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超毒舌グルメVTuberは俺の飯だけ星一千万〜隣の無口美少女を料亭仕込みの家庭料理で餌付けしていたら、毎晩ごはんをねだられるようになった〜  作者: ハイさん
第4章 陽キャ同級生VTuberと、重圧のトラウマ

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第64話 九十点

オムライスの翌朝。


 鍵の音。


「……おはようございます」


「おはよう」


 鈴音が——鍋を持っていた。


 味噌汁が復活していた。


 テーブルによそう。一口飲んだ。


 出汁が——変わっていた。


 昆布と鰹の配分が、今までと違う。昆布の比率を上げている。鰹節は薄めに削ったものを使っている。味噌は控えめで、出汁の旨味を前面に出す構成。


 そして——具材が変わっていた。


 豆腐、なめこ、三つ葉——に加えて、油揚げが入っている。油揚げは油抜きされて短冊切り。サイズが揃っている。


「……新しいレシピか」


「……はい。……昨日の夜、考えました」


「何を考えた」


「……分析しなくていいなら。……自分が食べたい味を作ればいいんじゃないかって」


 そうだ。


 今まで鈴音は「湊の舌に合わせる」ために味噌汁を作っていた。それは——母親の呪いの延長だった。「相手に合格点をもらわなければならない」という強迫観念。


 だが昨日のオムライスで——その呪いが緩んだ。


 自分が美味しいと思うものを作ればいい。それだけ。


「……私が一番好きなのは、昆布出汁の強い味噌汁です。……鰹の香りは好きですが、主役は昆布の旨味がいい。……みなとさんの好みとは違うかもしれませんが——」


「うまい」


 遮った。


「え」


「九十点」


 鈴音の目が——見開かれた。


「……九十」


「お前が自分の好みで作った味噌汁は、俺の好みに合わせた味噌汁より上だ。味に迷いがない。出汁の引き方が安定してるし、具材の選択も的確だ」


「……」


「何より——味噌汁に意志がある。お前自身の味がする」


 鈴音の手が——鍋の取っ手を握りしめた。


「……九十点」


「ああ」


「……みなとさん。おかわりは——」


「二杯飲む」


 二杯目をよそった。三杯目はさすがに遠慮した。


 鈴音は——椀をゆっくり下ろした。


「……お粗末さまです」


 その声は——もう震えていなかった。

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