表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超毒舌グルメVTuberは俺の飯だけ星一千万〜隣の無口美少女を料亭仕込みの家庭料理で餌付けしていたら、毎晩ごはんをねだられるようになった〜  作者: ハイさん
第4章 陽キャ同級生VTuberと、重圧のトラウマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/75

第65話 リリの復帰——美味しいは正義

味噌汁が九十点になった日の夜。リリが配信を再開した。


 夜十時。俺はベッドでスマホを構えた。


 銀髪のアバター。ボイチェンの声。だが——今日のリリは、いつもと違った。


『——皆さま、お久しぶりでございます。リリでございます。配信を再開いたします』


 コメント欄が爆発した。


『リリおかえり!!!!!!!!!!』

『待ってた ずっと待ってた』

『リリの毒舌が足りなかった 世界に味がしなかった』


『本日は——少しだけ、わたくしの話をさせてください』


 コメント欄が静まった。


『わたし、最近——味がわからなくなっていました』


 ざわめき。


『食べても、おいしいかわからないんです。素材の分析はできます。焼き加減も、塩加減も、出汁の構成も。でも——「おいしい」が消えたんです。データだけが残って、心がついてこなかった』


『リリ……』

『それって味覚障害? 大丈夫なの??』


『原因は——心です。昔から、わたしは「おいしい」だけでは許されませんでした。何がどうおいしいのか、完璧に分析して説明することを求められてきました。それが——わたしの価値だと、思い込んでいました』


 沈黙。コメントも止まっていた。


『でも——ある人が、オムライスを作ってくれました。百均のフライパンで。スーパーの卵で。大手メーカーのケチャップで。技術も何もない、ただのオムライスです。分析しようにも、分析する要素が何もない』


『それを食べた時——わたしは、泣きました。何も言えないのに、おいしかった。分析できないのに、おいしかった。温かくて、ぜんぶがぜんぶ、おいしかった』


 コメント欄に涙の絵文字が溢れた。


『その人が言ってくれました。「分析なんかしなくていい。美味いと思えば、それで充分だ」って』


『妖精ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

『妖精が救った。妖精が世界を救った』

『百均で世界を救う男、妖精』


『だから——今日から、わたしのレビューのスタイルを少し変えます。完璧な分析は、これからもします。それはわたしの武器ですから。でも——分析の前に、まず「おいしい」か「おいしくない」かを、ちゃんと言います。理屈の前に、心を。……それが——あの人に教えてもらったことです』


『あと——以前、わたしの配信で「お前が作ってみろ」というコメントがありました。……あの時は、何も答えられませんでした。でも今は言えます。——はい、作っています。まだ下手ですが。味噌汁は九十点になりました。おにぎりも握れます』


 コメント欄が——また爆発した。


『九十点!? 六十五点から九十点まで上がったの!? リリの成長速度がバグってる!!!!!!!!!!』

『「理屈の前に心を」リリ……成長してる……母親みたいに泣いてる俺……』

『アンチコメした人、これ見てるか? リリはお前の何倍も努力してるぞ』


『以上です。——本日のレビューに参りましょう。本日のお題は、コンビニスイーツです。では——』


 いつもの毒舌が始まった。だが——レビューの冒頭に、リリは三文字を添えた。


『まず——おいしいです。その上で申し上げますと——』


 「おいしい」が、最初に来た。


 分析の前に、心が。


 壁の向こうから——配信の声が微かに聞こえる。鈴音の声。ボイチェンを通しているけれど、壁越しに聞こえる地声が混じっている。


 強い声だった。もう——震えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■作者からのお知らせ
この作品をキャラクターの声で楽しめる「ボイスドラマ版」をYouTubeで公開しました!
ぜひ耳でも作品を楽しんでみてください↓

ハイさんの創作チャンネル
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ