そこそこの侵入者 3
俺、メフォールは未発見のダンジョンにギルドの依頼で来ていた。
依頼の内容は行方不明になった冒険者達の捜索だ。
その冒険者とは、アコアン、ファリナ、カーラ、のことだ。
アコアン達は、荒れ果てた洞窟の調査に向かい、そこで行方不明になったのだ。
本来、荒れ果てた洞窟はレベル1~5のスライムやゴブリンが湧く洞窟だ。
アコアン達のランクはFだが、流石に荒れ果てた洞窟の魔物に全滅するほど弱くない。
調査依頼の理由が洞窟の魔力の変化だったので、アコアン達はその異変でいなくなったと考えるのが妥当だ。
そこでギルドはDランクの俺達二人に、親交のあったアコアン達の捜索と原因の究明を依頼に出してきたのだ。
そして実際に向かってみれば、荒れ果てた洞窟がダンジョン化していた。
その時点でアコアン達の生存の可能性はかなり薄いと考え、実際にダンジョンに潜って二十分ほど経つと、アコアン達の生存の可能性はゼロだと判断した。
その理由は魔物のレベルとステータスにある。
全員がレベル10で、なおかつ集団で襲ってくるのだ。
他にも罠などのレベルを見れば、とてもFランクが生き残れるダンジョンではない。
そして現在、三階層まで潜ったところで凄い物を発見した。
それはダンジョン三階層の中にある、正方形の広場のど真ん中の台座の上にあった。
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種類:魔剣
名前:ディザイア
等級:A
スキル
自動再生
生命吸収
魔力吸収
称号
血塗られた魔剣
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俺はこれを見た時、驚愕のあまり声を出してしまった。
その理由は等級の高さにある。
等級Aの武器は国宝級の武器であり、レベル100に近い、最強クラスの人物が使うほどの武器なのだ。
俺が見たことある中で一番強かった人間は、ロービン王国の騎士団長、デフリー・ローレンスだが、そいつの剣も等級がAだった。
もしこの剣を売れば30億リエルほどするはずだ。ぺルペラと二人で割っても15億リエル。人生遊んで暮らせるだろう。
確かにどんな試練が待っているかは分からない。
だがハイリスクを冒してでも、この試練には挑む価値があるのだ。
ぺルペラともよく相談し、この試練に挑むことにした。
恐らく俺達にはこれを逃せばこんなチャンス、二度とこないだろう。
俺が剣に触れると、正方形の広場の入り口と出口が瞬間的に閉ざされ、俺の五メートルほど前に一人の人物が突然登場した。
それを見た俺は、即座に剣を台座から抜き、後ろに下がる。
現れた人物は、黒の服を着た男で、顔も黒目黒髪と変わった感じだった。
その人物はにやりと笑い、俺達にこう言った。
「初めまして。俺がこのダンジョンのダンジョンマスターだ。よろしくな」
いきなり、黒髪黒目の男はそんなことを言ってきた。俺達は更に警戒を強めるが、男は気にせず続ける。
「信じる信じないはそっちの自由だ。勝手にしてくれ。ちなみに試練の内容を俺を殺すこと。俺が死ねばその剣を手に入れてダンジョンも攻略となる。まあ頑張ってな。……後、その魔剣は使っても構わないよ。使いこなせるならね」
男は煽るようにそう言うと、懐からナイフを取り出し構えた。
俺はこの謎の男を鑑定した。
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種族:??
名前:??
性別:??
Lv:??
HP:??
MP:??
STR:??
GRD:??
AGI:??
DEX:??
INT:??
MPR:??
スキル
ダンジョンマスター
称号
ダンジョンマスター
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俺はこの結果を見て舌打ちする。
恐らくこいつは、俺の鑑定を無効化するほどの偽装スキルを持っているのだろう。
俺は、台座から抜いた魔剣を構え、ぺルペラも杖を構える。
「ぺルペラ、行くぞ」
「はい」
俺達は作戦を確認しあい、まずは俺が突っ込む。
後ろではぺルペラが魔法を組み立て始める。
だが目の前の男は笑みを浮かべて突っ立っているだけ。正直、気味が悪い。
「はぁ!」
俺は男に剣を振るうが、男もナイフを巧みに扱いそれを捌く。
俺が見た感じ、男の技術と俺の剣術、そしてステータスはほぼ互角なのだろう。確かに今までのゴブリンとは違う。
だが俺と男には二つ違いがある。
一つ目は単純に人数の違いだ。
「《サンダーⅡ》!」
ぺルペラの魔法が男に襲い掛かる。
男はそれを体に魔力を纏わせ威力を減殺するが、全ては防げなかったようで一瞬硬直する。
その隙に俺は全力の袈裟斬りを叩き込もうとするが、男はそれをなんとかナイフで受け、後ろに跳び下がる。
だが男のナイフは俺の剣が当たる度にどんどん刃こぼれしている。
もう一つは武器の差だ。
男のナイフも中々の業物だが魔剣ほどではない。このまま打ち合えば俺が勝つだろう。
だが勝負は何が起こるか分からない。
最後まで気を抜かずにいこう。
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俺、風間雷は、現在防戦一方な戦いをしている。
俺の服は魔法で痛み、持っているナイフもボロボロだ。
正直、本気でやればステータスの差もあり、簡単に勝てることが出来るが、俺はとある実験をこの戦いでしている。
「はぁ……はぁ……」
おっと、そろそろこの実験も終わりそうだ。
なぜか攻め続けているメフォールの方が、どんどん苦しんでいく様子を見て、ぺルペラも困惑しているようだ。
メフォールが俺に問いかけてくる。
「お前、何をした?」
「ん?」
「とぼけるな!俺はまだ一度も攻撃を受けてない!それなのになぜ、俺のHPがどんどん減っているんだ!」
メフォールのHPは今、残り50まで減っている。
その理由を教えてやる義理はないのだが、まあいいだろう。
「お前、その魔剣のスキルをよく見ろ」
「なんだと……」
メフォールはそう言いながらも魔剣を鑑定する。
するとメフォールは「まさか……」と呟いた。どうやら気づいたようだ。
「そうさ。その魔剣、ディザイアは生命吸収と魔力吸収を持っている。ほとんどの人間はそれが斬りつけた人間にしか効果がないと思っているが、それは違う。そのスキルは持っている本人にすら及ぶのさ。無論、吸収する速度は微々たるものだ。見た感じ一秒に1ポイントといったところだろう。だが、長期戦になればそれも大きい痛手となるんだよ」
メフォールはそれを聞くとディザイアを離し、自分の剣を抜く。
だがもう実験は終わった。
ディザイアの吸収速度と、HPが減るとどの程度動きが弱るのかを調べるのが今回の実験だからな。
後は単純に、俺が実戦を久しぶりに経験するためだ。
こっからは本気で殺しに行くか。
「それじゃあ先にお別れの挨拶を言っておくよ」
「貴様……もう勝ったつもりか」
「ああ、もう勝負は終わってるんだよ」
俺はそう言って、幻惑を発動させ自分の姿を隠す。
それを見たメフォールは「消えた……」と呟くが残念ながら消えてはいない。
こんなところで説明するのもあれだが、スキルには二つの種類がある。
一つは、アクションスキルと言われるものだ。
アクションスキルは、剣術や短刀術、刀術や隠密などといった、その人物の技術が名前となって表れたものだ。このアクションスキルは、努力をすれば基本誰でも取れるものが多い。
アクションスキルはその人物の技術や経験が文字になっただけなので、日本から転移した俺達でも持っている奴がいたのだ。
もう一つはスペシャルスキルと言われるものだ。
スペシャルスキルは、幻惑や超越者の瞳、ダンジョンマスターといった特別なスキルを指す。これらのスキルは先天的に持っているものや、神から祝福を受け手に入れたなど、努力で手に入るものは少ない。
この世界の住人が持っているスキルもほとんどアクションスキルなので、スペシャルスキル自体が極めて稀なのだ。
分類でいうと、俺の神の眷属や上位神の加護超極小もこのスペシャルスキルということになる。
何が言いたいかというと、スペシャルスキルは多くのものがとてもレアだが、多くのものが規格外の効果を持つということだ。メフォールとぺルペラが、幻惑の力で見えなくしている俺を、視認出来ないのも無理はない。
俺は暗殺者をやっていた時の動きで距離を詰める。
隠密のスキルを取れるくらいまで昇華させた動き方は、ほとんど音を出さない。
そして何も見えていないメフォールの首を最小限の動作で掻っ切る。
「がはっ……」
「メフォールさん!」
ぺルペラが叫ぶが、メフォールは糸の切れた人形のように倒れ込んで動かなくなる。
ぺルペラはそれを見てパニックになったのか、色んなところに魔法を放ちまくる。
だが、それらを難なく避けて近づき、心臓を一突き。
「かはっ」
ナイフを胸から抜くと、ぺルペラもメフォール同様崩れ落ち、死に至った。
俺は心が冷め、暗殺者の時の感情が戻っているのを自覚しながら、最下層に戻るのだった。




