そこそこの侵入者 2
「ぺルペラ!スライムにサンダーⅡを!」
「はい!《サンダーⅡ》!」
ぺルペラがメフォールのすぐ側にいたスライムに向けて魔法を放つ。
ぺルペラのスティックより放たれた雷は凄まじい速度でスライムに炸裂し、くらったスライムはHPが0となり、光になって消滅した。
ここで少しサンダーⅡについて説明を入れさせてもらおう。
サンダーⅡとはサンダー(正確にはサンダーⅠ)が強力になった魔法だ。
基本的にこの世界の魔法はⅡやⅢ、Ⅳといった威力によって数字が分けられているものが数多く存在する。数字が高ければ数字が低い魔法よりも威力が高いということになる。
ただ数字が高くなれば、威力が強力になったぶん、魔力の消費が大きくなり詠唱時間も長くなるので、使い手の腕が高くなければ高い数字の魔法を使うことは出来ない。
「ナイスだ!……とどめだ、ゴブリン」
「ギシャアアアァァァァ!」
メフォールはぺルペラに賛辞の言葉を送り、戦っているゴブリンに止めの一撃を放つ。
それを受けたゴブリンは断末魔を残して、光となって消えた。
「ふぅ……やっと終わった」
「はぁ、はぁ、正直かなりきついです」
魔物を全て倒した二人はその場に座り込み、各々回復薬を口にしながら言葉を発する。
ここは名もなきダンジョンの三階層。
そして、メフォール達がこのダンジョンに来て、そろそろ三時間が経とうとしていた。
メフォール達のいるこの一から五階層の魔物はレベル10と均一で、スライムとゴブリンしかいないが、中々大変だ。
その理由は常に団体行動の魔物と、それがかなりのサイクルであることもそうなのだが、もう一つ理由がある。
「それじゃあそろそろ行くぞ」
「はい」
メフォール達は立ち上がり、再びダンジョンの探索を始めるがその数十秒後。
「ぺルペラ!」
メフォールがぎりぎりで気づいてぺルペラに声をかけるがもう遅い。
ぺルペラが「え?」と声をあげるが歩行は止まらず踏み抜いた足元の石が沈む。
そして次の瞬間、床に穴が開くがぺルペラは飛びのいていたため落とし穴にはまることはなかった。だがもしメフォールが声をかけなければはまっていたことだろう。
「ま、また罠……、それに凄く分かりづらい」
「ああ、常に細心の注意を払っていても分からないほどの高度な罠だ。くれぐれも気を付けろよ」
メフォールはぺルペラに再度注意を促すも、そのメフォールもかなり消耗している。
そう、このダンジョンが大変な理由のもう一つはDPで作った罠の存在だ。
今の罠は、充電式下級落とし穴、というもので踏み抜いたらその周囲二メートルの床が開き、落ちたらその下にある槍でぶすり、という仕組みだ。
これ以外にも様々な罠がこのダンジョンには存在し、その影響でこのダンジョンでは常に警戒が強いられる。ちなみにメフォール達は既に四回ほど罠に直面しており、その内一回、アラームトラップに関しては避けることが出来ず、ひどい目にあっていた。
ちなみに一から五階層までの罠は、落とし穴、アラームトラップ、とらばさみ、そして糸を使ったブービートラップ、の四種類だが、それでもはまってしまえばかなりの被害を受ける物であり、鑑定で見破るのも下位鑑定ではほぼ不可能に近い。
メフォールとぺルペラはなんとか罠の脅威を逃れ、魔物を倒して先に進んでいるがもう体力は限界に近いはずだ。
俺はその様子をジュース片手にテレビで見ていると、玲奈が一つ提案をしてくる。
「ねぇ、あれを出してみたらどうかしら?」
「あれをか?」
俺は問い返す。
あれが何を示しているのかは分かるが、本来ならもっと深くに設置しようと思っていた罠だ。それを三階層なんかで使うのか。
「ええ、あれを見た冒険者がどういう反応をするのかも知っておいていいんじゃないかしら?」
「確かにな、一理ある」
それは俺も思っていたことだ。正直あれを目にして普通の冒険者がどういう反応をするのかは見てみたい。
「だが内容の方はどうする?魔物大量投入でもするのか?」
俺がそう聞くと、玲奈はそこも考えていたようでその意見にも対抗策を出す。
「今回だけ雷がやればいいんじゃないの?あなたも対人戦をしばらくやっていないでしょ?ここらでまた体験してみたら?」
確かに最近対人戦をやってなかったな、と思う。
それにステータスから考えても、あの二人には勝てると思う。
「……そうだな。……それならあいつらの先に設置するとしますか」
俺はそう言うとスキルを使い、少しダンジョンを操作する。
そうしてメフォール達の進むすぐ側にあれを出す。
そうして数分後。
俺達が設置したそれに気づいたぺルペラがメフォールに声をかける。
「メフォールさん、あれはいったい何でしょう?」
ぺルペラがそれを指さし、メフォールに問いかける。
ぺルペラが指をさしたものは、台座に刺されている一つの剣と、その前にある石板だ。
「……石板には何か文字が書いてあるな」
「ええ、読んでみますか?」
「ちょっと待て、罠があるかどうか確認する」
そう言ってメフォールは石板と台座、そしてその周囲を鑑定する。
だが異常は見られなかったようで、「大丈夫だ」と言ってから石板に近づきその文字を読む。
『 これは欲望の試練。
台座に収められし物は魔剣ディザイア。
絶大な切れ味を持つ欲望の魔剣である。
汝、試練に打ち勝てば、この魔剣を手にすることができる。
挑むも反るも汝の自由。
試練に挑むならば剣を手に。
試練に打ち勝てばその魔剣を汝に授けることをここに誓おう 』
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種類:魔剣
名前:ディザイア
等級:A
スキル
自動再生
生命吸収
魔力吸収
称号
血塗られた魔剣
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「な!」
「こ、これは!」
メフォールとぺルペラは今までに例を見ないほど驚愕した。
その理由はこの魔剣のスペックの高さにある。
武器や防具などの装備には等級というものが存在する。まあ強さをアルファベットで表示したようなものだ。
等級は、G、F、E、D、C、B、A、S、と八段階で分けられておりGが一番弱く、Sが一番強い。
なお、アコアンのつけていた粗悪な鉄製装備はFでメフォール達が今つけている装備がDだ。
ちなみに等級がAを越えた装備は国宝レベルの武器であり、売れば人生遊んで暮らせるほどのお金が手にはいることだろう。
そんな装備が自分たちの目の前にあるのだ。驚愕するのも無理はない。
「それにしても雷はえげつないことするわね」
玲奈後ろから声をかけてくる。
「えげつないか、これ?」
「そうでしょ、冒険者っていうのは一攫千金を夢見る連中が多いのよ。そんな連中に一攫千金のチャンスをぶら下げてみなさいよ。全員とは言わないけれど多くの連中が乗っかるに決まってるじゃない」
「そうだな、まああんなのが試練に出てくるとは思わないだろうからな」
俺達がそう話している間にもメフォールとぺルペラは話している。
その内容は、ここで帰るか、無視して進むか、試練に挑むか、の三択になっている。
そうして三分ほど話した結果、挑むことにしたようだ。
まあ、こちらとしてもありがたい。
そうじゃないと準備したこっちが馬鹿みたいだからな。




