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50 新たな提案

 三鈴AIが魔動機関砲で隕石を迎撃できるかも知れないと言い出した。


-ただし、口径50cmの望遠鏡2台と、短波赤外線センサー、「シフト・アンド・スタック」アルゴリズムの適用が前提です。この場合、到達8分以上前に検出可能です。


 さすがに、三鈴AIの突っ込みが細かい。


「望遠鏡2台って、距離計にするつもりなのね!」


 なるほど、視差で距離を測定するのか。って、たぶんそれやるの三鈴AIだよな?


「乙羽はどう思う?」


 俺は乙羽をみた。


「50cmの望遠鏡は三鈴AIで作れるんじゃないか?」


-お任せください。素材を提供願えれば十分製作可能です。


 できるのかよ。AIだから言われるまで待ってたのか。


「よし、じゃ短波赤外線センサーは俺が買ってくる」


 乙羽は売ってる店を知ってる模様。てか、アキバの街を知ってても、そんな店は知らないぞ普通。たぶん、研究室出入りの商社とかだろう。


「シフト・アンド・スタックってなに?」


-それについては、既に取得済みです。


 三鈴AIが学習済みらしい。仕事が早いな!


「画像処理の方法だよ。映像を比較してノイズを消すんだ」


 さすがの乙羽だな。なるほど、ちょっと前の画面と比較して片方にしかないものはノイズだってことだろう。確かに、宇宙空間の隕石の映像は微弱だからノイズに紛れてしまうんだろう。


「間違い探しみたいな方法か?」

「まさしくそれだ!」


-隕石を探知した時点で方位角と仰角を提示しますので、魔動機関砲で迎撃してもらいます。ただし、まだ低い成功確率です。精度の問題もあります。


 まぁ、人間が操作するんだからな。


「街を直撃するものに限定するなら、かなり狙いやすいんじゃないか? 真っすぐ飛んでくるからな?」


-その場合、成功確率は大きく上昇します。


「おお!」


 やっぱりか! 条件を限定してやれば結果は違ってくる筈だもんな。

 とりえず、街の外に落ちるものはほっとこう。


「いいわね!」


「さらに巫女たち全員で迎撃すればいいんじゃないか?」

「確率の問題だもんね?」

「弾幕張るのか!」


-可能性は十分高くなるでしょう。


「よし!」

「いけそうね!」

「やるしかないだろ!」


 ともかく、星降り対策として俺たちから出せる提案が二つになった。


  *  *  *


 翌日、俺たちは思いついた星降り対策を披露すべく『星降り対策会議』に参加した。

 社務所の長テーブルには神職の多くが集まり、熱気が半端ない。


 街としてまず最も懸念される課題は「星降りによる魔物の暴走」だった。

 魔物たちも星降りではただでは済まない。むしろ何も知らない魔物のほうが右往左往するだろう。

 例年の話としては森から出て来た魔物が街を取り囲んで暴れまわるそうだ。さらに、今年は魔物が増えているので今まで以上の数になるだろう。

 もちろん、魔物討伐そのものは隕石が落ちなくなった夜明けからの対応となる。


『それについては心配ないだろう。今年は魔動機関砲が配備されたからな』


 菅野宮司の問いかけに、西園寺が自信満々に応えた。


『そうですね。現在稼働中の四か所の門ですが、追加で予備の魔動機関砲も配備しようと考えています。これで対応願えればと思います』

『うむ。十分だ。任せてもらおう』


 西園寺の言葉に菅野宮司も胸をなでおろす。


 次の課題は、星降り自体への対応である。


 現在進行中の住民や物資の移動に問題はないそうだが、新たに菜園が作られたのでこの管理について話し合われた。地下でやることがない住民の気晴らしにもなるので参加希望者が殺到しているらしい。

 この会議では、唯一明るい話題だった。


『今日は異界からの御提案もあるそうです』


 菅野宮司の紹介で、俺は用意した二つの対策案の説明を始めた。


 まずは1つ目。次元バリアを神社の上空に展開する案だ。


「三鈴を持った巫女たち三人を神社の三か所に配置すれば、神社と地下シェルター全域を隕石の直撃から護ることができるでしょう」


『す、素晴らしい! 本当に、そんなことができるのか?』


 思わず西園寺が乗り出した。

 地下に避難していても大きな隕石が直撃すれば無傷ではいられないのを知っているからだ。


-お任せください。


 当然というように三鈴AIが応える。もしかして、ドヤ顔してる? ドヤ声?


『ならば、討伐隊全員が地上の宿舎で寝泊りできるのだな! 毎朝魔物討伐に出易くなる』


 確かに、星降りの終わった朝に50m登ってくるのは大変だろう。

 討伐隊の面々は歓喜の声をあげた。


  *  *  *


 次に、魔動機関砲による隕石の迎撃について紹介した。


「クレーターを作るような1m級の隕石を迎撃します。街や農地を直撃するもの限定ですが、高い確率で落とせると考えています」


 これについては確実な話ではない。


『げ、迎撃だと? どうやって?』


 さすがに西園寺が怪訝な表情で言った。


「今配備中の魔動機関砲を使います。追加配備の予備機を回してもらうと助かります」


『おお、あれか! 回すのはいいが、我々が隕石を撃ち落とせるだろうか?』


 当然、撃つのは自分たちだと分かっているだけに疑うのも当然だ。


「問題はそこです。通常なら隕石に当てることなどかないません」

『うん、そうだろうな』


「ですが、三鈴がいち早く隕石を発見して事前に指示を出すことが出来ます。これにより正確な迎撃が可能となります」


『おお、なるほど! それは頼もしい! ならば出来るやもしれぬな!』


 まだ、納得はしていないようだ。


「更に、巫女隊と西園寺討伐隊の合計六台で一斉に迎撃します」

『おお、なるほど。そういうことか! ならば、誰か当たるだろう』


 街を襲う1m級の隕石は、そう多くはないはずだ。最悪の事態に備えた迎撃体制を敷いておけば安心感が違う。

 こうして、星降り対策として魔動機関砲による迎撃も決定されたのだった。


  *  *  *


 ここはいつもの開発室。もちろんいつものコーヒーを飲んでいる。


「そういえばさ、あそこまで三鈴AIにやらせるなら、魔動機関砲を直接三鈴AIに撃たせたほうが確実なんじゃないか?」


 乙羽がそんなことを言うのも無理はない。

 確かに三鈴AIが遠隔操作すれば確率は上がりそうだ!


「まぁ、普通はそうなるよな。でも、違うと思う。彼女たちは一鈴と三鈴を持っているからな」


「そうか! 未来を決める魔石だもんな!」


 そう。実際に命中率が半端なく良い。


「『三鈴AIの自動迎撃』対『人間+魔石』、どっちが成功確率が高いかしらね!」

「わからない。そもそも魔石の3Dスキャン能力が未確認なんだ」


「そうよね」

「けど、3Dスキャン能力が十分あるなら的確に弾丸を当てられる筈」

「百発百中だもんね!」


「試してみる価値はあるな! だめなら、三鈴AIに切り替えればいい。巫女それぞれに2台ずつ割り当てられる」


-はい。可能です。むしろ確実です。


「まぁな。でも、これが運命なら人間の可能性に先ず掛けたいんだ!」


-了解です。


 『人間+魔石』で人間の能力と言えるかどうかは分からないけどな。人工魔石が出来れば、そう言えるんだが。


 とにかく、「地獄の針落とし」を1点に集めたんだ。絶対できるよな?


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