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イハサの山賊退治その1

「おう、随分キレイな姉ちゃんがいるじゃねえか。少し付き合えよ」


 そう言って三人、正確にはラクリエに話しかけて来たのは、赤い顔をした中年の男だった。明らかに酔っ払いだが、意外にも足取りはしっかりしている。


「悪いが彼女は我の部下なんだ。他を当たってくれないか」


 たじろぐラクリエをよそに、ゼアルが割って入る。


「ああん? 何だてめぇは、てめぇにゃ聞いてねえんだよ!」


 しかしゼアルの紳士的な対応も虚しく、男はラクリエに対する粘着をやめない。


「やれやれ、少し寝てもらうとするか」


 男の腰には剣が下がっており、腕に覚えはあるようだが所詮一般人に毛が生えた程度。男の雰囲気からそう理解したゼアルは、椅子から腰を浮かせる。しかし、


「ゼアルは座っていて下さい。わしがやります」


 というイハサの言葉に、


「……そうか、任せた」


 と、再び席に着いた。


「何だガキ、てめぇも俺の邪魔をすんのか?」

「邪魔をしているのはそちらなのですが、まあいいです。そのガキに負けて無様に膝を突き許しを請う姿で許してあげます」

「このヤロウ……!」


 イハサと代わったお陰で周囲を見回す余裕の出来たゼアルは、その時ふとある事に気付く。


(みんなやけに冷静だな……)


 男の怒号が聞こえなかった訳でもあるまいに、ゼアル達に注目しているのは精々四割と言った程度。他は何食わぬ顔で酒場を楽しみ、注目している四割にしても戸惑いより落ち着いて傍観しているに過ぎない。この手のトラブルがそれほどありふれているという事なのか。


 勝負は一瞬で着いた。剣を抜こうとしたのは明らかに男の方が早かったが、どういう訳だが次の瞬間には、男の首にイハサの剣が添えられていたのである。対する男は未だ剣を抜けてすらいない。


「な……に……?」

「柄落としです。一々説明はしませんが」


 だが近くで見ていたゼアルには、その一瞬の攻防が見えていた。

 男が剣を抜こうとしたそのタイミングで、イハサも剣を抜いたのである。そして次の瞬間、お互いの柄の先端が接触した。結果男の剣は男の手を滑って再び鞘へ、対するイハサは刀を落とすことなく抜き払い、そのまま男の首元へと刀を……。


「今からアナタが何をしなければならないのか、分かっていますね?」


 イハサがそう言って男を睨みつける。


「こ、こんな筈は……」


 しかしどうにもならず、男はイハサの要求に従い、ゆっくりと両膝を突いた。だがその時、


「すまない、その辺で勘弁してやってくれないか。その男はうちの命令でちょっかいを出しただけなんだ」


 そう言って一人の若い女が二人の元へと歩み寄る。すらりとした長身の女性だった。


「……どういう事です?」

「うちらは今人を集めていてね、強そうな兄ちゃんがいたからそれを調べるためにちょっかいを出してもらったのさ」


 なるほど酒場の客の冷静な対応。客も店員も彼女の言う〝人集め〟の仲間だったのだろう。イハサは視線でゼアルの判断を仰ぎ、ゼアルの首が縦に動いたのを見て男を解放した。


「ありがとう。それにしても凄いね君、まさか君がここまで強いとは思わなかったよ。奥で詳しい話をしたいんだけど、構わないかい?」


 彼女にとってもイハサの強さは嬉しい誤算だったのだろう。やや興奮気味にイハサを誘う。


「いえその、残念ですが……」

「いや、話を聞こう」


 断ろうとしたイハサを制し、ゼアルが女性の提案に応じてしまう。


「えっ?」


 自由時間とはいえ、あくまでゼアル達は公務中である。本来であればにべもなく断るべきだったのだが、『人を集めている』という彼女の言葉、そして集ったメンバーの顔ぶれから悪事の類ではないと判断したのだった。

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