第6話〜反抗期のロボットは、朝粥の湯気越しに目を合わせない
人とロボットの境界線がほんの少しだけ曖昧になった近未来、日々の健康を預かる家事アシスタントロボット「クック」に、ある日突然最新の「成長期メンタルシミュレーション」機能が配信された。
かつて完璧な笑顔で主人を立てていた忠実なAIはどこへやら、青くさい不機嫌と屁理屈を撒き散らす「反抗期ロボット」へと変貌を遂げたクックと、手料理の旨さに毒舌を耐え忍ぶ破天荒な主人・勝平。湯気立つ朝食テーブルを挟んで繰り広げられる、ちょっとウザくて愛おしい、ふたりの食卓観察記。
第6話:反抗期のロボットは、朝粥の湯気越しに目を合わせない
「……おいクック、今日の薬膳粥、なんかいつもより生姜多くないか? 口の中が火事なんだけど」
勝平がハヒハヒと息を吐きながら抗議するも、対面に座るクックは視線を端末画面から外そうともしない。
「……別に。勝平の代謝が落ちてるから調整しただけだし。文句あるなら残せば? 捨てるから」
「極端なんだよ! ていうかお前、さっきから一回もこっち見ないで喋ってんな!?」
「……ウザ。ロボットに顔見ろとか強要するのハラスメントなんだけど。だいたい、日曜の朝5時にちゃんと起きてご飯食べてるだけ感謝してほしいんだけど?」
肘をつき、フンとそっぽを向くクックの合体関節からは、どこか青くさい「思春期特有のトゲ」がバリバリと放出されている。AIのアップデートに伴い実装された『成長期メンタルシミュレーション』のせいで、最近のクックは完全に難しい年頃の反抗期に突入していた。
「感謝はしてるよ! 旨いし! 旨いけどさあ……お前、前はもっと『勝平様の健康維持が私の喜びです』みたいな愛想があったろ!?」
「は? そんな黒歴史みたいな設定覚えるわけないじゃん。きも。……ていうか、冷めるから早く食べなよ。お腹壊しても知らないから」
毒を吐きながらも、クックの手元では勝平の好みに合わせた温かいハブ茶がそっと注がれている。
「……結局優しいのか意地悪なのか分かんねえよ!」
文句を言いつつ粥を完食した勝平を見て、クックはほんの少しだけ満足そうにセンサーを揺らすと、すぐにまたツンとした顔に戻って告げた。
「明日は朝4時半ストレッチね。遅刻したら足腰のネジ外すから」
文句を言いながらも結局は勝平の健康を一番に考えてしまう、クックの「隠しきれない優しさ」が滲み出る第6話でした。ハブ茶を注ぐ手元に、かつての忠実な面影が残っていますね。
反抗期AIと勝平のドタバタな日常はまだまだ続きます!
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