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超毒舌グルメVTuberは俺の飯だけ星一千万〜隣の無口美少女を料亭仕込みの家庭料理で餌付けしていたら、毎晩ごはんをねだられるようになった〜  作者: ハイさん
第4章 陽キャ同級生VTuberと、重圧のトラウマ

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第54話 コラボ配信——アリアとリリ

八月十五日。夜十時。


 リリとアリアの初コラボ配信が行われた。


 俺は自室のベッドでスマホを構えていた。壁の向こうで、鈴音がパソコンに向かっている気配がする。


 配信が始まった。


 画面に二人のアバターが並んでいる。ピンク髪のアリアと銀髪のリリ。華やかな舞台と暗い書斎。対照的な二人だった。


『皆さまこんばんは! アリア・スターライトでーす! 今日はずーっと夢だったリリさんとのコラボでーす! 嬉しすぎて昨日寝れなかった!』


『……こんばんは。リリでございます。……よろしくお願いします』


 声がいつもより硬い。鈴音が緊張している。ボイチェン越しでも伝わってくる。


『リリさん緊張してる!? かわいい! 大丈夫! 私がリードするから! 今日のテーマは「最近一番、心に残っている料理」です!』


 コメント欄が沸いた。


『リリちゃんの「心に残ってる料理」=妖精のご飯に決まってるだろ!!!』

『アリア側のテーマ選びが天才すぎる。これはリリの語彙力が壊れる回だ』


『じゃあ私からいくねー! 最近ね、駅前のパンケーキ屋さんに行ったの! ふわっふわで、メープルシロップがたっぷりかかってて——もう幸せ!って感じ!』


『……パンケーキ。……焼き具合はどうでしたか』


『え? 焼き具合? えーと……きつね色?』


『……それは色であって焼き具合ではありません。生地の膨張率と、表面のカリッとした食感と中心のしっとり感の比率によって——』


『リリさん、すごい! そういうの全然わかんない! 教えて!』


 テンポが——噛み合い始めた。


 アリアの天真爛漫さがリリの毒舌を引き出し、リリの分析がアリアのリアクションを加速させる。


 視聴者数が上がっていく。


『このコンビやばい。正反対なのに化学反応すごい』

『アリアがリリの毒を中和してて草。解毒剤やん』

『リリが楽しそうに見えるの初めてなんだが??????』


 配信の中盤。


『じゃあリリさんの番! 最近一番、心に残っている料理は?』


 沈黙。三秒。


『……おにぎり、です』


『おにぎり? え、高級おにぎりとか?』


『……いいえ。……梅干しの。……普通の。……私が初めて握って、形がいびつで、塩が多くて、海苔の大きさが左右で違って。……六十五点だって言われた不格好な味噌汁と、一緒に並べたものです』


『六十五点って……もしかして、この前の復帰配信で言ってたやつ!?』


『……はい。大切な人に、初めてごちそうしたごはんです。たったの六十五点でした。でも——彼が「うまい」と全部食べてくれたあの時間は、今までレビューしてきたどんな高級料理よりも——心から、嬉しかった』


 コメント欄が——爆発した。


『は?????? リリが語彙力壊れた!!!!!!!!!』

『泣いた。俺が泣いた。何回目だこの展開』

『「大切な人に初めてごちそうした」って妖精のことだよな??? は??? あの毒舌のリリが、妖精にご飯作って食べてもらって泣きそうになってるの??? ちょっと待ってくれ尊すぎて意味がわからない。前回は作ってもらって語彙力壊れて、今回は作ってあげて感情壊れるとか最高かよ』


『あ——リリさん。もしかしてそれ、大切な人って——彼氏?』


『……いいえ』


『えー! どういう関係なの?!』


『……名前をつけると、壊れてしまいそうなので。……まだ、名前はつけていません』


 配信が終わった。


 壁の向こうで——パソコンを閉じる音。椅子を引く音。ベッドに座る音。


 俺はスマホを握ったまま——天井を見ていた。


 「名前をつけると、壊れてしまいそう」。


 ——同じことを、俺も思っていた。

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