トントン拍子ってベッドの横に置いてありませんか?
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――あれから特に何もなく、何もないであろう旅に出る日がきた。何もないであろうと言ってもノアとヘライトの二人はゲームの攻略キャラだった。
要は、そういう人に降りかかるものがあるかもしれない。主人公補正的なやつ。
「マキナ様、準備はできましたか?」
「ええ、頑張って終わらせました。……でも、王様には言いましたか?」
「何をですか?」
「旅に出かけることです、大体、王子達がこんな庶民の家で暮らしていること自体王様は」
「五月蝿いです、早く行きますよ」
絶対行ってないし言ってない。そんなの許されないに決まってる、第一王子と第二王子がいなくなるって王国からしたら大打撃。
「マキナ、どこから嗅ぎつけてきたのかは知らんがあいつが来た」
「あいつ……」
「シアだ、シア・カーデニ」
「お別れでも言いに来たんじゃないですか」
一緒に行きたいと言っている、と呆れきった表情で言う兄様は最早シアちゃんに対する態度がどうなろうと構わない。
せめて少しは猫被れと思うけれど、兄様がそれでいいんだったらそれでいい。
「あの、私も足引っ張るかもしれないけど……一緒に行かせて下さい」
「本当に足引っ張られたから来るな」
「寄るな近づくな触れるな悪魔、私とマキナ様の仲を裂こうとしたくせに」
「今のあの子に行っても通じないぞ少年」
やんわりと制止するのを試みるが、二人は威嚇状態だ。扱いにくい小動物ねえ。
シアちゃん……もういいか、シアは何が何だか分からないと言った顔で私を見つめてくる。私が分かんねえよこんなの。
「マキナ、あいつと会ったことあるのか?」
「あ、そういう訳ではなくて……あーっと、やっぱそういうことでいいや」
「……そうか。俺はどちらでもいいぞ、お前が離れないならな」
兄様も段々ノアやヘライトみたいになっている。私中心だ、嬉しいけどかなりのプレッシャー。世の女性達にぶん殴られそう。
そんなことは露知らず、三人はシアを完全敵視している。どんまいとしかかけられる言葉がない。
「お願いします! 回復魔法しか使えないけど、精一杯頑張りますから」
「んなこと言われてもね、ご両親の許可とかがないと」
「取りました! レヴィア兄が行くって言ったら」
「兄をつけるな俺はお前のモノではない」
抑えろ耐えろ堪えろ兄様。嫌いな奴に馴れ馴れしく呼ばれるときの嫌な感じは私もよく分かるけど、シアが驚いてるから。
「な、なんでですか、だって前まで」
「過去に縋り付くな。俺はもうどうでもよくなったんだ」
だから抑えろって兄様。そんな心の声も虚しく響くだけ、今の私は兄様と恋人繋ぎを強制的にされた。
この上ない程の命の危険を感じているんだけど、それがどうすれば兄様に通じるか。今の私にはそれを知る術がない。
というかそんな術があるんだったら逃げてるわ。




