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56 巨大隕石迎撃

 まるで嘘のようだが、太古の巨大砲が残っていて砲弾が一発だけあった。

 この巨大砲を固定砲台として使い、その軸線上に隕石を誘導して迎撃するというのが三鈴AIが提案した作戦だ。


 もちろん、そんな作戦は三鈴AI抜きでは考えられない。

 隕石をリアルタイムで追尾しつつ迎撃し、変化したコースから質量などを逆算して次の一手を決める。それを瞬時に実行するという超絶技は他の誰にもできないことだ。


「信じられないが、やるしかないか」

「ほんとに。でも、可能性はあるのよね!」

「まぁ、全部うまくいったらだがな!」


 とりあえず、まだ時間はある。さっそくこの超絶難易度作戦の準備が開始された。


  *  *  *


 古代の砲弾は祭壇から降ろされた。

 泣いても笑っても、この一発しかない。慎重に扱う必要がある。どんな原理の砲弾なのかは不明だが、ゴミなどが付いていて詰まったりしたら目も当てられない。宮司によりお祓いをし、技術ネギたちによって奇麗に磨き上げられた。

 また、直径1mの心柱は三鈴AIの指示のもと仰角が修正された。


 もちろん、巨大隕石の誘導を行う迎撃隊の準備も怠らない。


『弾倉は全部入れておけよ。弾が足りませんでしたじゃ話にならん』


 迎撃隊の西園寺が指示を飛ばす。

 偏向射撃にどれだけの砲弾が必要なのかは分からない。可能な限りの砲弾を用意したいところだが撃てる時間は長くはない。実際には弾切れになることなどないだろう。

 しかし、別の隕石のために砲弾を使ってしまう可能性はあるからな。出来る準備はしておかなければならない。


  *  *  *


『500kgの砲弾は重すぎます。心柱に簡単に挿入できるようにレールを作りましょう』


 技術ネギ風雲寺の提案で砲弾のガイドレールが急造された。

 迎撃の瞬間、心柱のそばにいられるのは巫女しかいない。とても500kgの砲弾を抱え上げることなどできないからな。

 まぁ、三鈴AIがサポートしてくれるとは思うが、状況的にそれどころではない場合もある。


「36時間前ってことは、ほとんど真上って事かしら?」

「そうだろうな。巨大隕石は真上から降ってくる」


 時間帯により隕石群の進入角度は変わる。

 真上から来るということは、滞空時間は短くなるが仰角などのコース修正も小さくて済む。ただし、撃ち漏らした場合の被害は大きい。


「迎撃できたとしても、被害は出るだろうな」

「たぶんな。あの巨大砲の性能によるが」


 発射エネルギーが不十分なら地上はかなりの被害を受けることになるだろう。もちろん分裂すれば被害はさらに増える。どれだけ隕石のエネルギーを相殺できるかが肝なのだ。

 しかし、これはもう言っても始まらない。やれることをやるだけだ。


  *  *  *


 いよいよ今夜だ。


「巨大砲の操作は、誰がする?」

『そうだな、正確な射撃は必要ないから、美琴に頼もう』


 西園寺は迎撃隊のみんなを見渡して言った。


『えっ? 私? 分かりました!』


 美琴はちょっと不安そうだ。

 主砲の発射だから責任重大だ。ただ、正確な射撃が求められる迎撃任務と違い、操作が簡単なこっちのほうが美琴に合ってるかもしれない。砲弾を装填して発射ボタンを押すだけだからな。問題ない。誰がやっても同じだ。


「魔動機関砲に問題は無いのか?」

『大丈夫だ、一台交換したが実績のある魔動機関砲だからな。既にキャリブレーションは終わっている』


 西園寺は確信した顔で言った。迎撃隊の準備は万端のようだ。


  *  *  *


-巨大隕石到達まで、あと5時間。軌道確定。偏向計画策定開始。


 三鈴AIから報告が入った。


「いよいよか!」


 まぁ、やれることはやったんだ。

 とはいえ、現地に住む人間と俺たちとでは感じ方も違うだろうな。少なくとも俺たちがパニックにならないように気を付けよう。


  *  *  *


-巨大隕石到達まで、あと1時間。最終迎撃準備。各員配置願います。


『よし、全員配置につけ!』

『『『『『『はい!』』』』』』


 社務所で待機していた迎撃隊の面々は、それぞれの持ち場へと散っていった。

 いっぽう美琴はというと五重塔へと向かった。


 そこは、いつもなら暗いだけの塔の内部だが今日ばかりは明かりが灯されていた。古い木材の香り漂う社の中で、真っ白に浮かび上がる古代砲は異様な雰囲気を纏っていた。


『なんだか、暗くてさみしいなぁ』


 俺には特に暗くは見えなかったが美琴には暗く見えたようだ。持ち込んだ椅子に座っても落ち着かない様子だ。この部屋には砲弾があった祭壇以外にはなにもない。殺風景な部屋だからな。


「美琴、砲弾のレールはちゃんと動かせるよな?」

『うん、大丈夫だよ』


 急場で作られたものだがレールの滑りは何度も確認している。

 美琴は一人じゃない。俺も見ているし、三鈴AIという頼もしい味方もいる。何も問題はない!

 そう、俺は俺自身に言い聞かせた。


『ねぇ、龍一』


「うん? どうした、美琴?」


『なんか話して』


 誰もいない部屋で心細いのか?


「なんかって言ってもなぁ」


『龍一は、奥さんいるの?』


 は?


『彼女とか』


 恋バナかよ。


「ああ、いないけど」


『そうなんだ』


 こういうときって、そういうこと考えるもんなのか?


「美琴は、」

『いないよ』


「そ、そうか」

『うん。いない』


 まぁ、巫女だしな。そうなんだろうな。


『次も会えるかな?』


 次も?


-巨大隕石到達1分前、コース正常、自動追尾異常なし、偏向射撃準備!


「無粋な奴」

『ほんと』


-申し訳ありません。


「よし! やるか!」

『はい!』


『お前ら、準備いいか? 大丈夫だ、我に続け!』


 西園寺から通信機で檄が飛んだ。


『『『『『はい!』』』』』


「美琴、砲弾装填だ!」

「了解!」


 キュキューーーッ、ガギッ


『えっ?』


-15秒前、偏向射撃開始!


 三鈴AIがLEDをフラッシュした。


 ガガガガガガシューーーーーーン


 迎撃隊の砲弾は巨大隕石の一部を削り取り、わずかにコースが変わった。


「美琴、砲弾はどうした?」

『はいらな~い』


 なに~っ?


「三鈴!」

-間に合いません。


「いいから蹴とばせ~~っ!」

『巫女キーーーック!』


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