38 三鈴(機関砲バージョン)
魔石の途方もない可能性の話を聞いてしまい、ちょっと気が抜けてしまった。それはあくまでもこちら側の都合なのだが。
異世界では引き続き交易路修復の予定が待っている。呆けてる場合ではない。頭を切り替えていこうと気合を入れなおす俺たちだった。
* * *
次の遠征先は『刈沢村』に決まった。
ここは、天ヶ崎村からみると西方に約100kmほど行ったところにある街で、街道が整備されていたこの世界でも馬車で二日から三日の旅程になる。
遠征隊は線路を修復しながらの旅になるので、当然三日以上は掛かるだろう。
「やっぱり、夜中の魔物襲撃を考えたら私たちも野宿したほうがいいわね」
いや、うちの開発室は野宿じゃないぞ? てか、野宿っぽいのは俺と乙羽だけな気がするが?
「夜中に朝霧を魔物の中に放置できないからな!」
ちょっと熱い乙羽。そうですか。知りません。てか、朝霧だけかよ。
「三鈴があるから心配ないと思うけどね?」
意外と細かいこともやってくれるしな。もちろん夜中のトイレにも付き合ってくれるだろう。AIだから恥ずかしくないし。
むしろ、俺たちが見てないほうがいいだろう。
「龍一は、冷たい!」
「そうだよ。冷たいよ!」
ちょっと責められる俺。いや、部屋を提供してる俺が一番頑張ってる気がするぞ?
* * *
冗談はともかく、刈沢村遠征の準備が始まった。
天海村と同じく交易品としては魔動機関砲を5丁持っていくことになった。もう、天ヶ崎村の特産品と言っていいだろう。
当然、天海村の時と同様に巫女隊と西園寺討伐隊の2台の魔動車で行く。
ただ、今回は巫女隊の戦力強化も考えている。
というのは、巫女隊の魔動車が討伐隊と比べて監視が手薄だという指摘があったからだ。人員に全く余裕がないからな。今回のように魔動車2台の場合はいいが、巫女隊単独の行動をすることも考慮すると運転手以外の2名では死角が出来てしまうというのだ。
だが、急に巫女を増やすわけにもいかない。対応する地球側の人間も三人だしな。
となると、この地球側の人間を利用するしかない。つまり俺たちも魔物討伐に加わるということだ。
「要は、私たちが監視や攻撃に関与できればいいのよね?」
「そうだな」
「それなら、ジョイスティックを付けたらいいんじゃないか?」
乙羽はジョイスティックで何をするつもりなんだ?
「なんか、異世界ゲームしてるみたいだな」
乙羽はゲームオタクだからな!
「いや、遊ぶ気はないけどな!」
なんか、ちょっと目が泳いでるんだが?
「ジョイスティックで魔動機関砲を使うつもりなのか? モーターとか取り付けないと無理だろう?」
-それについては、問題ありません。ジョイスティックに合わせて魔動機関砲を操作すことは可能です。
まじか。これもエフェクトで可能なのか。
銃弾を発射する銃口は別だが、それ以外は次元フィールドで覆っているから操作可能ということらしい。
「いいんじゃない? 三鈴の機能もボタンで動かせるんでしょ?」
三鈴本来の武器を使う場合は魔動機関砲の弾丸は使用しない。このため弾数に制限がないのが最大の特長だ。この場合、魔動機関砲の照準器のみ使う。
「あ~、確かに詠唱の必要はないな」
「トリガーボタンは、ウォータージェット、ファイヤーアロー、次元カッターだな!」
「撃ちたいのか? でも、乙羽は朝霧が運転手の時だけな!」
「も、もちろんだよ!」
大丈夫かな? 無駄に遊びそう。
とりあえず、Web会議システムにジョイスティックを接続するプログラムを組む俺だった。
なんだこのWeb会議システム!
* * *
世界初のジョイスティック対応Web会議システムを作った俺だが、いよいよ魔物討伐に使ってみることになった。なんで、Web会議システムで魔物討伐してるのか謎だが、もう深く考えるのは止めて作ってしまった!
て、ことで試し打ちだ。
まずは三鈴ウォータージェット(機関砲バージョン)だ!
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒューーーーーッン
ジバッバッバッバッバッバッバッバッーーーーッ
グァグァグァグァグァグァグァグァーーーーーッ
「ふははははははっ。てめ~っ、このやろ~っ。どっからでもかかって来やがれ~っ!」
何と言っても凄いのが、詠唱がないことで連射性能が格段に向上しているということだ。思わずハイになってしまった。まるで巫女が10人いるようなものなのだ。
西門から森に入ってすぐにマッドボア10体に襲われたが、三鈴をセットした魔動機関砲の三鈴ウォータージェット(機関砲バージョン)であっさり駆逐しまった。
「やだ、龍一ってハンドル握ると性格変わる人?」
俺が握ってるのはジョイスティックだが。
「意外な一面を見てしまったのだ」
「お前らも撃てば分かる! この『三鈴ウォータージェット(機関砲バージョン)』はヤバい!」
「あんたの目つきがヤバいわよ」
「うん、これからの付き合いを再検討するレベル」
荻野も乙羽もかなり引いている。
「そうだ、ちょっと先に空き地があったよな? あそこ行ってみよう」
最初に線路修復をしたとき見つけた荒地だ。線路の脇にある。
「なにするの?」
「決まってるだろ、『三鈴ファイヤーアロー(機関砲バージョン)』のテストだ!」
小さいクレーターなので火災に発展する可能性は低い。
* * *
巫女隊にお願いして久しぶりに行ってみると、ちょっとした水たまりが出来ていた。おまけに、周りにはマッドボアやブラックベア、フォレストディアなどが集まって水を飲んでいる。
「よし、水飲み場の外周を時計回りで走れ、内側に向かって攻撃するぞ! ほかの二人は左右の警戒を頼む」
運転手はもちろん美琴だ。美琴の三鈴は魔動機関砲の照準器にセットしている。
『『『了解です』』』
「行くぞ~!」
ビュビュビュビュビュビュビュビューーーーーッ
ジュジュジュジュジュジュジュジュワーーーーーッ
ギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアーーーーーッ
「ふははははははっ、まずは小手調べだ~っ」
街道から外れてすぐのところにたむろしていた魔物だが、まとまってこちらに襲ってきたところを返り討ちにした。既に燃え上がっているので数は不明だが15以上はあるだろう。良く知らない小さな魔物もいるが数には入れていない。
「うぁぁぁ、ひくわ~っ。魔物が可哀そうなレベル」
「池の水が燃えなくて良かったな!」
ビュビュビュビュビュビュビュビューーーーーッ
ジュジュジュジュジュジュジュジュワーーーーーッ
ギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアーーーーーッ
「ほらほらほら~っ。ったく、俺の敵じゃないぜ~~~~。ふははははははっ」
* * *
「よし、大体わかった。じゃぁ、運転を変わってみるか?」
しばらく撃って納得した。ちょっと、これヤバい。早々に交代したほうがいい。
『えっ? あ、はい。では私が』
美琴に代わって紫雲がハンドルを握ることになった。順番に代わって池を一周すればいいだろう。
『では、荻野様お願いします』
「はい、まかせて! まずは『三鈴ウォータージェット(機関砲バージョン)』からね」
『はい。ではいきます』
紫雲は池に沿って魔動車を滑るように走らせた。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒューーーーーッン
ジバッバッバッバッバッバッバッバッーーーーッ
グァグァグァグァグァグァグァグァーーーーーッ
「きゃ~~~~っ、何これ面白~い! うそ~~~~~、きゃははははははははっ」
やっぱりか!
『次は、三鈴ファイヤーアローでお願いします』
「りょうか~いっ」
ビュビュビュビュビュビュビュビューーーーーッ
ジュジュジュジュジュジュジュジュワーーーーーッ
ギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアーーーーーッ
「うっそ~~~~~っ。すっご~い。きゃははははははははっ」
いつの間にか豹変してしまっている荻野だった。
「こいつもハンドル握ると性格変わるんだ」
「荻野の見たくない一面を見てしまったようだ」
* * *
ビュビュビュビュビュビュビュビューーーーーッ
ジュジュジュジュジュジュジュジュワーーーーーッ
ギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアギュアーーーーーッ
「がっはははははっ。おらおらおらおら~っ。がっはははははっ」
乙羽もか!
俺たちはちょっと反省した。舞い上がり過ぎ。新しい武器を手にすると人間はみんなこうなるのか? 気を付けよう。
ちなみに、街道脇に魔物の骨の山ができたのは言うまでもない。




