表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/58

53 消えた隕石

 星降りは約一か月間続く。

 ただし、常に一定数の隕石が降るわけではなく、2週目から3週目あたりがピークになるという。

 3週目に入る今日は、まさしくこの時というわけだ。


『もう、大丈夫そうですね!』


 美琴が軽い口調で昼食をとっていた。昨夜は迎撃がなかったからだ。

 ピークでこの状態なら、気が緩むのもわかる。美琴に限らず社務所内の雰囲気は明るかった。


『お疲れさんっ!』


 朝の魔物討伐から帰って来た南門の討伐隊からも声がかかる。


『この数日、ザコばかりだから全然疲れてないがな! はははっ』


 西園寺も珍しく軽口をたたいている。

 気持ちはわかるが、あまりそういうことは言わないほうがいい。


 実際、ちょっと難しい顔をしている奴がいた。

 乙羽である。


「どうした乙羽」

「ん? ああ、いや、この数日ザコばかりというのが気になってな」

「そうか? 異常な隕石群は抜けたんじゃないのか?」


 菅野宮司が心配した現象が終わったことを願う!


「そうよ、考え過ぎよ」

「だといいんだがな」


 それでも乙羽は眉根にしわを寄せだまま、俺が淹れたコーヒーを一口飲んだ。


「なぁ。魔石って、未来を変えるんだよな?」

「あっ? ああ、そうだな」

「そうね」


「でも、それはありえない未来じゃない。石を並べ替えてるに過ぎない」


 うん、地獄の針落としで言えば、針の落ちる場所が変わるってことだ。


「そうだな。分布が変わるだけだろう」

「そうね。不可能なことは起こらないわね」


「とすると、ここ数日なくなった隕石はどこへ行くと思う?」


 魔石が何をしたのかってことか。


「そ、そりゃあ、周辺の宙域だろう」


 隕石群の中で、浮いてた場所が変わるとかだ。


「もしかして、それがまとまってくるってこと?」

「うん、それだけだったら、まだいいかもしれない」


「他に何か?」

「なんなのよ。早く教えなさいよ」


 乙羽は俺たち二人を見渡してから声を落として話し出した。


「この場合、魔石で変わった確率には二つのケースが考えられると思う」


 二つのケース? 二つの未来?


「一つは、さっき言ってたみたいに、隕石の分布が周辺に移動したケース」

「うん」

「この場合は、移っただけだから、あとで隕石は増える可能性がある」

「あっ。逆にやばかったか?」

「でも、それくらいなら、なんとかなるんじゃない?」

「たぶんな。で……」

「で?」

「で?」


 俺と荻野はのめり込むように乙羽の話を聞いていた。


「もう一つは、代わりの何かに替わったケースだ」


「代わりの何か?」

「そうだ。代わりの同等なものだ」


「それって、同じ質量の別の何かってこと?」

「うーん、まぁ、そうかもな」


「同じ質量って」


「巨大隕石じゃないの!」


 確率をいじったおかげで小物がなくなり、代わりに大物が来る。そんなことが起こっているというのか?


「つまり、変わったのはコースじゃなくて、キャストってことか?」


 俺たちが魔石を使ったのは、1mクラスの隕石が街を直撃せずに街の周囲へ落ちてくれることを期待してのことだった。つまり、隕石のコースを修正したかったのだ。

 しかし、コースではなく隕石そのものが変わった可能性もあるということだ。1mクラスの隕石が消えて代わりに別の隕石になった?


「その可能性がある」


 つまり、隕石に変化がなく街以外に落ちようになっただけなら数は減らないはずだ。もし、数が減ったなら別の何かに変わった可能性がある。

 もちろん、隕石の分布は均一ではない。たとえ、隕石の種類が変わったとしても魔石の影響かどうかは分からない。


「ま、まさかな」

「まさかね」


 すると、俺たちの考察を待っていたかのように三鈴AIが警報を発した。


-警報! 警報! 巨大隕石発見。10mクラスです。到達まで36時間。繰り返します。巨大隕石発見。10mクラス。到達まで36時間。


 いきなり社務所内に緊張が走った。

 緩んでいた空気は一瞬で消え、誰もが巫女の三鈴に注目した。


「くそ! やっぱりか!」


 乙羽が思わず口走った。

 俺たちは10mクラスの隕石に対抗する手段を持っていない。それは誰もが分かっている。

 俺たちは、1mクラスの隕石を避ける代わりに10mクラスを呼び寄せてしまったのか? この街に隕石が落ちるのは運命だったとでもいうのか?


「どうすんの、これ?」


 思わず呟いた荻野の問いに答えられる者は誰もいない。

 俺は乙羽を見た。解決策を出せるのはお前くらいだからな!

 巫女隊も討伐隊も固唾をのんで聞いている。


「巨大砲が必要だな」


 乙羽が吐き出すように言った。


 10mクラスの隕石を撃ち落とすことは容易ではない。

 本来ならば迎撃にも10mクラスの物を打ち上げなければならない。隕石の持つエネルギーを相殺しなければならないからだ。右手のこぶしには左手のこぶしが必要なのだ。

 もし、小さな砲弾で同じことをするなら、隕石の何倍もの速度で打ち上げる必要がある。そうしないと、たとえ隕石がバラバラになったとしても衝突エネルギーはなくならないからだ。

 普通、隕石は20km/sほどで落ちてくる。地球から脱出する第一宇宙速度の約7.9km/sよりずっと速い。この数倍以上の速度で砲弾を打ち上げる必要があるのだから簡単な話ではない。


「そんな巨大砲なんて、どうやって作るんだ?」

「三鈴じゃだめなの? 三鈴にしかできないでしょ?」


 そうだ! 俺たちには奇跡のような三鈴AIがあるじゃないか!


-申し訳ありません、次元フィールドの直径20mの加速では10mクラスの隕石を撃ち落とすことは困難です。大型のコイルガンを作ったとしても焼き切れてしまいます。


 なんだと~っ!

 確かに、加速する距離が長ければ三鈴AIで何とかなったかもしれない。しかし三鈴AIが使える次元フィールドの有効範囲は半径10m。めいっぱい使って直径の20mだ。この距離では砲弾の加速が不十分だということだ。

 あるいは、次元フィールドで製作可能な20mのコイルガンを用意する方法も考えられる。だが、この20mのコイルガンの加速でもどうにもならないということだ。

 エネルギー的に全く不足しているからだ。


『巨大砲ですか』


 そんな俺たちの会話を社務所の端で聞いていた菅野宮司が、ためらいがちに言った。


『ないこともありません』


 えっ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ