表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/40

閑話 騎士団長の強さ


「ようこそ勇者たち、私はケイネス・K・ロービンだ」


 僕、小野寺信二を含めるクラスメイトは、召喚された翌日の昼に玉座の間に呼び出されていた。

 そこで僕達を出迎えたのは、今名乗ったこの国の王や宰相、他にも騎士団長を始めとした偉そうな人達だった。


「初めまして国王陛下、僕は工藤幸田です」


「そうか、礼儀正しい良い少年だな。そなたのような勇者が来てくれて嬉しく思うぞ」


「ありがとうございます。ところで僕達を呼び出したのはどんな用件があるからでしょうか?」


 工藤がそう言うと、国王は咳払いを一回して言いづらそうにこう言った。


「実はそのことの前に一つ伝えておかなければならないことがあってな。……実は勇者ライと勇者レイナに続いて勇者シゲノブまで行方不明になったのだ」


「な、風間君と片桐さんに続いて斉藤君まで……」


 王は風間や片桐さんだけでなく、斉藤までいなくなったことを発表した。

 工藤はそのことに驚きを隠せない様子だ。


「いなくなったのはいつ頃なんですか?」


「恐らく、昨日の夜の間に失踪したのだろう。我々も今日の朝突然知らされたことなのだ。だが、この時点で勇者シゲノブとそのメイドが冒険者登録をしたことは掴んでいる。最ももうこの王都にはいないようだがな」


 正直、僕にとって斉藤がいなくなったことなどどうでもいい。

 だが、片桐さんの動向だけはきっちり掴んでほしい。彼女は僕のハーレムメンバーに入れたいからな。


「風間達の居場所は分かりましたか?」


「いや、何故か勇者ライと勇者レイナは騎士達がどれだけ捜し、探索魔術を使っても居場所が分からない。これからも捜索は続けるが、期待はしないでほしいな」


「そうですか……」


 工藤は落ち込んだような声音でそう呟く。

 そして暫くの間沈黙が続いたが、やがて王様はこう言った。


「それでは本題に入らせてもらう。ここに勇者様方を呼んだのは、昨日の騒動で聞き逃していたことの答えを伺うためだ。改めて聞かせてもらう。魔の討伐、引き受けてくれるか?」


 王にそう問われた工藤は、昨日と違って顔を少し強張らせ、口を閉ざした。

 昨日、あれだけやる気があったのに、今日こんな顔をする理由は流石の僕には想像がつく。おおよそ昨日風間に言われたことがひっかかっているのだろう。


 風間が置き土産のように残していった言葉は、浮かれていたクラスメイトを現実に戻すには充分すぎる重みを持っていた。


 だが、それでも僕がやることには変わりはない。

 僕はこの異世界で、チーレム無双をして英雄になるんだ。そんなことを考えると思わず口元が緩む。


 僕が物思いにふけっていると、工藤は口を開いてこう言った。


「国王陛下、僕はその依頼を受けます。……ですが、きっと戦いたくない人も出てくるはずです。なので戦いに参加するかしないかは個人の自由とさせてくれませんか?」


 やはり工藤は殺し合いに参加させられるとしても、目の前のこの人達を助けることを選んだようだ。


「了承した。参加するかしないかは、勇者様方の判断に委ねよう。例え戦いに参加せずとも、衣食住は保証する。だが王城には居てもらうがな」


「ありがとうございます」


 確かにこの位の方がいいだろう。

 これでこの話は終わるかと思ったが、思わぬところから横槍が入った。


「おいおい、ちょっと待ってくれよ」


 そう言いながら、クラスの不良の後藤郷司は立ち上がった。


「勇者ゴウジ殿、何か言いたいことがあるのか?」


「正直に言って俺は、この国の騎士の実力に疑問を持ってる。簡単に俺達高校生を三人も逃がしてしまうことからな。そんな奴らと一緒に居るなら単独で動いた方がいいんじゃねぇかと思ってる」


 後藤がこう言うと、玉座の間にいる騎士達がざわめく。

 だが、王様が「静まれ!」と一喝すると静かになり、やがて王様は口を開いた。


「ゴウジ殿は騎士達よりも自分の判断で動いた方がいいと考えているのか」


「ああ」


「そうだな……」


 王様は少し考え込むとやがてこう口にする。


「ならばこうしようゴウジ殿。ゴウジ殿がデフリーと戦い、もしデフリーのHPを200減らすことが出来たならば、ゴウジ殿の判断で自由に動くことを認めよう。だがもしも出来なかったならば、我々の判断に従ってくれないか?」


 デフリー、とはこの国の騎士団長のことだろう。

 正直に言って、普通に戦えば勝てる相手ではない。ステータスの差は歴然だからだ。


 だが、200というのはあの騎士団長のHPからしたら微々たるものだ。そして、後藤を始めとする僕達勇者には、特別なスキルがある。


 あの騎士団長にだって、風間のスキルは効いていたんだ。

 もしかしたら、ワンチャンあるかもしれない。


「俺の敗北条件は?」


「そうだな、意識不明になるか、身動きが取れなくなるか、降参するか、HPが100を切るか、その四つでどうだ?」


 王様がそう言うと、後藤は獰猛な笑みを浮かべてこう言った。


「いいぜ。それじゃあ場所を変えようか。ここでやるわけにはいかないだろ」


 後藤がこう言うと、王様は僕達に向かってこう言った。


「勇者様方、デフリーとゴウジ殿の戦いが見たい人は修練場へ、休みたい人は個室へ戻ってくれ」


 =========


「なめられているな。やはり勇者を三人も逃がしてしまったのは大きい」


「そうですね」


「デフリー、遠慮はいらん。あの思いあがった若造達に現実を見せてやれ」


「御意」


 =========


 急遽決まった、後藤と騎士団長の決闘は、騎士の修練場で行われた。


 クラスメイトも、ほとんどの奴が見に来ていた。

 やはり気になるのだろう。


 僕は戦いが始まる前に、後藤のステータスを見た。


 =========


 種族:人間

 名前:ゴウジ・ゴトウ

 性別:男性

 Lv:1

 HP:1100

 MP:110

 STR:160

 GRD:120

 AGI:100

 DEX:60

 INT:60

 MPR:100


 スキル


 戦闘術

 硬化

 鑑定

 言語理解


 称号


 異界より召喚されし者


 =========


 硬化


 魔力を込めた部分を硬くすることが出来る。


 =========


 この硬化があの騎士団長にどこまで通用するのか。

 僕はこの戦いはどちらが勝つのか、などと考えていたが、戦いが始まってすぐにそんな考えは消えることとなった。


「準備はいいか、騎士団長」


「ああ、いつでもいいぞ」


「けっ、吠え面かかせてやらぁ!」


 後藤はそう言って地を蹴った。

 騎士団長と後藤の距離が一気に詰まる。だが、騎士団長は動かない。


「なめてんのかぁ!」


 後藤は硬化のスキルで硬くなった拳を騎士団長に振るった。

 だが、その拳が当たることはなかった。


 なぜなら、騎士団長の姿がぶれたかと思ったら、その場には残像しか残らなかったからだ。

 目の前にいた後藤も、目を丸くして驚いている。


「どこを見ている」


「なっ!」


 後藤が驚愕の声をあげると同時に、後藤が騎士団長に頬を殴られ吹き飛ばされる。

 だが、後藤はとっさにスキルの硬化を発動させたのか、顔は無傷だ。


「ふむ、硬いな。流石勇者のスキルといったところか」


「てめぇ!」


 後藤は再び殴りかかるが、騎士団長はそれを躱し、横っ腹を蹴られ吹き飛ばされる。

 今度は硬化が間に合わなかったのか、後藤は口から血を吐く。


「かはっ……て、てめぇ」


 後藤は血を手で拭い、騎士団長をにらみつける。

 だが騎士団長は、その後藤に対して剣先を向ける。するとその真っ先に眩いほどの光が集まる。


「《シャインⅣ》」


 騎士団長の剣の真っ先から、極太のレーザービームが後藤に放たれる。

 後藤も硬化を使うが、苦悶の声をあげている。


 その光は五秒ほどで収まったが、後藤は地面に膝をつき、既にボロボロの状態だ。

 そんな後藤に騎士団長はこう言った。


「力の差は明白だ。降参するか?」


「けっ、まだまだだ。こんなんで負けを認めるかよ」


「その心意気はいいがこの状況では0点だな。勝てない相手と戦うほど、無意味なことはない」


「まだ、勝負は決まってねぇだろ」


「……そうか。認めないというならしょうがない。終わらせてやろう」


 そう言うと、騎士団長が生み出したと思われる光が剣に纏われる。


「く、くそが!」


 後藤は、それを見て思い切り地を蹴り、騎士団長に肉薄する。

 それに対し騎士団長は、それを見て「ふっ」と笑みをこぼし、踏み込んだ。


 その瞬間、騎士団長が弾丸の様な速度で後藤に近づく。

 そして光を纏った剣で、突きを放った。


 その速度に後藤はほとんど反応出来なかったが、体全体に硬化を発動させるのが見えた。


 だが騎士団長が放った突きは、硬化で硬くなっているはずの後藤の体を貫通した。

 剣で体を貫かれた後藤は「がはっ」という言葉と共に血を吐き出し、その場でぶっ倒れた。


「勝負あったな、誰か医務室へ運んでくれ」


 騎士団長がそう言うと、騎士が二人来て後藤を運んで行った。

 騎士団長はそれを見届けると、僕達の方を向きやがてこういった。


「勇者様方は確かに強い。ですが、所詮壁を越えた実力程度。私にかかればたった一人でも、今のあなた方を全員殺すことは可能です。そして、この世界にはその私よりも強い存在は遥かにいる。確かに、戦いに参加しないというのも選択の一つでしょう。ですが、忘れないでいただきたい。この国の王城にいるからといって、絶対に安全ではないということを」


 僕はこの戦いを見て思い知らされてしまった。


 ここで最も強い者は誰なのか。

 勇者勇者と持て囃された僕達の実力。

 そして、この世界ではこんな化け物がまだたくさんいるということを。


 僕は恐怖と共に、騎士団長が今言ったことを頭で反芻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ