みんなでお買い物
ハテノナカ村はにはなんと、生鮮食品を扱うお店のほかに、雑貨屋さん・古着屋さん・金物屋さんの三軒も店があった。
あ、わたし的に、酒場は店に数えませんよ。
使うものを売ってるわけじゃないからね。
それに飲酒が禁じられている年齢の子ばっかりなので、絶対に近寄りません。
無事にみんなをお迎えの人に引き渡すまでが、わたしのお役目だ。みんなを危険にさらすようなマネはできないからね。
なにはともあれ、わたしたちがまず最初に入ったのは雑貨屋さん。
ここでは、歯ブラシにコップ。カトラリーのセットをひとつに手拭いを二枚ずつは全員分必要だ。
コップなんて、お椀代わりにも使っている木の実の殻でしのいでいたからね。持ち手がついているだけでも画期的みたいな気分になるのか、みんな大はしゃぎです。
喜びのハードルが低くすぎて、ちょっと涙が出そう。
必要最低限でしかない物品をまとめてもらう間に、櫛を物色する。
わたしの手持ちは、ブラシと櫛が一本ずつだったからね。女子だけでも五人になっていたからね。長毛種の男の子も含めると、順番待ちが発生していた。各自一本用意できたから、コレで一安心だよ。
「ほかにもほしいものがあったら言ってね」
にぃにに手紙を書くために紙を手に取り、店の中を物色しているみんなに声を掛けたら、みんなの口から上がる喜びの声。それぞれが、控えめにひとつかふたつ手に取る中、「それは今必要なもの?」と聞きたくなるようなものをたくさん抱え込む人がいたけれど。
わたしはその姿から、そっと視線を逸らした。
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雑貨屋さんの次は古着屋さん。
目的のデンティゴルは他国の船が出入りする大きな町だそうなので、そこそこ見られる服でないと悪目立ちしてしまう。ただ、ここで買った服をずっと来ている必要はないからね。
シャツとズボンかスカートに、下着が三セットと購入数を制限させてもらうことにした。
「さっきん店じゃあ、そがんこつ言わんかった」
と文句を言う人もいたけれど、衣類はお値段が張るからね。
好き放題に買えるほど、予算が多いわけでもないので我慢してもらいます。
「予算は有限なので、わがままを聞くことはできません。ただ――アリーチェちゃんが今着てる服は回収したいから、二着選んでもらえるかな」
「なんでそん子だけっ」
ドメニコが即座に噛みついてきたけど、アリーチェちゃんが着てるのはオカンが作ってくれた形見だもの。わりとボロッ畜なってるけれど、可能なら手元に残したい。
「うわぁ、アリーチェ良かったなぁ! 可愛いの選ばないと!!」
二着選ぶ許可を得たアリーチェちゃんのにぃには踊りださんばかりに大喜び。ドメニコの文句を言う声は、大きすぎる熊にぃにの声にかき消された。
仲の良い熊人兄妹はほっこりするね。
「ご飯時から文句ばっかり。クソ猿はさっさと去ね」
「ジュリア、言い方きつすぎ。でも、たしかにウザい」
「ふたりとも言い過ぎだよ。すごくうっとおしいのは理解できるけど」
羊人の双子ちゃんとお兄さんが、更に火種を投入する。
顔を真っ赤にしたドメニコが怒ってつかみかかろうとすると、羊人兄妹の間にピニャーシュさんが静かに割り込む。振り上げた手をおろす先が無くなったドメニコは、近くに吊るされていた、派手過ぎて下品に見える服をひっつかんで店から逃げていった。
「ああ! 泥棒!!」
古着屋さんが慌てて後を追ったけれど、「あ、あの分も払うんで会計に加えてください」と声を掛けたらすぐに戻ってきた。
「え、あ? えっと、大丈夫なんで?」
「大丈夫です。加えといてください」
ドメニコが持ち去った服の代金を加えてもらいつつ、他の子が選び終えるのを待って支払いを済ませてから店を出る。
ドメニコの弟が、微妙に肩身狭そうな雰囲気をかもしていたけれど、兄の方と同類の気配がするのでなんらかのフォローを入れる気にもなれない。なんとなく、尻馬に乗って騒ぎ立てるタイミングを失ったような雰囲気を感じたので。
なんか、この時点でもう胃もたれしそうな気分になったので、お買い物はここで終了。
最後に予定していた金物屋さんでの買い物は、ピニャーシュさんにお願いした。
解体ナイフは足りないし、【加護の儀】を行った四人にはお祝いにナイフを贈ろうと思っていたので……もしかしたら、ドメニコには渡せないかもしれないけど、一応買っておいてもらおうと思います。
ピニャーシュさんが注文した、荷車の改造が終わるのは五日後。
自由の利かないよその村の中、どうやってヒマつぶしをさせようかと頭を悩ませることになった。




