表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/40

閑話 この世界の冒険者とレベルの壁


 雷がいなくなった翌日の朝。

 玉座の間には数十名の騎士達が集合し、叱責の言葉を浴びさせられていた。


「まだ消えた勇者は見つからぬのか!」


 男は怒り狂った声で、目の前の騎士達に怒鳴りつける。


 騎士達を怒鳴りつけたのは、短い金髪碧眼のガッシリとした逞しい男性だ。その容姿から歳は40代前半だと思われる。


「申し訳ありません!捜してはいるのですが……」


「なぜそれだけの騎士がいて、目の前で勇者を二人も逃がしたのだ!それに未だに見つけることが出来ないだと。冗談も大概にしろ!」


 その男、ロービン王国の国王、ケイネス・K・ロービン、の怒りは収まるところを知らない。

 だが、それを言われる騎士達は反論することも、言い返すことも出来ない。


 なぜならばこうなる事態を招いたのは、ここにいる騎士達の責任といっても過言ではないからだ。


 いくらその勇者が幻惑という、スペシャルスキルを使ったとしても、自分たちの目の前からみすみす取り逃したことに変わりはない。

 それに現在進行形で、数十人の騎士を向かわせても、情報一つ掴めていない。


 騎士達は、未だ続く叱責の言葉を甘んじて受けていると、突然玉座の間の扉が開け放たれる。


「王よ!失礼いたします!」


「何事だ!ここをどこだと心得ておる!」


「申し訳ありません!至急、お耳に入れてもらいたいことが」


「ふむ、申してみよ」


 王が許可を出すと、玉座の間に入ってきた人物は語りだした。


「それが、勇者シゲノブ様とそのメイドの姿が見えなくなったとの報告が」


 その人物がこう言うと、王は玉座の肘掛けに拳を打ち下ろした。


「何だと!一体どうなっているのだ!」


 =========


 勇者が召喚された夜。

 王城を出た茂信とレーランは、ロービン王国王都の冒険者ギルドを目指し、王都を歩いていた。


 その目的は当然、冒険者として冒険者ギルド登録することだ。


 レーランから聞いた話では、冒険者とは依頼を受け、それを行う人達のことらしい。

 そして冒険者ギルドは、依頼人と冒険者の仲介を受け持つ組織らしい。


 冒険者ギルドは、この世界の様々な国に存在し、冒険者の最低限の身分を保証し、依頼者と冒険者の間にトラブルが起きないように管理する、自由と力と冒険を象徴とする組織。


 簡単にまとめると、冒険者は現場で働く人達。そしてギルドは、その冒険者に仕事を渡す管理組織、と思ってくれればいいそうだ。


 冒険者の依頼は、大きく分けると二つだそうだ。


 一つは、生活クエストといわれるもの。


 生活クエストとは、簡単にいえば雑用のような依頼が多い。

 薬草採取から街の清掃、家賃の回収に浮気調査、工事現場の土木工事などの仕事。


 稀に、とてつもなく難しい依頼が来ることもあるそうだが。


 まあ、生活クエストを日本でいえば、日雇いのアルバイトなどの内容が一番近いだろうか。


 もう一つが、討伐クエストといわれるものだ。


 このクエストは、文字通り魔物の討伐などが主流だ。

 指定された魔物を倒し、その素材を手に入れること。他にも、犯罪者や山賊などの討伐もある。


 勿論のことだが、生活にしろ、討伐にしろ、最初から難易度の高いクエストを受けることはできない。冒険者はその実績ごとにランク分けされ、冒険者の力量に見合った仕事しか受注できないようになっているからだそうだ。


 ランクは、G、F、E、D、C、B、A、S、の八つに分かれている。


 基本的に、日雇いバイトのような生活クエストをすることになるのは見習いのG、Fランクのうちだけだ。冒険者の主な仕事は、やはり討伐クエストだろう。


 弱い魔物で戦闘の経験を積んで行き、実力をつけ、色んなクエストを行いランクを上げれば、稼げる仕事である難易度の高いクエストを請け負うようになってくる。


 ちなみに、確認されている魔物には同じように、GランクからSランク、と討伐難易度が設定されており、討伐クエストはそのランクに応じたものとなっている。


 つまり、ランクが低いうちは危険度が高く、割のいい仕事は受けられないことになっている。


 俺はそれらを聞いて、良くできたシステムだと感心した。


 後、Sランクの冒険者ともなると完全に伝説の人物扱いを受けるそうだ。

 だが、そういった人物のように、強力なドラゴンなどの討伐や高難易度のダンジョンの攻略を成功させるなどして、有名となれるのはほんの一人握りにも満たないらしい。


 その理由は、大抵がそこにたどり着くまでに命を失うか、あるいは自分の限界を見定めて無理が出ない範囲でとどまる事を選ぶからだそうだ。

 それでも、冒険者となるものが絶えないのは偏にそういった英雄たちに憧れるものが絶えないのと、その職に就くしかない状況まで追い込まれている人間が多いというところにある。


 冒険者には、コネも大金も生まれも経歴も関係ない。

 冒険者になるのに必要なのは、1000リエルという、ほんの少しの最初の登録料だけだ。


 ちなみにリエルとはこの世界の通貨の名前で、1000リエルは千円とほぼ同価値と思ってくれればいい。


 そして、その登録料さえ無くても、最初はツケにすることができる。

 つまり、本当に食い詰めてなにひとつ持たない孤児ですら、冒険者になることはできる。


 そういった、孤児や家を追い出された者などが、最終的に行きつくのが冒険者という職業なのだ。


 そして、なぜ俺達がその冒険者になりたいかというと、冒険者になることは俺たちにとって多くの面でメリットがあるからだ。


 まず一つは、身分の保証だ。


 この大陸には、多種多様な様々な国々が存在する。

 だが冒険者として、そこそこのランクがあれば、冒険者ギルドがその身分を保証してくれるので国境を越えるのが楽になる。


 二つ目は、街に入るたびにかかる入街税の免除だ。

 これはある意味当然だった。依頼のために街を出たり入ったりすることが多い冒険者が、そのたびに金が取られてしまっては金がかかりすぎるからだ。


 そして最後に、冒険者は素性を問われないのだ。


 冒険者をやっている人間は様々だ。


 先ほど言ったとおり、孤児や、家を勘当されたものに加え、住んでいた街を追われた没落した貴族、裏の世界から足を洗ってきた人物、果ては身分を隠したい王族などの立場のある人間など。


 そういった素性を隠したい人間が名前を変えて登録していたりする。そのために冒険者はその素性を問わないのが暗黙のルールとなっているらしい。つまり、素性を明かさない人間が多くいる職業でもある。


 なので、恐らく王国に追われるはずの俺達、と言うか俺にとっては容易く紛れ込むことのできる職種なのだ。


 以上のことから、俺達は冒険者になることにしたのだ。


「シゲノブ、国外に出ると言ったけれど、一体どこに行くつもりなの?」


 冒険者ギルドに向かう途中、レーランが問いかけてくる。

 俺は、中世ヨーロッパのような異世界の街並みを見ながら、こう返した。


「んー、やっぱ迷宮国バルバかな。冒険者の国と呼ばれているくらいだし、実力をつけるにはもってこいだろ。それに実力主義の冒険者の国だけあって、種族差別とか存在しないし」


 迷宮国バルバとは、この世界にある国の中の一つだが、他の国と大きく違うところが多々存在する。


 まず、その国は唯一、あの冒険者ギルドが支配している国だということだ。

 ここで少し、冒険者と迷宮国バルバの関係について語ろう。


 元々、迷宮国バルバの原型は、ダンジョンのすぐ側に魔物の対策として造られた村らしい。


 当時、ダンジョンはただの魔物が発生する洞窟として処理されていたそうだ。ダンジョンという概念も、冒険者という概念も無かったらしい。

 なので、その村はダンジョンから出てくる魔物を討伐するために造られたそうだ。

 だが、ある時代にその村の長となった人物がかなりの資産家で、その当時は正体不明だったダンジョンに産業としての可能性を感じ、人をたくさん雇い、村を発展させ、ダンジョンに人を送り、ダンジョンを中心にやがてその村はどんどん発展していったそうだ。


 そして最終的には、その長に雇われた人物たちが冒険者と呼ばれるようになり、村の執政部のことを冒険者ギルドと呼ぶようになったそうだ。


 それがレーランが語った冒険者と冒険者ギルド、そして迷宮国バルバの成り立ちだ。


 そのことに関係しているのか、迷宮国バルバには冒険者ギルドの本部が置かれている。

 ちなみに、迷宮国バルバにある『始まりのダンジョン』と呼ばれている、第一号のダンジョンは、未だに攻略されていないそうだ。


 まあそのこともあってか、迷宮国バルバは『冒険者の国』『迷宮の国』として世界中に知られ、腕自慢の強者や、英雄願望を持った人物など、様々な人物が訪れている。


 勿論、出自は様々だし、ダンジョンで力をつけるという目的もあり、尚且つ種族差別などない完全な実力主義。


 正に、俺達にもってこいの国だ。


「そうね、私もそこでいいと思うわ。私はともかくシゲノブは今の実力では不安が伴うし」


「う……そんなに弱いか、俺?」


 確かにレーランよりは遥かに弱いけど、一応チートスキル持った勇者だしなぁ。


「冒険者のランクで言うとシゲノブはBランク下位くらいかしらね。勇者様たちは、初期ステータスが50の壁を超える直前くらいの能力値だけど、シゲノブたちにはスペシャルスキルがあるから」


「50の壁?」


 なんだそりゃ。

 聞いたことないな、と俺が思うとレーランが説明を入れる。


「この世界にはレベルがある、それは分かったでしょ。それでそのレベルを上げるには経験値が必要なのよ。……ここまでは大丈夫?」


「大丈夫だ」


「それでレベルを上げていると、あるレベルの時に必要な経験値がぐっと高くなるのよ。それが壁」


「……てことは、レベル50になると必要な経験値が高くなるってことか?」


「その通りよ。レベル50から51になるには必要な経験値が極めて高く要求されるわ。ただ壁を超えると、超える前とは比べ物にならないほどのステータスが飛躍的に上昇する。この世界では壁を越えているかいないかで、埋められない差が開くのよ」


 なるほどな。

 何でレベル50の騎士とレベル60の騎士にあそこまでステータスの差がついていたのかが分かった。


「ちなみに壁はレベル50とレベル100の時に訪れるそうよ。そう考えるとつくづくローレンスは化け物よね」


「そういえばあの騎士団長のレベルは106だったな。ってことはあの人は100の壁を越えたってのか。この世界ではあの騎士団長はどの位に位置するんだ?」


 俺がそう言うと、レーランはそうね、と言って俺にこう言った。


「冒険者のランクでいえば、伝説級と言われるSランクじゃないかしら。あの人単独で龍を殺したこともあるし」


「まじっすか……」


 龍って、あの龍だよね。

 あの翼があって、ドラゴンって呼ばれている最強クラスの生物だよね。


 それを単独っすか。

 やばいな、あの人。


「後々説明するのも面倒だから、大体のランク別のレベル分布を教えてあげるわね」


 それを聞くと、レーラン曰く。


 G=1~10程度、F=11~20程度、E=21~30程度、D=31~40程度、C=41~50程度、B=51~75程度、A=76~100程度、S=101以上、だそうだ。


「まあかなり大まかだけど、その位と思ってくれて構わないわよ。ちなみに私はAランク位かしらね」


「何でだ?レベル71だろ?」


「エルフは人間よりも同レベルでのステータスが基本的に高いのよ。……まあ、レベルが少し上がりづらいっていう欠点はあるけれど」


「なるほどなぁ」


 まぁ、種族によっても色々変わってくるし、レベルだけじゃないってことか。


「ちなみに、レベル100を超えた人物はどの位いるんだ?」


「そうね……世界全体のことなんて分からないけれど、人間だけなら十もいないんじゃないかしら」


 人間だけ、ということは魔の者とか、獣人とかエルフとか入れるともっといそうだな。

 一体、この世界にはどれだけ化け物がいるんだよ。


「ちなみに、最も強い奴ってどの位強いんだ?」


 俺がそう聞くと、レーランは大きくため息をついて、こう言った。


「あのねぇ、私は何でも知っているわけじゃないのよ」


「あ、悪い」


「別に謝らなくてもいいけど……最も強いのは竜王じゃないかしら。最強と呼ばれた魔王も全てのステータスが2000を超えるとかいう化け物だったけれど、竜王は3000をも超えると言われているわ。それが本当かは分からないけれど、とんでもない強さを持っていることはその逸話が証明しているわ」


「へぇ……、そりゃ絶対戦いたくない奴だな」


 ステータスが全部3000超えてるとか、チートだろ。

 俺が竜王の強さに驚いていると、冒険者ギルドが目の前に見えた。


「色々話してたらあっという間だったわね。それじゃあ入るわよ」


「ああ」


 俺は頷き、ギルドへ入っていくレーランの後を追い、冒険者ギルドに入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ