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45 刈沢村魔動車

『刈沢神社の技術ネギ、涼村誠(すずむらまこと)と申します。よろしくお願いいたします』


 翌日、魔動機関砲や魔動車について聞きたいと技術ネギを紹介された。

 彼が設置した魔動機関砲をメンテすることになる。特に彼は魔動機関砲のメカニックに興味があるらしく、熱心に乙羽に質問していた。もしかすると、そのうち刈沢村独自の改良版が出来上がるかもしれない。ちょっと、期待しよう。


 実際に俺たちが通って来た東門に魔動機関砲を設置してみて問題ないことを確認した。


『実は、私たちも魔動車を作り始めたのですが、相談に乗ってもらえないでしょうか?』


 魔動機関砲の設置と説明が午前中に終わり、これから昼食にというときに涼村ネギから頼まれた。

 どうも、天ヶ崎の技術ネギから魔動車開発の経緯を教えられているようだ。

 話だけで自分たちで作り始めるとは意気込みが違う。

 まぁ、あれをいきなり作るのはハードルが高いが、出来ることはやりたいのだろう。天ヶ崎でも三鈴AIが作ったキーとなる部品以外はネギたちが作っている。

 やるとしたら、俺たちがいる今しかない。


「わかりました。今日の午後でしたら、お付き合いします」

『良かった。よろしくお願いします』


 天ヶ崎に帰るのは明日でいいか。まぁ、街道の整備は済んでるから帰るとなったら早い筈だ。


  *  *  *


 神社の中庭に魔動車と刈沢村で試作した車を並べて置いた。


『ほ~っ、やはり惚れ惚れしますね。似て非なるものとは正にこのこと』


 涼村ネギはそう言うが、あまり似ていない。というか、刈沢村のものは限りなくトロッコである。だが、一応水漏れのない構造のようでフロートさえつければ水陸両用車にもなるかもしれない。

 基本が鉄のフレームなので、部品の取り付け自体はむしろ刈沢村のほうが簡単である。


「インホイールモーターのタイヤとジャッキは同じでいいだろう。鉄なので水陸両用車にするには、発泡樹脂のフロートが必要ですがどうします?」


『おお、水陸両用車ができますか? でしたら、是非お願いします』


「鉄の車体を少し切り取りますが?」

『もちろん問題ありません』


「魔動機関砲も付けられますがどうします?」

『予備の一台をこちらに回してもらいましょう』


 これで、ほぼ構造は決まったようだ。主な部品はすでに設計ずみなので取り付けるだけだ。

 ということで、あっという間に作業が終わってしまった。まぁ、三鈴AIがやるからな。人間なら数人分(?)の工数なんだろうけど。

 おまけに、樹脂のボディまで用意してあげた。まぁ、オープンカー仕様だ。屋根が必要なら後でつけてもらおう。


 出来上がったものを見ると、なかなかかっこいい。刈沢村で用意したブルーの塗料を塗って完成である!


『すばらしい。本当にありがとうございました。これなら、長く使えるでしょう!』


 まぁ、タイヤのゴムが異世界のものなので、これを交換してもらえばなんとかなるだろう。

 底は、トロッコ枠の周りに発泡樹脂のフロートがぐるっと囲っている。このため、やや大型にはなっているが安定して浮けるだろう。水漏れしても沈まないそうだ。


『きゃ~~~~~、あれよあれよ!』


 いきなり、どこかから黄色い声がかかった。

 見ると、どうやら刈沢村の討伐隊員らしい数名が走り寄って来ていた。


『すみません。彼女たちは、この魔動車に配属予定の討伐隊なんです』


 そう言って涼村ネギが紹介した。


『千代討伐隊、隊長の千代千春(せんだいちはる)です。よろしく』

『千代討伐隊、副長の夢野由宇(ゆめのゆう)です。よろしく』

『千代討伐隊の料理係音野春香(おとのはるか)です。よろしく』

『千代討伐隊の洗濯係桐沢美瑠(きりさわみる)です。よろしくね』


 掃除係はいないのか?


『すみません、「係」は冗談です。おいっ、いきなり変なこと言うな!』

『『てへっ』』


 何これ、お約束なの?

 単純に、浮かれているだけのようだ。確かに、昨日の今日だ。伝説の魔獣が討伐されたばかりでは妙なテンションにもなるだろう。


『男の討伐隊員も居りますが、同性のほうがよろしいかと集めました』


 涼村ネギが申し訳なさそうにフォローした。


『それにしても、見事なものですね。このあと、乗り方のご指導を願えますか?』

『うむ。任せてもらおう。基本は同じだからな』


 千代隊長に西園寺が応えて言った。

 こうして、西園寺討伐隊が千代討伐隊に魔動車訓練を実施する運びとなった。

 まだ日は高い。十分訓練してもらおう。


 千代討伐隊が訓練している間に、涼村ネギは乙羽に魔動車や魔動機関砲のメンテナンス方法などの詳細を聞いていた。

 今風の製品とは違い基本は分解掃除できるようになっているので、丁寧に使えば何十年でも持つらしい。

 それでも分解できない部品については複数個渡している。


 その日は、夕方まで西園寺討伐隊が千代討伐隊を訓練していた。汗だくで帰ってきたので三鈴AIの風呂とシャワーを提供したのだが、これには異常に感謝された。


  *  *  *


 ここはいつもの開発室。


「異世界って、いつまでつながるのかしらね」


 三鈴の接続を切ってから、荻野がポツリと言った。


「そうだな。良くて数カ月って宮司が言ってたけど」

「次の星降りが終わるあたりじゃないか?」


「星降りねぇ。どう思う?」


「どうって?」

「今年は、異常なことになるのかな?」


「可能性はあるだろうな。最近、神話とか言い伝えが妙にリアルなんで気にはなってる」


「偉大な先人がいても後世の人間が伝承できなかったら失われる。残念な話だ」


「でも、それは普通のことなんだろうな?」

「恐らくな。文明は常に発展してる筈がないからな」


 そうはいっても、一度失われた記憶が戻ることはない。

 残すべきは情報であって物ではない。物は遅かれ早かれ朽ちていくのだから。

 ただ、物には隠された情報が眠っている場合がある。静かに自分を理解してれる日を待ち望んで。


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