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54 古代砲

 菅野宮司が巨大隕石を撃ち落とせる巨大砲があると言いだした。


『実は、伝説の星降りでは古代の大砲で巨大な隕石を撃ち落としたと伝わっているんです』


 昔の異常な星降りでも巨大隕石が降ったのか! そして、それを凌いでいたのか!


「古代の大砲?」

「10mクラスの隕石を落とせるような古代の大砲があったと?」

『それは分かりません。伝説のそれが1mクラスなのか10mクラスなのかは分からないのです』


 確かに完全に撃ち落としたなら、バラバラに砕け散ってしまったわけだから痕跡は残らないだろう。


「出たわね! 古代の兵器!」


 異世界ものの定番だもんな! って、兵器なのか? 兵器じゃ無理じゃないか?


「動くんですか?」

『わかりません。ただ、大砲そのものは、遺跡として残っています。少しは参考になるでしょうか?』


「動かなくても、規模は分かると思います」


 伝説の大砲がまだあるなら、その規模は分かるはずだ。分からなくても何かのヒントになるかもしれない。今はどんな可能性でも調べてみるべきだ。


「ぜひ見せてください」

『わかりました。では、こちらへ』


 そう言って菅野宮司が先に立って社務所を出た。巫女たちも後に続く。


「その大砲は、近くにあるのですか?」

『あの、五重塔がそうなんです』


 菅野宮司は社務所の横に聳え立つ古びた塔を指さして言った。

 神社に不釣り合いな塔だと思っていたら、砲台だったのか!


  *  *  *


 この神社にある五重塔は古代の砲台だという。

 はるか昔の大砲が使えるとは思わないが、魔石がある世界だから何があるか分からない。可能性はあるのかもしれない。少なくとも調べる価値は十分にある。


「古代の大砲とは驚いたわね」

「本当だな」

「楽しみだ!」


 菅野宮司によると、さすがに塔自体は後世に再建されたものだそうだ。巨大砲を残すために作り直されたとのこと。

 巫女たちは五重塔の内部へと案内された。


  *  *  *


 外から見ると普通の五重塔のように見えるが、内部は全く雰囲気が違っていた。


『あれが、古代の大砲です』


 菅野宮司が指さした先には、真っ白な心柱が真っすぐ天井から伸びていた。


『す、すご~いっ』


 美琴も初めて見るようだ。普段は公開されていないらしい。


 確かに塔は日本でも心柱を中心にした構造だ。しかし、明らかにこの心柱は普通ではない。

 心柱の直径は1mくらいあるだろうか? それはまるで御神木のように立っていた。そしてその底部には砲弾を挿入すると思われる横穴が大きく開いていた。

 また、壁面には魔石を入れるような場所があり、すぐ横には制御スイッチのようなものが付いていた。

 これは確かに大砲に違いない。


「この心柱は仰角を調整できるようだな」


 乙羽がまず気にしたのは砲としての構造だった。

 なるほど、そうでなくては迎撃などできない。振り子のように砲の底の部分を移動する形で角度を変えるようだ。


「けど、これだけだと、あまり角度を調整できないだろうな」


 確かに乙羽の言う通りかも知れない。そもそも傾けすぎたら塔として立っていられなくなる。


「とにかく最上階まで行ってみましょうよ。何かあるかも?」


 荻野が興味深そうに言うので、巫女たちは塔の最上階まで登った。

 心柱の最上部には、何やら分厚い構造物が取り付けられていた。


「何あれ?」

「なんだろうな?」


 天井へ抜ける心柱が一回り太くなっている。


「あれは、たぶん偏向コイルだな」

「偏向コイル?」

「いや、コイルかどうかは分からない。おそらく、発射角を砲の先端で捻じ曲げる装置だろう」

「なるほど、そう言うことか!」


 この偏向装置の存在があるから心柱の仰角が制限されていても使えるのか。

 隕石として最も恐ろしいのは入射角が深いものだ。角度が浅ければ大気圏で反射される可能性が高いし、滞空時間が長くなって消滅する可能性も高くなる。しかし真上から来るような隕石はそうはいかない。

 この大砲は入射角が深いものに特化しているようだ。


「でも、どうやって目標を見つけるのかしらね」


 確かに巨大砲はあった。

 だが、闇雲に撃って当たるものではない。精密な観測をリアルタイムで出来ないと隕石を撃ち落とすなど不可能な筈だ。

 最上階を探してみたが他に特別な装置などはないようだった。


『さすがに見晴らしがいいわね』


 窓に寄って外を眺めた朝霧が思わず漏らした。

 五重塔の最上階だからな。街の絶景スポットと言える場所だ。


「ここって、街の中心にあるんだな」

『神社自体が街の中心にありますからね』


 後から登って来た菅野宮司が教えてくれた。


「そうなんだ」


「うん?……街の中心?」


 すると、乙羽が一人ぶつぶつ言い始めた。


「朝霧、すまない。街の別の方向も見せてくれないか?」

『はい? 分かりました!』


 乙羽は何が気になるのか四方の窓から街を眺めては驚いた顔をしている。


「なんだ? どうした?」

「いや、街の外壁の屋根が気になってな」


 乙羽がおかしなことを言い始めた。


「屋根? あの茶色の屋根か?」

「ああ。あれ、俺には反射鏡にしか見えないんだが?」

「反射鏡ですって?」


 荻野も何か気が付いたのか?


『あの屋根は、純金で出来ています。この塔の屋根もそうですが昔は神事としてよく磨いていました』


 菅野宮司も覗き込んで説明してくれた。


「そうなんだ」

「ほう。って、ことは?」

「つまり。これは、反射望遠鏡なんじゃないか?」


 な、なんだと~っ?

 乙羽がとんでもないことを言い出した。


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