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ハテノナカ村

 たどり着いた先は、そこそこ大きな村だった。


 ピニャーシュさんは、子供ばかりをたくさん連れていることから人さらいを疑われたモノの、全員が口を揃えて「助けてくれた人」だと言ってくれたので捕縛されずに済んだ。

どうやらバッジ王国からソルベル王国に、例の愉快組織についての警告が届いたらしい。今はどこもその話題で騒がしくなっているだそう。


 通行料を魔石で払い、門の中へ足を踏み入ると大きな建物がいくつも軒を連ねている。

村に入るためにひとり五銅貨って、ちょっと高いような気がするのはハズレ村が無料だったからかな。ソレはそれとして、魔石払いだと一割増しなのもちょっぴり不満です。

ちなみにここはハテノナカ村という名で、周囲の漁村と町をつなぐ中間点になっているんだとか。


 これは、もしかして海のお魚を食べられるチャンスなのでは?

漁村と聞いて、ついつい期待に胸が高鳴ります。

海が見えるほど近くにあるわけじゃないけれど、こう、保存性を高めたヤツとかありそうだよね。


「フェリシアさま、なんかいいモン見っけたんすか?」

「うにゃにゃ、あるんじゃないかな~と思いついただけ。見つけてないよ」


 カルロは目ざといね。


「もしかして、美味いものですか!?」

「とりあえず、猫人は大好きな味だと思う」


 わたしが期待しているのは、『猫殺し』。


 モリザイカイ町で出会った、あの衝撃の魚介スープの材料です。

アレはね、今でもたまに夢に見る。また、食べたいなぁ……この際、自作しますとも。

 期待に目を輝かせて、マルコは周囲を見回している。

「匂ってきたわけじゃないよ」と笑ったら、「残念」と苦笑い。わたしも大概だけど、マルコも食いしん坊さんだね。

 でもね、分かるよ分かる。

美味しいは正義だもの。マチガイナイ。


 村の中で従魔は出せないから、女の子を真ん中にして三人以上で手をつないで歩いている。

みんな、攫われたばっかりなので警戒心が強い。また攫われたくなんてないもの。当たり前だよね。


 何軒かの宿屋をあたって大部屋を確保すると、それぞれ好きな場所に毛皮を敷いてくつろぎ始めた。

魔獣領域で作った地下室と同じくらいのサイズ感だから、みんなの陣取る場所はほとんど一緒だ。


「フェリシア嬢。今から資金調達に行こうと思う。なにを処分する?」


 この国での通貨がないのはもちろんだけど、天下の往来をミルギュー行列でふさぐわけにもいかない。というか、ウチのミルギューは大きいからね。悪目立ちするんですよ。

妙なトラブルを引き寄せる可能性もあるので、普通っぽさを装いたいよね。そうなると、みんなを移動させるための馬車を用立てる必要がある。


「魔獣まるごとは売れると思う?」

「村の入り口に狩人組合があったから、買取は可能だろうが数によるじゃろうな」

「ミルギューかカミカゼホースがたくさんあるから、ついでに処分できるといいんだけど……」


 なにせ、魔獣領域の移動中に従魔たちが狩った魔獣は全部確保してある。

それだけのものも、劣化させずに【お庭】で保存できるようなったからね。

解体作業を覚えたい子たちにガルゥの死骸を渡したんだけど、ミルギュー・カミカゼホースの大型獣は百体を超える在庫がある。


「さすがにそのサイズの魔獣を運ぶ手段がないのじゃが……」


 もちろんそこは心得ていますとも!


「ピニャーシュさんは腕利きの狩人でしょう? おっきなマジックバック、たくさん持っててもおかしくないよね」

「む、そうくるか……」


 要は、大型のマジックバックを作ってしまえば良いのです。


「ならば、冷却機能つきのAランクが五つもあれば当座の資金は手に入るじゃろう」

「うにゃ。りょーかいです」


 Aランクのマジックバックを、【冷却】チップ付きで五つね。

機能の維持を考えると、【充填】だとちょっと不安があるから【魔力集積】のチップも必要かな。持てないサイズ&重量物を入れるから【イメージ収納】もつけなくちゃ。

【イメージ収納】って、マジックバックに触れてさえいれば本体を出す必要がなくてラクチンそうなんだよね。しかも、離れたところからでも出し入れできる!


「さて、今からお昼ご飯を作りに行くけど、みんな、ここから出ないようにね」


 村の中だから魔獣に襲われることはないけれど、人に攫われる可能性があるのを経験済みの子供たちだ。確認の意味も含めた言葉にはすぐに「は~い!」と口を揃えて頷いた。


「オレ、解体室に行きたいですっ!」

「オイラも同じく~」

「アタシも」

「わっちもお願いしやす」


 解体スキル上げ中だから仕方がないね。

手を挙げた四人とともに、ピニャーシュさんを連れて【お庭】に移動する。


「フェリシア嬢。人里にたどり着いたことじゃし、もうここに人を入れるのは終わりにすべきじゃろう」

「ああ、うん。そうだねぇ。一緒に居られるのも、にぃに(・・・)が合流するまでだものね。その方がいいかも」


 もともと、他人を入れるつもりがなかった場所なので、必要が無くなったら元通り。それに、どこまでお世話するかを考えていたところだったからそう答えたのだけれど、背後から「えっ」と驚きを含んだ声が上がる。


「――そっか、【お庭】を出入り禁止にしちゃうと解体できる場所がなくなっちゃうね」


 さすがに、村の外での解体作業は危険で危なそう。

どうやっても匂いが出るからね。魔獣が絶対に寄ってくる。


「この村にも狩人組合があるようじゃから、そこで設備を借りられるはずじゃ」


 どうしようかと思っていたら、ピニャーシュさんから助言をもらえた。

狩人組合に会員登録をすると、解体所以外に訓練所も使えたり、技術指導を受けることもできるらしい。


「狩った獲物の売買が本業じゃが、それ以外にも完成品の魔道具や、従魔の買取も行っとるし、村や町に入る際の税金が免除されたりと、登録しておくと何かと便利じゃな」

「じゃあ希望者は明日、みんなで登録しちゃおう」


 騎獣として使えるから高値だと聞いて、フォレチェルも捕まえてあるからね。

わたしも登録して、ちゃっちゃと売ってしまいたいと思います。

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