接待準備 2
「それじゃあ最初に聞くけど、商売やビジネスに必要な物はなんだと思う?」
玲奈が俺にそう聞いてくる。
俺は商売やビジネスについて詳しい知識がない。商業高校に行っていたわけでもなく、親がやっていたわけでもないので知らなくて当然なのだが。
それでも基本的なことなら、頭を捻れば俺にも分かるだろう。
俺は少し考え込みやがてこう言った。
「まず、お金や売り物だろ。そしてそれを売る人間。後はそれを買う客。……最悪この三つがあれば商売は出来るんじゃないか?」
「そうね、この三つがあればビジネスは成り立つわね。雷、今から言うビジネスのことを、このダンジョンに置き換えて考えてみて。このダンジョンでは『誰に』『何を』『どこで』売るか?」
これはもう決まっているのでそう考えなくても答えは出てきた。
「そりゃ『冒険者』に『ダンジョンの資源』を『ダンジョン』で売るんだろ?」
「そうね。それじゃそれをどうやって繁盛させるか?」
「そりゃ何か一目置くような商品があれば人は来るんじゃねぇの?でもそれをするのはDPが嵩むんだよなぁ。ていうかそのことをずっと考えてたんだろ?」
俺がそう言うと玲奈はこう言った。
「確かにビジネスで商品は大事よ。周りより安い物、良い物、付加価値がある物があれば人は来る。現代社会だとそれを周りに広めるのも大変なんだけど……まあこの世界では冒険者同士の口コミで解決出来ると思うからおいておくわ」
「それだとやっぱり何か高価な特産物や強味のようなものがないと駄目なんじゃないか?」
俺が思ったことを言うと、玲奈は「まだ話の途中よ」と言った後こう続けた。
「でもね、商売の繁盛は商品の質だけで決まるわけじゃないのよ。ちょっと視点を変えて考えてみましょう。この世界で一番繁盛しているダンジョンは、迷宮国バルバの首都にある始まりのダンジョンだけど、何でそこは繁盛していると思う?」
「うーん、やっぱり冒険者ギルドの本部があるだけあって人が多くて施設が充実してるからじゃないか?それにダンジョン自体も最古なだけあって色んな物取れるし、最も攻略難度が高くて腕がある冒険者が集まるからとか?」
「たぶんそれであっているわ。あのダンジョン、そしてその周りの施設には冒険者が欲しい物の全てが揃っていっているといってもいいわ。ということは、そのダンジョンのように施設を充実させれば、人も集まるということよ」
確かにそれが出来れば冒険者はたくさん来そうだ。
だが、それにはいくつかの問題点がある。
「なるほどな。でもそう簡単にはいかないだろ。まずあの規模にまで成長するのにどれだけかかるんだ?それに施設が完成したとして、たくさんの冒険者を呼び込むのは難しいだろ」
確かに施設が充実すれば、冒険者は来るだろう。
だがそれだけでは、たくさんの冒険者を呼び込むことは出来ない。ただ施設が充実しているだけなら、始まりのダンジョンといった古参の有名ダンジョンも同じだ。到底たくさんの冒険者を呼び込めるとは思えない。
俺がそう言うと、それでも玲奈は顔色一つ変えずに話し始めた。
「そんなの雷に言われるまでもなく分かってるわよ。でもその問題ならたぶん大丈夫よ」
「ん?何かいい物が見つかったのか?」
「ええ、それ単独で冒険者をたくさん呼ぶには力不足だけれど、そこそこの力があるものよ。それにサービスが加われば、たくさんの冒険者を呼び込むことが出来ると思うわ」
「それは一体何なんだ?」
俺がそう聞くと、玲奈は「DPカタログ開いて」と言った。
「《迷宮魔力商品目録》」
俺はそう言ってスキルを発動させるとボードが目の前に出現する。
そのボードには呼び出したい物とそれを手に入れるためのポイントが記されている。
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魔物
ゴブリン・ノーマル Lv:1 1P
ゴブリン・ノーマル Lv:10 5P
ゴブリン・ノーマル Lv:20 30P
ゴブリン・ノーマル Lv:30 60P
ゴブリン・ノーマル Lv:40 120P
ゴブリン・ノーマル Lv:50 300P
ゴブリン・ノーブル Lv:51 1000P
ゴブリン・ソルジャー Lv:1 1P
ゴブリン・ソルジャー Lv:10 5P
ゴブリン・ソルジャー Lv:20 10P
ゴブリン・ソルジャー Lv:30 30P
ゴブリン・ソルジャー Lv:40 120P
ゴブリン・ソルジャー Lv:50 300P
ゴブリン・コマンダー Lv:51 1000P
ノーマル・スライム Lv:1 1P
ノーマル・スライム Lv:10 5P
ノーマル・スライム Lv:20 10P
ノーマル・スライム Lv:30 30P
ノーマル・スライム Lv:40 120P
ノーマル・スライム Lv:50 300P
コマンダー・スライム Lv:51 1000P
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これは魔物をDPで作り出した時の経費だ。
俺達は魔物の渦で魔物を創っているので、これで魔物を創ったのはゴブリン・コマンダーとコマンダー・スライムの時だけだ。
「魔物のページを変えて、食品のページを開いて」
玲奈がそう言うので、「食品?」と思いつつもカテゴリーを食品のページにする。
食品のページは主に、食に関するものだ。
普通の肉、魚、麦、水、などもあれば、エフィドスの計らいで用意された、オレンジジュースや焼き鳥やカレーといった地球の食事もある。
玲奈はそこから調味料の方へページを移動させ、ボードを目で見ているとやがて「これよ」と言ってそれを指した。それは……
「香辛料と、砂糖?」
「ええ、どうやらこのDPカタログのポイント査定は地球での価値基準みたいで、この世界では価値のあるものも、DPカタログでは大したことのない物もあるのよ。そしてこの世界ではまだ香辛料や砂糖はとても貴重な物みたい。それを適度に冒険者達に渡せばそこそこの人数を呼び込むことなら出来るんじゃないかしら」
「なるほどな。でもこれ単体でも冒険者をたくさん呼べそうなのに、どこが駄目なんだ?」
「そりゃ最初の方はかなり呼び込めるだろうけど、あまり出しすぎると価値が暴落する恐れがあるのよ。だからこれの価値が下がらない程度の量しかダンジョンには出せないわけ」
「そっか、レアな物が取れるダンジョンということで売り出して、それで来た奴らをリピーターにしていくのか」
確かに、この世界では高価な砂糖や香辛料が取れるダンジョンというだけでは、人は来ないだろう。
だが、そのダンジョンにきちんとした施設があればどうだろうか。古参の有名ダンジョンは、有名であるが故に、冒険者の数は飽和しているはずだ。
そこに高価な物が取れ、そこそこの施設がある新しいダンジョンが現れればとうなるか。
例えをあげると、その場所で燻っていた冒険者や、一攫千金を狙うような冒険者、他にも新たな場所で一旗上げようとしている冒険者などを呼び込むことが出来る。
「確かに、これならたくさんの冒険者を呼びこむことが出来そうだな。流石資産家のお嬢様」
「これくらい大したことないわよ。……でも、大変なのはこれからね」
「ああ、これらのことをDPで全部出来ればいいんだが、そうもいかないんだよなぁ」
この作戦を行うには一つ面倒くさいことをやらなければならない。
まさかこんなに早くこの時が来るとはな。
「ええ、一度行かなければならないわね。……冒険者ギルドに」




