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32 天海村へ2

 俺たちを待っていたのは大きくひしゃげたレールと水の溜まった池だった。

 なぜレールがぐにゃりと曲がっている? っていうか、なぜ線路に池?


『星降りの跡だろう』


 魔動車から降りてしばらく辺りを調べた西園寺が言った。

 星降りの跡とは隕石が落ちた跡の事だろう。直径が10mほどのクレーターができていた。


「マジかよ」

「驚いたわね」

「なんだか、気持ち悪い池だな」


 見ると、真っ黒い水が溜まっている。いくらか油も浮いているようだ。見た感じ生き物らしいものはいない。


『星降りの跡の池は大体こんな感じだ』


 西園寺が悲しい顔で言った。


「これ、サンプルを採っておいたほうがいいんじゃない?」

「サンプル?」

「そう、池の水」


 確かに、クレーターがそのまま池になったのだったら分析すれば何かわかるかもしれない。

 美琴にサンプル用カプセルを渡して池の水を採取してもらった。


『で、これはどうする?』


 西園寺が困り切った顔で俺たちに聞いてきた。確かに、曲がった太いレールとか池とか一般人にはどうしようもないよな。

 どうすると言われても困る。どうもできない。特に開発室の俺たちには。


-お任せください。


 三鈴AIが自信ありげに言った。


「どうするんだ?」


-まずは、池を埋めたいと思います。


 そういうと、三鈴AIは美琴と一緒に魔動車をレールから下ろして、周囲から土砂を運び始めた。

 だが、それがいきなりとんでもない量の土砂を一気に運び出したから驚く。


「これ、重機どころの話じゃないわわね」

「ほんとだな。とりあえず、何と表現したらいいのかわからない」

「そうだよな。俺も驚きだ」


 三鈴AIは次元フィールドをブルドーザーやショベルカーのような形に変形して土砂を動かしている。それがまた、変幻自在というか瞬時に変形可能なので、まるで見えない巨大な手を動かしているようだ。

 池はあっという間に埋まってしまった。おまけに整地までしてある。


 次に、三鈴AIは道中で拾ってきた倒木を長方形に切断した。どうも枕木を作るようだ。


-では、熱可塑性の樹脂をご用意ください。


 三鈴AIがこっちにリクエストしてきた。


「お、ホットメルトの出番だぞ!」


 俺は用意したポリアミドスティック入りの袋を乙羽に渡した。


「よし、突っ込んだぞ」


-はい。もっと入れてください。


「おお、分かった。ちょっと待て」


 乙羽が用意した樹脂スティックをWebカメラに次々と突っ込んでいった。

 もう、今更だけど何やってるんだろうな俺たち。


-はい。結構です。ではレールの修復に移ります。


 枯れていた倒木は真新しい枕木になって奇麗に並べられた。


 次はひしゃげたレールの補修だ。

 三鈴AIは水素バーナーに点火してレールを加熱していく。バーナーがゴウゴウと音をたてレールが赤熱すると次元フィールドで変形させていく。そして、あっという間に真っすぐなレールになってしまった。

 最後に、樹脂で固めた板で路面の蓋をした。これはさすがに暫定補修だが十分だろう。


-線路の補修、完了しました!


 三鈴AIは、高らかに宣言した。たぶん、一時間かかってない。


『あ、あっぱれだ!……よ、よし、出発するぞ!』

『『『『『『はい!』』』』』』


 西園寺は、もう何と言っていいのか分からないようだ。確かに、いちいち驚いてもいられないよな。


「やっぱ、凄いわね三鈴!」

「ほんとだな!」

「まったくだ」


-恐れ入ります。


  *  *  *


 線路の大修復が終わり出発しようとしたのだが、いつの間にか昼になっていることに気が付いた。ここは、まず腹ごしらえだろう。

 ということで、魔動車車内で食事をとることになった。食事のためにエフェクト機能をオフにするので次元フィールドが消えるからだ。もちろん、食事中は魔動車自体を次元フィールドで覆う。


-高性能マイクによる音響探査は継続します。


 さすがに討伐隊と巫女隊で交代で監視もするが、三鈴AIの高性能マイクで音響探査もしている。普通の魔物が近づけばすぐに分かるはずだ。


『こ、これは便利だな!』


 リクエストがあったので水を提供したら西園寺が感動していた。


『こんなに奇麗な水で手を洗っていいのか?』

「どうぞ、ご自由に」

『そうか、かたじけない。おお旨いな、これが異界の水か!』


 そういえば、異世界の水だよな。まぁ、東京の水道だし浄水器を通してるので全く問題ない。もちろん次元格子も通過してる。


『わ、わたしもいいでしょうか? あ~おいしい。水筒に汲んでもいいですか?』


 早野は自前の水筒に水を入れている。奥ゆかしい感じの人だよな。討伐隊とは思えない人が多い気がする。


『私も私も』

『もちろん、私も~っ』


 柚子と西島は同期らしく仲がいい。


  *  *  *


『前方から変な魔物!』


 昼食後、再び走り出して早々、運転席の美琴が気が付いた。


『変なとはなんだ! ちゃんと報告しろ!』


 派遣隊のリーダー西園寺の注意が飛ぶ。


『巨大なシカです。チタンの真っ白い角が二本、真っすぐ生えてます』


『それは、フォレストディアだ! 速いぞ!』


『あああああっ、飛び越えました~っ』


 先頭の魔動車に向かって真っすぐ線路を走ってきたかと思ったら、次元カッターの手前で大きく跳躍した。

 魔動車の速度は速くないがフォレストディアの跳躍力が凄い。討伐隊の魔動車をも一気に飛び越えていった。そして着地するなり方向転換をして魔動車を追い始めた。

 魔動車と同等の体躯から角を突きあげるように出してくる。


『いや~っ』

『来ないで~っ』

『お前ら伏せろ!』


 魔動機関砲に飛びついた西園寺は、邪魔な後部座席の二人を屈ませた。慌てて座席に隠れる柚子と西島。


 ガガガガガガシューン

 ババババババッーーン

 グゥアーーーーーーーッ

 ズザザザーーーーーーーッ

 

 魔動機関砲の弾丸をあびて巨体の魔物が線路上に倒れこんだ。


  *  *  *


 魔動車を止め少し様子を見ていた西園寺だが、平気な顔でフォレストディアに近寄っていった。問題ないらしく美琴たちも呼んだ。

 初めて見るマッドボアの2倍ほどはある大きな魔物だが見事な白いチタンの角が印象的だった。


『この角は、いいな!』


 魔動車から降りて角に直に触れた西園寺がほれぼれとした顔でいう。どうも、貴重品らしい。


 肉は焼き払い、太い角2本と魔石だけを拾い上げた。


「そういえば、魔物の肉って食えないの?」

『食いたいのか? 豪気だな。だが、止めておけ。普通の人間は死ぬ。重金属まみれだからな』


 長く真っ白な角を抱えて西園寺が言った。

 それは確かにヤバいだろう。


『そうだ、これ魔動車に付けないか?』


 西園寺が変なことを言い出した。

 昔から、フォレストディアの角は力の象徴であり珍重されるのだそうだ。


『いいですね!』

『さんせ~いっ』

『バンパーに付けましょう!』


 討伐したものの特権だろう。好きにすればいい。

 チタン骨は溶接ができないのでフレームにはめ込むことになった。どっちもチタン骨だから相性はいい。だが、魔動車のバンパーから突き出した角は牙にしか見えない。いいのかこれ?

 もちろん工作は三鈴AIの担当だ。


 そして、その後ももう一体のフォレストディアが登場し討伐された。これは巫女隊が討伐したので、巫女隊の魔動車にもフォレストディアの角が取り付けられた。

 そんなに、いいものなのか?


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