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46 帰還

 遠征のすべての任務を終えて、今日は天ヶ崎村へ帰還する。

 巫女隊と討伐隊はうまい食事と奇麗な宿泊施設で出発前よりリフレッシュしているようだ。

 むしろ、開発室の俺たちのほうが疲れている。


「やっと帰れるか!」


 お疲れの乙羽。そういえば、こっち側で乙羽が一番働いていたかもな。俺も自分家なのに寝袋だからやっぱりちょっと疲れた。


「おっはよ~っ! 朝食行くわよ!」


 疲れてない奴もいた。


「なによ、だらしないわね~っ。シャワー浴びたしリフレッシュ完了!」


 まだ、寝袋から出たばかりの俺たちを見て言った。


「俺たちにもリフレッシュが必要だと思わないか?」

「ほんとだな」


 俺たちは近くの24時間営業のレストランでリフレッシュだ!


  *  *  *


 天ヶ崎の遠征隊が帰るというので、刈沢神社の社務所前には守沢宮司や神職とともに千代討伐隊も見送りに来ていた。


『新しく出来た橋まで見送らせてください』


 千代隊長が真新しい魔動車から降りて来て、生き生きとした表情で言った。

 うん、分かる。新しい玩具を貰った子供のような気分だよな?


「ありがとう。よろしくお願いします」


『ところで、その新しい橋に名前はないのですか?』


 千代隊長に言われて気が付いた。名づけを忘れていた。


「どうしようか?」

『どうしましょう』

『どうしたものかな?』


 紫雲と西園寺も困った顔をしている。

 見た目で言えばチタン骨で真っ白な橋。骨で出来ているのは丸わかりなので、蛇白橋? 白蛇橋? 蛇というより龍だとして、白龍橋? でも、元はシルバースネークだしなぁ。


「シルバーブリッジとかでいいよ。別にそんなにでかい橋でもないし」

『ああ、シルバースネークが由来と言えていいですね』

『シルバーブリッジか。いいな!』


 いいのか? 白いけど?

 紫雲と西園寺が賛成してくれるなら、それでいいか。


「あぁ。まぁ、後で変えてもいいよ」

「いや、絶対変えないと思うぞ」

「そうよ。鏡合わせの巫女と異界人が考えた名前ってことになるし」


 ああ、なるほど。そういう事ね。なんか、歴史に残るんだなぁ。しかも、作ってるしな。


「じゃ、名案だしてくれよ」

「いや、無理」

「もういいわよ」


 結局、シルバーブリッジということになった。

 よし、シルバーブリッジにGO!


  *  *  *


 帰り道は線路が奇麗に補修されているので、スイスイ進む。

 とはいえ、魔物の森を抜ける街道だ。スタンピード後とはいえ少しは魔物も出るだろう。

 そこで、練習を兼ねて先頭を刈沢討伐隊に任せることにした。

 続けて巫女隊、天ヶ崎討伐隊が続く形だ。このフォーメーションなのは、三鈴から半径10m圏内に納めて全体を次元フィールドで護るためだ。もちろん、こんな車間距離で走れるのも次元フィールドが全体をつないでいるからだ。


 また、千代隊長には予備のヘッドセットを付けてもらっている。


『こちら千代、聞こえますか?』

『こちら西園寺、感度良好!』

『準備はいいですか?』


『問題ない。出発してくれ』

『千代、了解です。では出発します』


 街の門を抜け、奇麗になったレールに乗るとすっとスピードを上げた。三台まとまって加速するのは、乗っていて面白いようで西園寺隊から歓声が上がった。


 時速で言えば50Km程度。馬車に比べれば速いが、魔動車としては遅めだ。

 魔物を振り切って走るとすれば、時速は80kmは越えないとな。


『前方右に魔物数体発見、こちらに向けて突進。攻撃開始します!』

『了解』


 ガガガガガガシューン

 ババババババッーーン

 ギィアーーーッ ギィアーーーッ ギィアーーーッ


『ははははっ。どうだぁ~~っ』

『やった~~~~~~っ』

『きゃ~~~~~~っ』

『いっちゃえ~っ』


 順調なようで、なにより。


「やっぱり魔動機関砲って性格変わるわね」

「そうみたいだな」

「こういうのが危ないんだよ」

『うん。こういうことか!』

『こういうことなのね』


 西園寺も紫雲も肝に銘じている模様。確かに、自分じゃわからないことってあるよな?


「そういや、魔物って人間からしたら毒だけど、魔物にしてみたら人間や普通の動物はエサなのか?」


『そうです。ただ、魔物同士のほうを好むようですが』


 紫雲が教えてくれた。


「そうなんだ。あぁ、重金属成分がないから、栄養の少ない野菜扱いなのかもな」

「野菜って」

「強い野菜かよ」

「畑じゃ採れないけどな」


 その後は魔物の襲撃もなく、すんなり骨の橋「シルバーブリッジ」に到着した。

 あ、『骨の橋』で良かったか?


  *  *  *


『では、ここでお別れだな。お疲れ様』

『ちょ、ちょっと待ってくれ』


 西園寺がそういうと、ちょっと焦った声で遮った。


『なにか』

『いや、宴会の席で聞いた話がちょっと気になっててな』


 千代は、ちょっと言いづらそうにしている。


『この橋で、気になる話なんてあったか?』

『その、快適に水に潜れるという』

『ああ、水陸両用車の話か! そうだな、そのテストもしておくか』

『いや、それもそうなんだが』


「それ、水着を着てみたいんじゃない? 最強水着を」

『おお、なるほど。それは確かに経験しておいたほうがいい。子々孫々語り継げるからな!』


 うわ。西園寺は子々孫々語り継ぐ気なんだ。おばあちゃんに、その話を聞かされる孫とか可哀そうすぎる。


「そりゃそうよ。『鏡合わせの巫女』がいたとしても、こんな経験いままでないんだから」

「そういえばそうか」

「俺たちができないことだから、猶更気づかないよな」


 そう、俺たちにはエフェクトが効かないからな。あれは羨ましい限りだ。

 ということで、水陸両用車のテストもそこそこに、さっそく水着選びがはじまったのだった。

 いや、水着回終わったよ? 終わったはずだよ? 温泉はないと思うぞ。


  *  *  *


『な、なんと! こんなところで、シャワーと露天風呂が楽しめるとは!』

『温泉だ~っ』

『すっご~いっ』

『きゃはははっ、ありえな~いっ』


 やっぱり、温泉もありました。

 いや、普通に共同浴場だけど。川岸に全員が入れる湯舟を作って露天風呂にしたのだ。もちろん、巫女たちも全員喜んで入っている。河遊びの後の風呂は気持ちよかろう! しかも東京の水だぞ!


 全部、三鈴AIのおかげだが。俺はひたすら樹脂を突っ込んでただけだった。

 まぁ、これで子々孫々語り継げるなら安いものだ。


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