43 川を渡る2
翌日、『鏡合わせ』の原理はともかく元気に起きた俺たちは早速橋の向こうへ渡ることにした。
「ふぁ~っ、龍一が変なこと言うから、寝付けなかったわよ」
「いや、お互い様」
「ほんとだよ」
「お前もな」
それにしても、あの異世界は身近な存在なのか。
* * *
その異世界では巫女たちと討伐隊が俺たちを待っていた。
『今日は珍しくゆっくりだな! もう陽は高いぞ!』
いや、西園寺。その陽は俺たちの陽じゃないんだけど? まぁ、何故だか時刻は一致しているんだが。接触してる世界同士だからか?
川原には食事をしたのか焚火の跡が見えた。三鈴AIに調理してもらうことも出来るだろうが、自分たちで魚でも焼いたのか?
「じゃ、早速、橋を渡るか! 一番乗りだ!」
『おお、そうだな。立派な橋だ。早く渡ろう! いや、ゆっくりでもいいか!』
西園寺が珍しくはしゃいでいた。こんなこともあるんだな。笑顔がちょっと眩しい。
『全員、乗車!』
『『『『『『了解』』』』』』
『『『三鈴アクティベーション』』』
『しゅっぱ~つ』
* * *
新しくできた橋の上から見る景色は格別だった。
自分たちで作った橋だからかもしれないが、シルバースネークの骨をふんだんに使った白くて美しい橋に仕上がっていた。
ただし、呑気にしていられるのは橋の上までだった。橋の向こうに広がる荒地は、いつの間にか魔物だらけになっていた。
「どっから、沸いてきた?」
思わずそんなことを言ってしまったが、もちろん応えてくれるものなどいない。
『このまま突っ込むぞ!』
西園寺の指示が飛ぶ。
「りょうかい!」
「紫雲、朝霧、荒地だから火器解禁だ! 思いっきり行くぞ!」
『『了解』』
俺は巫女二人に指示を出した。
『朝霧、右側お願い!』
『りょ~か~いっ!』
俺が前方、巫女たちが左右側面を受け持って魔物掃討が開始された。もちろん後方を受け持つのは討伐隊だ。
いつものマッドボア、ブラックベアに加えて小物のネズミモドキという魔物もいるようだが、とにかく数が多かった。
俺は三鈴ファイヤーアロー(機関砲バージョン)を選択した。
「いけ~っ!」
ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビューッ
ジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュワーッ
ギュアギュアギャギャギュアギュアギュアギュア グュアーーーーーーーーーッ
ギュアギュアギャギャギュアギュアギュアギュアーーーッ
『『三鈴ファイヤーアロー』』
ビューッ ビューッ ビューッ ジュワッ ジュワッ ジュワッ
ビューッ ビューッ ビューッ ジュワッ ジュワッ ジュワッ
ギュアーーーッ ギュアーーーッ ギュアーーーッ ギャギャ
ギュアーーーッ ギャギャ ギュアーーーッ ギュアーーーッ
『来たか! くらえ~~~っ』
ガガガガガガガガガガガガガガガガガシューン
バババババババババババババババババッーーン
ギィアーーーッ ギャギャ ギィアーーーッ ギィアーーーッ
ギィアーーーッ ギィアーーーッ ギャギャ ギィアーーーッ
ギィアーーーッ ギィアーーーッ ギィアーーーッ ギャギャ
『弾倉!』
『はい!』
ガガガガガガガガガガガガシューン
ババババババババババババッーーン
ギィアーーーッ ギャギャ ギィアーーーッ ギィアーーーッ
ギィアーーーッ ギィアーーーッ ギャギャ ギィアーーーッ
水辺に集まってきた魔物が橋の工事に気づいてこっちに来たんだろうか? とにかく、今までで見た中で最も多くの魔物の数だった。
そして、更に大物もいた。
「あれはなんだ!」
そこには、ブラックベアさえ小物に見える巨体を持つ魔物がいた。もしかするとこいつが多くの魔物を追い立てていたのか?
『あれは、恐らくエレファンタスだ』
西園寺が気が付いた。
つまり、象の魔物ということか? 本来の大きさの数倍なのは魔物化するときのセオリーなんだろうか? やっぱりチタンの骨の影響か?
とにかく、象というより恐竜という大きさだ。
『えれふぁんたす?』
『エレファンタス……』
『初めて見た』
他の討伐隊員も初めて見たようだ。
『あれ、何なのぉ?』
『大きいわね!』
『凄すぎる~っ』
『硬くて厚い表皮に覆われてる。弓も刀も通らない!』
西園寺が叫ぶように言った。やや声が震えている気がする。
「まずは、機関砲でいってみるか!」
小手調べだ!
ガガガガガガシューン
ゴブァゴブァゴブァゴブァーー
エレファンタスには特に変化なく、そのままこちらへ突進してくる。
「やっぱり効かないか!」
皮膚には食い込むようだが、分厚い皮膚の内部で止まるだけのようだ。
そういえば、昔の武士が騎馬で突撃するときは後ろからくる矢を薄い布で受けて防いでいたというが、原理的には同じ事だな。
「こうなったら、うちの最終兵器を出すしかないな!」
まぁ、最近見つけた最終兵器だが。
『草刈りか? 草刈りが出るのか?』
「おい、おかしな名前で呼ぶのは止めてくれ! ちゃんと次元カッターという由緒正しい名前があるんだ!」
『由緒正しい?』
「そこは突っ込まないでくれると助かる」
『了解した!』
「三鈴次元カッター!」
シュワーーーーーーーーーーーーン
次元カッターは目に見えない刃を高速回転している。しかも相手に合わせて大型化する。目の前のエレファンタスに合わせて直径10mほどにも広がっていた。
それでもエレファンタスは止まらない、当然魔動車も止まらない。
ジャッキーーーーーーーーーーーン
バァオッッッ?
エレファンタスは鳴いてる途中で息絶えた模様。
後には真っ二つになった巨体が横たわっていた。
* * *
『これが伝説にあったエレファンタスなんですね』
美琴は俺に見せるつもりらしく、三鈴を機関砲から外して魔動車から降りた。
「さすが、切れないものはない次元カッターね」
「これに勝てる魔物がいたら見てみたいものだ」
「そういう、フラグっぽいこというなよ!」
巨体を残骸を検分するように見て言った。
『さすがに、草刈りカッターは凶悪だな』
西園寺も魔動車から降りてきてエレファンタスの残骸を感無量という顔で見入っていた。
紫雲や朝霧も、他の討伐隊のメンバーも魔動車から降りてきて見たことない魔物を触ったりつついたりしている。
『しかし、酷い匂いだな。とっとと燃やしてしまおう!』
しばらく観察していた西園寺だが、顔をしかめて言った。
既に他の魔物たちはファイヤーアローで燃え尽きているので、残るはこのエレファンタスの残骸だけだ。
魔動車に戻るとすぐにファイヤーアローを打ち込んだ。後には巨大な白いチタン骨が残った。
『そうだ。これ、土産にできないか?』
西園寺が、おかしなことを言い出した。
「みやげ?」
『そうだ。もう、刈沢村に近い。今日中には着けるだろう。この巨大な骨を持っていったら喜ばれるぞ』
なるほど、確かにな。
巨大さだけならシルバースネークのほうが上だろうが、そっちは橋に使っちゃったしな。これはこれで見ごたえがあるから手土産には良さそうだ。
「でも運搬が。ああ、三鈴できるか?」
-お任せください。二台の車の上に浮かせて運びましょう。
やっぱり出来るんだ。重機モードだもんな!
うん? 上に?
『よし、刈沢村へ出発だ!』
その後も多少魔物は出たが、その日のうちに刈沢村に到着することができた。




