第4話 停止
─時の流れは、普通ならば何者かの干渉がない限り、絶えず流れてゆくものである。
時に干渉する、つまり時を止めたり、巻き戻したりすると、
生物は一瞬だけ、全身が凍りつき固まったようになる。
同時に意識は、時が干渉されている間だけ飛ぶ。
─時は万物に影響を及ぼすもの。
時の流れに干渉することは、それに見合った代償を払う必要があるのだ。
「…我ここに命ずる。時よ、止まれ。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「……っ…」
何故だろう。目が開かない。
固く閉じられた宝箱のように、まぶたが固い。
意識はあるのか?それさえも分からない。
ぼんやりしてて、よく分からない。
でも少しずつ、体の奥から炎のように力が湧いてくる。
いや、戻ってくる、と言うべきかな?
とにかく、今は目を開けることに集中するのじゃ。
誰かが私を呼んでるのが聞こえてくる。
くぅっ!目よ開くのじゃあ!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…ぅ。何じゃ?これは??うぉっ?!」
「良かったよぉーー!!フォルテちゃぁぁん!!!」
─何がどうなっておるのじゃ?
ここは森の中じゃないのか?
というかリリーの抱きしめる力が強すぎて、意識がっ…
「あががががっ…ぐるじぃ…」
「わーっ!ごめんごめん!!」
「…ってことがあってねー。」
何やら、ここは例の探していた家らしい。この家の主が私たちが魔物に襲われていたところを助けてくれたようじゃ。
でも、リリーはあまりよく覚えてないらしい。
リリーはすぐに起きて、その家主と話をしていたようだけど、私は丸一日眠っていたらしい。
「そうなのか…ところで、この家の主はどこに?」
「あっ、主さんならもう少しで戻ってくるって!」
では、家主が戻ってくるまで、この家を見渡してみようじゃないか。
~【森の中の隠れ家】~
部屋の中は綺麗に整理されている。私が泊まっている宿屋とあまり変わらないのう。
一つ気になる事としては、本がかなり多い。
本が好きなのか?
それとも、これらは全て魔法についての本で、何かの研究に使っているのか?
私も魔法の本は好きじゃから、こういうのは悪くない…!
…ガチャリ。
「ただいまー。」
リリーかの?いつの間に外に出ていたのか。
…いや待て、外はあの深い森のはずじゃが?
「リリー、いつの間に外にいたのか?心配かけないで…って、え?」
「…あら?」
─────────────────────
「本当にごめんなさいっ!!!」
いきなり謝られた。この人が、この家の主?
「フォルテさん、体調とか大丈夫でしょうか…?」
「え、ええ。今は大丈夫じゃ。」
「良かった。ホントに良かった…」
「ワタシはミライ。この森の隠れ家に住んでいる者です。」
ほほう、この家の主はミライという女性じゃったか!てっきり変わった男が家主なのかと思っておったわ。
「先程、森の中で"バッタリン"が大量に移動しているのを見かけ、何事かと思い後をついて行けば、お二方が襲われているのに気がついたんです。」
「それで私たちを助けてくれたという訳か。
しかしなぜか、助けられた時は何が起こったのか覚えておらぬのじゃ。」
「あっ、私も覚えていないかも!なんか一瞬凍りついたような感じになってー。」
「…ワタシは、数少ない"時間操作魔法"の使い手なのです。」
おお!この者が例の"時間操作魔法"に詳しい人か!詳しいだけでなく、使い手と来たかっ!これはアツいのう。
「ワタシがあの時、時間を20秒程止めました。止まっている間に"バッタリン"の群れを仕留めたのですが、お二方が気絶してしまったんです。」
「えっ、そうだったのか?」
「はい。
"時間操作魔法"の欠点は、止めた時間の長さだけ、生物に受ける影響が変わる。俗に言う
"代償"の大きさが変わる、ということです。」
「ってことは、ミライさんがもし30秒時を止めていたとしたら?」
「…リリーさんはともかく、フォルテさんは眠り続けていますね。それも永遠に。」
「ちょちょちょちょっと待てーい!サラリと怖いことを言わないでおくれっ!」
「あはは…
ん?その本、もしかしてワタシの本ですか?」
そうじゃそうじゃ!目的は、この本の中身を知ることじゃったわ!
「うむ。さっきから言っている"時間操作魔法"について知りたいのじゃ!」
「えっ?!さっき、"代償"が大きい魔法だと言いましたが…」
「でも時間を操れるなんて最強ではないかの?あの女神よりも強いのではないか?」
「ふふ…フォルテさんは純粋な方ですね。
…良いでしょう!私が教えて差し上げましょう!」
「よっしゃあ!」
ペラリ。
「うう、改めて見ると、何だか恥ずかしいですね。」
ミライは変わり者だっていう噂は本当なのかの?至って普通の、ちょっと恥ずかしがり屋な女性って感じだけど…
「でもこれはフォルテさんのためです。一肌脱がなくては…!」
「"万物を導く時よ、我が声に応えよ。我が望みは、時の凍結なり。我ここに命ずる。時よ止まれ。"」
─────────────────────




