金貨三枚は痛かったね」


 完全によその子だからね。

その上、寄付するわたし自身が子供だからか、すごい足元を見られたよ。


「ま、なるようにしかならないか」


 もう縁が切れた相手のことだし、これ以上思い悩むのは止めて、手元にまだいるみんなを無事にデンティゴルに連れて行くことを考えよう。

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