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34 人魚1

 魚の大量死の原因が人魚かどうかは定かではないが、まずは本当に人魚がいるのか確認する必要がある。

 そこで、荻野の提案で人魚が好きそうなものを置いて接触を試みることになった。


『光るものが好きらしいから、岩場に置けばいいのかな?』

『離れて見てたほうがいいわよね』

『でも、これに気づくかなぁ?』


 岩場の上を危なっかしい足取りで波打ち際まで歩いていった。次元フィールドに護られていても足元は覚束ない。

 美琴が袋からアクセサリーを出して岩場の目立つ場所へ置いた。

 

 一応、キラキラしてるので目立つと言えば目立つ。まぁ、地球の情報が異世界の人魚に当てはまるとは思えないのだが、ダメ元だしな。


 それから、昨日のうちに海水を取得して研究室に分析を依頼しておいた。何かわかれば連絡を貰えることになっている。


『じゃ、私たちは魔動車に戻って人魚が現れるのを待ちましょ~っ』

『アクティベーションしたままにする? 海に入っても大丈夫だから』

『潜っても平気かも?』


「ほんとに?」

「ああ、たぶんな」

「三鈴、とりあえず巫女が水に入ったら気圧をかけるようにしてくれ」


-了解。絶対窒息させません。


 うん。安心した。


「海に魔物はいないのかな?」

「あ、クラーケンとかいるんじゃない?」

「それ、ラノベの読みすぎ!」


 クラーケンはお約束の魔物だからな。でも、人魚はそうでもない。


  *  *  *


 ところで、ここは開発室。人魚の出現待ちで休憩中だ。


『人魚、出てこないね。ん~っ、いい香り』

『出てきませんね。これ私も好き!』

『この紅茶は、素晴らしい!』


 異世界のそんな呑気なコメントが聞こえた。

 もちろん、向こうは魔動車の中だ。暇なので、こっちで淹れた紅茶を異世界ゲート経由で振舞っている。

 もちろん荻野のお気に入りの紅茶だ。甘い柑橘系の香りが開発室に広がった。


 そんなとき研究室から連絡が来た。


『いやぁ、びっくりしたよ』


 受話器からいきなり教授の声がした。


『なんだい、あの海水は! 重金属ばっかりじゃないか!』


 語気荒くまくしたてた。


「重金属ですか?」

『魔石も異常に金属が多かったけどね。魚が死ぬのは当然だよ君!」


 なるほど。魚の大量死の原因は重金属か。それが人魚の涙なのか? 怖すぎるぞ。


「重金属の涙? ないない!」

「人魚の涙が水銀なわけないだろ!」


 荻野も乙羽も、信じられないようだ。

 まぁ、原因が人魚の涙だったとしても、これだけの濃度。何人の人魚が泣いたんだよって話だ!

 教授は他にも話したいことがあるようで、長くなるので遠征から帰ったら研究室に来てくれと言っていた。

 長くなる?


  *  *  *


 いつまで待っても異世界の海岸の岩場に人魚は現れそうもなかった。

 仕方なく魚が大量に浮いた辺りを先に調べることにした。

 港には川が流れ込んでいるが、その河口付近に大量に魚が浮いたらしい。


「この川の上流が怪しいわね!」

「ちょっと、川の色も普通じゃないな」


 乙羽の言う通り、川面が虹色の反射をしていた。

 地球の俺たちからしたら、すぐに公害を連想してしまうのだが、工業地帯のないこの世界ではピンと来ないのかも知れない。


 岩場の監視は戻ってきた討伐隊に頼んで、巫女隊は魔動車に乗って河の上流を調査することにした。

 

  *  *  *


 川は村を抜けると深い森に入っていった。

 村の北側は俺たちが通ってきた森だ。人が住んでいないことは分かっている。


 そして少し森に入ったところに池を見つけた。

 近づくと、そこには異様な臭気が漂っていた。

 あのクレーターに出来た池に似ているが、こっちのほうが大きい。そして池の水は川に流れ込んでいた。


『なに、この匂い』

『変なにおいね』

『なんか卵が腐ったような』


 巫女たちの話に、俺はちょっと嫌な予感がした。


「ちょっと、待って。もしかすると毒ガスかもしれない」


『えっ?』

『でも、毒は無効になるんじゃ?』

『そう聞きました』


「いや、あれは。ええと、とにかく無効にならない毒もあるんだ。ちょっと離れてくれ」

『分かりました』


「三鈴、空気を加圧!」


-了解!


「どういうこと?」

「亜硫酸ガスかも知れない!」

「そうか!」

「そうね!」


 成分は定かじゃないが、次元フィールドで防げないガスの可能性もある。用心に越したことはない。


-一定の圧力を持続しています。


「よし、この状態なら毒ガスの心配はないだろう」


『匂いがなくなった!』

『いいみたいだね』

『さすが三鈴だよ~っ』


 この状態で改めて池に近づいてみた。

 池からはガスも出ていたが水の色も毒々しい。


「とりあえず池の水を採取してくれ」

『了解です』


 美琴にサンプルを採取してもらった。


 その後、暫定措置として流れだしている池の水を魔動車で堰き止めることにした。

 三鈴AIは魔動車を包む次元フィールドを拡張してアームを作り、これで土砂を動かし始めた。変形も自在なので重機より器用に動く。何と言っても危険な泥などがアームに付着しないのがいい。


 そのまま、池も半分ほど土砂で埋めておいた。今日のところはこれでいいだろう。必要なら街で対応してもらおう。


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