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51 迎撃

 異世界の天ヶ崎村では粛々と「星降り」対策が進められているが、地球の俺たちもまた忙しく働いていた。


 まずは、次元バリアの検証である。

 今まで魔物討伐のときに次元フィールドとして展開してはいるが、実際にどこまでの防御能力があるのか詳しく検証したわけではない。「星降り」では極限的な性能を試されると思われる。始まってから力不足でしたとは言えない。


 そこで魔動機関砲を使って疑似的に防御力をテストすることになった。

 実際に隕石を当てる訳にはいかない以上、一番隕石に近いエネルギー弾の魔動機関砲を使って試してみようというわけである。

 この魔動機関砲を防げないようでは、とても1m級隕石を防ぐことはできない。


 美琴が次元バリアで的を覆って、10m離れたところから西園寺が魔動機関砲で撃ちこんでみることにした。もちろん、美琴も的からは10m離れている。


『じゃ、最初は単発で行く』

『はい、いつでもいいです』


 ガシューン

 バッーン


 魔動機関砲から発射された弾丸は10m先の的の次元バリアで弾き飛ばされた。というか、粉々になった。

 問題なさそうだ。


「よし、次は連射でいく」


 ガガガガガガシューン

 ババババババッーーン


 弾丸は次元バリアの表面で粉々になったが、的自体には影響がないようだ。ほぼ、完璧に防いでる。分子レベルで多少抜けるかどうかだろう。


「やっぱり最強ね!」

「まぁ、次元の境界が銃弾ごときでどうにかなる訳ないがな!」


 まぁ、乙羽の言う通りだ。ただ、次元バリア自体はゆっくりした動きには柔軟に対応するし格子構造なので、なんらかの影響がでる可能性は十分にあったのだ。


 でも、これで大丈夫だろう。

 っていうか、多少でも抜けるようなら困っていたところだ。「星降り」の最中に巫女たちを護るのは、この次元バリアしかないのだから。


  *  *  *


 神社内に配置する隕石迎撃ポイントは、神門前広場の左右両側と奥の拝殿前広場の三点に決まった。

 仰角を大きく取れるように、まるで高射砲のような台座が必要になるが、神社の建物を打ち抜かないように配置するのはなかなか難しかった。


 魔動機関砲の台座は特別製だが魔動機関砲自体はいつものドットサイト付きのものだ。巫女用と討伐隊用の二台が並べて配置されている。

 また、拝殿前広場の二か所には50cm望遠鏡が据えられた。

 この望遠鏡は三鈴AIが直接操作して1m級隕石を探索するために使用する。隕石の方位角、仰角はもちろん、瞬時に距離をも測定する。


『まるで寝台のような座席だな』


 配備された魔動機関砲の台座を見ての西園寺の感想だ。

 ほとんど直上を狙うような形の座席なので、確かに寝台と言えば寝台だ。


『一晩中監視と言っても、三鈴が警報を出すのは8分前だからね。あまり柔らかい必要はないが同じ姿勢で疲れないようにしたんだ』


 設置した風雲寺ネギだ。設計や工作では乙羽と三鈴AIも参加しているが、最後の組み立ては彼だ。最初は高射砲の台座に感心しきりだったが、最終的にいいものが出来たようだ。


 予定としては、一晩の監視中に実際に迎撃することはない筈だ。

 例年なら星降りの一か月の間に街の近くに落ちることは珍しいという。実際、この10年は街に被害が出ていないとのこと。今年もこの調子で魔動機関砲を使わなくて済むなら、それに越したことはない。

 一応、菅野宮司の懸念も住民には伝わっているのだが、それほど危機感があるというわけでもないようだ。菅野宮司が昔話にこだわっているだけだと言う人もいる。パニックになるよりはこのほうがいいかも知れない。


  *  *  *


 住民の危機感は大きくはないが、まさかの事態に備えるのが街の守護を担当する神社の務め。ということで、発射訓練が開始された。

 六台の魔動機関砲で巫女たちと西園寺討伐隊の三人が迎撃を担当する。西園寺は司令塔だ。


『隕石接近、砲撃準備』


 西園寺が、三鈴AIに代わって警報を発した。


『方位角135度、仰角83度』


 キュイーン、ククククッ


 実はここまでは、手動ではなく三鈴AIが自動でやることになった。これだけで、隕石が視野に入る。

 だから巫女たちの仕事はドットサイトを覗いて微調整するだけだ。これなら最悪、三鈴AIだけで迎撃可能になる。


 巫女たちの迎撃と三鈴AIの迎撃、どちらが良いかはやってみないと分からないということで、この方法となった。

 もっとも、巫女隊や討伐隊は魔動機関砲には慣れているが方位角や仰角などを合わせたことがないので、この方式にしたともいえる。これなら、いつもやっている魔物討伐とあまり変わらないからだ。


『10秒前、迎撃用意!』

『撃て~っ』


 ギャギャギャギャギャギャシューン


 さすがに、六台同時に発射すると、かなり大きな音がした。

 上空に上げたダミーは見事に打ち抜かれて、あとには風船だけがふわふわ浮いていた。

 まぁ、このくらいは余裕だよな?


『うん、だいぶ慣れて来たな!』

『西園寺隊長も、練習しましょう』


 早野がそう言って座席を譲った。


『おお、そうだな。何かあったら困るからな! 良しやるか!』


 魔動機関砲は六台ある。撃てる要員は七人だから、一人欠けたら補充要員はいない。全員十分に習熟してもらう必要がある。


 その後、西園寺も何度もダミーを打ち抜いていた。


  *  *  *


 しかし、そんな余裕のある雰囲気は、実際の星降りが始まってみると簡単に吹き飛んでしまった。


 俺たちの予想をはるかに超える量の火球が降って来たからだ。


「これ、ありえないんだけど」


 寝袋をもって来た荻野は、目の前に広がるとんでもない数の火球を見て、あんぐりと口を開けた。もう遅い時間なのに夜空は夕焼けのように赤く染まっていた。


「願い事なんか、言ってる余裕はないな」


 乙羽の言う通りだ。落ちてこないと分かっているからこそできる余裕の戯言だ。


 既に住民は地下シェルターに避難済みで、神社内の三か所に分散した巫女たちは魔動機関砲の座席に座ってスタンバイ状態である。まだ、三鈴AIの警報はでていないのだが。


「こんな量の隕石が、毎年落ちてくるのか!」


 俺も、感極まっていた。


『いえ違います。こんなことはありません。ここまで多いのは、例年でも最盛期の一週間だけです』


 美琴が震える声で言った。


『ほんとうです。最初の週にこれほどの火球を見たことはありません』


 紫雲も同意見らしい。


 するとそこに菅野宮司がやって来た。


『やはり今年は異常な年になるようです。皆さん、気を付けて迎撃にあたってください』


 街のトップが冷静でいてくれるのはありがたいな。

 そんな時だった。


-隕石発見。直径0.7m、迎撃準備。到達まで約6分。


 三鈴AIから警報が入った。

 マジかよ。予定では迎撃は2週目くらいに始まる筈だった。

 隕石は小型の0.7mということなので発見が少し遅れたようだ。小さくなればなるほど発見は遅れる。


『来ましたか!』


『よし、各自迎撃準備!』


 西園寺の一声で、全員一斉に魔動機関砲に取りついた。


『『『『『『準備完了!』』』』』』


-到達4分前、方位角175度、仰角75度 追尾開始!


 キュイーン クククッ


「がんばって!」


-到達1分前、誤差修正。


 ククッ


-10秒前、迎撃用意!


 カウントゼロで三鈴AIがLEDをフラッシュした。


『撃て~っ!!』


 ガガガガガガシューーーーーーン


-イリーガル破砕発生。


 ズッーン


 魔動機関砲の銃弾は隕石を正確に捉えたが、隕石に弱い部分があり分裂して次元バリアに激突した。


『大丈夫だ、次元バリアに小さいのが当たっただけだ! 迎撃成功だ!』


 全体を見ている西園寺がみんなを鼓舞するように言った。

 魔石を使って正しく当てたとしても、こういうこともあるんだな。


 そして、ありえないことに、その夜のうちにもう一度迎撃する必要があった。

 これは何とか奇麗に破砕できた。


 しかし、一晩に2度の1mクラスの隕石襲来は、百年来の出来事であった。


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