チュウの過去 ファイナル
2人はまぶしい夕暮れの中、帰り道を歩いていた。
2人はすっかり疲れていたようだった。
チュウは何も話すことなく足元の石ころを蹴り続けていた。
(チュウ・・なんだよ・・話そうとしねぇし・・・。)
でも三島にはなんとなくチュウの気持ちをわかっていた。
三島はチュウに何も話しかけなかった。
2人、いろいろなことを小さな頭の中でずっと考え続けていた。
気づけばもう家の前だった。
「ここがチュウの家なの?」
「うん。そうだよ。」
チュウの家はちょっと古そうなアパートだった。
そしてそこのアパートから4分ほど歩いたところには三島の家があった。
「なんだよめっちゃ近いじゃん!俺知らなかったよ。」
「え、うそ!!どこどこ??」
「ほらあれ・・。あの青い屋根のうらの・・」
「あぁ、あれねぇ・・・。いい家じゃないのさ。」
「なぁ、今度から一緒に学校行こうぜ!俺向かいに来るからさ。」
「うん!」
そう言って2人は別れた。
翌日、約束どおり二人は一緒に学校へ行った。
おたがいまた近づけた、そんな気がしていた。
学校に着くと予想通り悠馬の反撃が始まった。
クラス全員が悠馬にひれ伏しているようだ。
誰一人として話そうとしない。
教室は物音一つせずに気まずい空気が漂っていた。
「・・・暴力ヤローがぁ・・・。」
「出てけよ暴力野郎!!」
「出てけぇ!!」
悠馬に続いて悠馬の味方たちがチュウを罵った。
しかしチュウは全く動じなかった。
「出てけよ。なぁ?みんなお前が怖くて勉強どころじゃないんだよ。
なぁみんな、こいつに出て行ってほしいよなぁ!?」
悠馬はそういった後、気弱な鈴木をにらみつけた。
鈴木はびくっとした後、下を向き黙った。
「ちっ・・。」
悠馬は鈴木君をあきらめ、委員長の山岡をにらみつけた。
「なぁ、山岡。委員長として言ってやってくれよ。出てけって。」
「・・!」
山岡は拳を強く握り勇気を振り絞っていった。
「いい加減にしろ・・悠馬。」
山岡はそういった瞬間、緊張で震え始めた。
「あ?なんか言ったか?」
「いい加減にしろって言ったんだ!!」
「んだとコラ!!」
悠馬は完全にキれ、山岡に襲い掛かった。
山岡は蹴りつけられ、後ろの壁に勢いよく激突した。
「うっ・・」
悠馬は山岡に馬乗りになって言った。
「バカかテメェ・・。俺に協力すればなにもしねぇって言ったのによ・・。」
悠馬が拳を上げた瞬間、普段おとなしい倉持が叫んだ。
「止めてよ悠馬君!!」
「!!」
悠馬は手をピタッと止めた。
「てめぇ!!」
それに続くように前田、飯島、本木と続いてクラス中が悠馬を批判した。
悠馬の味方たちも周りに乗せられ寝返った。
「なんだよお前ら!なんでそんな暴力野郎の味方すんだよ!!」
「うるせぇ!お前なんかただ自分の思い通りにいかないのが気に食わないだけだろ!」
「そうだそうだ!」
「な・・・」
(ありえない・・・こんなの違う!!全部あいつのせいだ・・!!)
「う・・・」
山岡から離れた悠馬は目を大きくしてチュウをにらんだ。
「てめぇさえいなければ・・・」
ぶつぶつぶつぶつ口ずさみながら悠馬はチュウに向かって歩き出した。
そしてチュウの胸倉をつかみ、おもいっきり悠馬の顔面を殴った。
チュウは静かに廊下に倒れ、そのまま仰向けになった。
「お前さえいなければ上手くやっていけたんだ!!!」
「・・・・・・」
「はぁ、はぁ、なんなんだよ・・・。」
孤独感が悠馬を襲った。
その時三島が悠馬に近づいた。
「悠馬・・・もう止めよう。」
「!?・・・」
そしてチュウがたちあがり三島の横に立った。
「自分の思い通りの支配なんかより、一人の信頼できる友達のほうがいいさ。」
「友達と笑って、遊んで・・それだけでいいじゃん。」
「・・・うるせぇよ。 俺は お前らと違う。・・・」
「今からでも・・・遅くない。」
「こんなふうに喧嘩して、泣いて、仲直りして・・・それもひとつの友達だよ。」
「・・・・・・・」
翌日、悠馬は自宅マンションの33階から飛び降りた。
悠馬の机の上の紙に「みんなごめん。そしてありがとう」と書いてあった。
その出来事はクラス全員に衝撃を与えた。
全員が泣き、悠馬の死を偲んだ。
「お互いいつまでも友達だからな・・・。」
「もちろん。死ぬまで友達だ。」
そしてその2ヵ月後、チュウは遠く離れた場所へ引っ越した。




