神々は最初から不公平
人里に着いたので、お昼ご飯を食べながらこれからのことについて話をする。
「食べながらでいいから聞いてほしいんだけど、まずご報告があります」
それなりに静かになったところで、改めて口を開く。
ご報告その一は、【バッジ王国から港町デンティゴルに迎えの人が来ること】。
帰国したがっていた子たちは、この報告に大喜び。
内容的に人里に入ってからの方がいいだろうと思って黙っていたんだけど――もっと早くに話しても良かったかな?
いや、やっぱりこのタイミングで正解だったね。
「早く、早く! もっと早く進んで!!」なんて風に急かされても、人里にたどり着くまでどれくらいかかるか分からない状態だったんだもの。全員の体力を考えても、やっぱり教えるタイミングが早すぎるのは良くなかった……と思う。
次のご報告は、【港町に向かう馬車を仕立てるので出発に数日かかること】。
「え~!」と、ガッカリした声が上がるけど、コレは諦めてほしい。馬車での移動は、決定事項です。
最後に【帰国しない人は、デンティゴルに着くまでに今後の希望を考えること】。
これの対象は、孤児の子たちと借金奴隷だったサラさんです。
「一応、バッジ王国から来るお役人さんが相談には乗ってくれると思うけど――」
ここで、猿人のドメニコさんがとんでもないことを言い出した。
「オラとミケーレは、フェリシアさと一緒だべ」
え、ごめん。
わたしにその予定は全くない。
「デンティゴルに着いたら、お別れですよ?」
だって、あなたたちはただ一緒の船で運ばれてただけの人だからね?
ぶっちゃけ、赤の他人です。
なりゆきと、後々の自分の心の安寧のために一緒に脱出してきたけれど、わたしが面倒を見る義理は本来どこにもないんですよ。
「「なんで?」」
「なんでって……」
むしろそのセリフ、わたしが言いたい。
とりあえず、ドメニコは【お庭】で卵や乳嚢を集めて回る仕事がしたいらしい。
ただ保護されるだけも居心地悪いかなと思って任せてた仕事だけど、今となってはハニブーンにお願いすることができるヤツですよ?
ぶっちゃけ、人手はいらない。
「ドメニコさば、いちんちにひとつふたつ回収すればええほうだ。仕事せんもんば、フェリシアさまの下に残るんはおかしいべさ」
その主張に異を唱えたのは、鼠人のルカ。
どうやらドメニコは、ほぼ働いてなかったらしい。
「そっただことないべさ」
ルカの言葉にすっとぼけた答えを返しているけれど、【お庭】仕事のために人を雇う予定なんてないからね。お断り一択ですよ、ドメニコさん。
「そもそも、【お庭】は人里に着いた時点で必要なくなったからね。もうほかの人を入れるつもりはありません」
「「「「「「「えええええ~!」」」」」」
これには抗議の声がいくつも上がった。
「そんなん、ズルだべ」
「りーちぇ、おにわであそびたい」
ドメニコのは論外だけど、アリーチェちゃんの希望はちょっと胸が痛む。
ずっと宿におこもりするのは、チビッ子にきつ過ぎるよね。でも、他の人たちは果物食べ放題への未練が一番の原因だったので、一緒にいる間は支給すると伝えたら静かになった。
「もともと【お庭】は、神々が神子と交流するために用意してくださった場だからね。神気に耐性のない非加護者は長時間居られないし……」
というか、わたしの所有スキルの拡張機能と言った方が正確なんだけど、ややこしくなるのでコレで通す。
「そんなん、不公平だべさ!」
いや、ドメニコは何を言ってるんだろうね?
「いやいや、神々は最初から不公平でしょう?」
「っ!?」
思いもよらぬ反応だったのか、言葉に詰まる彼に、きちんと事実を突きつけておくことにした。
なんか、この人。
『出来る人にすべてやらせておけばいい』的なことを考えてる雰囲気がビンビンするんだもの。【加護の儀】で授かったスキルも魔法も、まったく活用しようとしていない。それでいて、他人に『させる』ことばかり要求してくるのだから腹が立つよね。
「すべての人に同じスキルを与えず、才能に差をつける」
人には『器』があって、同じものを与えることはできないのだそうだけど、ソレはソレ。
ドメニコの場合、『同じ器を寄こせばいい』くらいのことは言いそうだし。それに神々が同じだけのお力を注いでも、人の目には差があるのも事実なので。(ゴメン、かかさま)
「あまつさえ、お気に入りにはあからさまな依怙贔屓」
わたしもにぃにも、間違いなく贔屓されてると思うよ。
特にわたし。
【お庭】の拡張頻度を考えると、どう考えてもにぃにより融通を利かせてくれている。というわけで――
「最初から、どこにも平等なんて存在しないでしょう?」
もっとも、神々から破格の才能を授かっても、努力しなければただのザンネンな人で終わるだろうけど。
ちなみに、わたしが運動音痴気味なのは、かかさまのご加護でもどうしようもないらしい。にぃにみたいな身軽さとか、割と憧れなのでションボリですよ。
それにわたしも、できる範囲でではあるけれど努力はしているつもりです。食事一つ作るのだって、かかさまの権能と無関係じゃないんだから。
「ドメニコさんには潤沢な魔力があるんだから、植物魔法を鍛えれば農村で暮らすのに困ることはないと思う」
農業系のスキルは授かってなかったけれど、そういうのはやっているうちに覚えるものだ。
「わたしにこだわらずとも、いくらでも生活できる素養があるんだから。自力で生きる道を考えようよ」
冷たいようだけれど、あとはドメニコたちが自分で考えるべきなのでお話し終了。
反論したそうにしている彼から視線を外し、話題を変える。
「さて、午後のことなんだけど――」
すでに、ピニャーシュさんにいろいろ処分してもらったから資金調達もできた。
午後からは、必要な日用品の買い出しをする予定です。




