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吸血鬼だってチーレムしたい  作者: もこもこ
月の教団と対決する生活
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第54話 逆襲撃

 

「俺達の優位は人数がいること、そして、襲ってくると知っていること」

「リーゼさんにお願いして国境から渡ってくる人間には注意するようにしてもらってますから、いつ来るかはわかります」


 戦闘で大切なのは数、力、場所……そして最初に殴りかかることだ。

 不意を打って襲撃できれば人数を減らせて、力の差が開けばそのまま倒すのも簡単だろう。


 まあ、正直? Sランクモンスターを倒したパーティーに騎士団も付いているのだ。

 多勢に無勢もいいところ。


 教団の傭兵なんて、あの時ですら怪我なく倒せているのだ今だって変わらず倒せてしまうだろう。

 確かに対策のひとつふたつは打ってくるのだろうが、そもそもあの傭兵だって俺を相手にするつもりだったわけだしな。


 まったく、はた迷惑なやつらだ。


 机の上にどっしりと重ねられた書類に、対策のための色々。

 人を動かすのは金もかかれば手間もかかるようだ。

 だが、これで全てに決着をつけるんだ!


 --


 エティリア王国からアルムガルト領に来るには必ず通る道がある。

 後はそこを目指すものをマークしつつ、集まってくる時期を見て迎え撃つだけだ。


 既に兵士が張っており、早馬で合図が来た。


「行こう」


 オークアントを倒す時と同じように、しっかりした装備を身につけ、教団が待ち受ける場所へと急いだ。



 --


 教団の人間は15人程度だった。

 思ったよりも少ない。

 多くの人間がローブを着て、顔を隠しているため、どんな人間かは分からないが、誰もが普通の村人ではないことがわかる。


 冒険者であればBランクを超えるだろう、力を感じる。

 中にはお父様もおり、彼らの中でも強く感じるのだから、親はすごかったんだなあと感心するばかりだ。


 彼らがいるのは道から少しだけ外れた場所にいて、周囲は森であることもあり、人が身を隠すにはちょうどいい。


(あいつらが襲いかかってきた時を思い出すな)


 月の教団の雇った傭兵に馬車ごと襲われた時。

 今度は逆に襲う側になるのだからおかしなものだ。こんな思い出し方はどうかと思うが、お母様は元気だろうか。状況がわからないため、手を出しづらかったが、手紙くらい送っても良かったかもしれない。でも、居場所を教えるわけには行かないのだから変わらないか。


「合図にゃ。リオンは一番強そうな奴に先制を」

「わかった」


 お父様を除けば一番強そうなのは教団の人間の中で一番背が低いやつだ。

 ぱっと見で分かるくらいに強い炎の魔力を纏っており、あいつはSランクと言われても頷くだろう。

 子供かと思わせる身長だが、ドワーフやホビットは身長が極端に低いので、そうとも言えない。

 どちらであっても、やるしかない。


「ブラッドモードオン。ダークブリンガー!」


 乱れ撃つダークセイバーを一本の強い力に変えたダークブリンガー。

 巨大だったオークアントの女王にはダークセイバーの方がダメージは大きいだろうが、人間の強敵1人ならこちらのほうがずっと強いはずだ。


 闇を濃縮して一本の剣に変えた。そんな魔術がローブの人間に打ち込まれる。

 人の範疇で受け止められるものではない。


 後ろから狙った一撃なのに、そいつはこちらを向くと、飛んでくる剣に対抗するように、自らの剣を引き抜く。真っ赤な、どこか太陽の輝きを思わせるきらめき。

 妙に不快な気持ちになる。


 魔剣か? けど――


 避けようにも不意を打っている。

 迎撃に伸ばした剣を持った手ごと切り裂くか、武器だけですむか。


 どちらにせよ追撃で――そう思ったのに、敵が剣を振ると、バターのようにダークブリンガーは切り裂かれて消える。


「はっ?」

「敵襲よ。吸血鬼は私が相手するわ!」

「待て、エヴァ……! リオンは俺が……」

「いいえ、セドリック兄さんでは戦いづらいでしょう。私達が相手をしますよ」


 エヴァ!? あれはもしかして、エヴァなのだろうか。いや、彼女は確かに才能があったけれど、オークと戦うのに手こずるくらいだ。今となっては相手にならない、はずなのに。


 タネは、あの剣か? だが、ならエヴァを避けて、数を減らすだけだ。


「ダークセイバー!」


 多くの敵を葬り去ってきた、俺の得意技。

 密集している彼ら全てに襲いかかるはずの刃――


「シャインセイバー!」


 だがそれも相手からの強い光の魔力に反応して消えてしまう。

 相克。火に水の魔術を当てるように、反対の属性を当てると、多少の差なら関係なく消えてしまう。

 特にその性質が近い魔術同士ならなおさら。

 エヴァと一緒にいる、光の魔術師。そんなのミハエル叔父様しかいない。


「そんな」

「リオン、足を止めるんじゃないにゃ」


 隙を見たと、小柄の少女――エヴァが走ってくる。その強力な炎の剣を抱えて。

 恐ろしいほどの速さでかける彼女の剣を避けれたのは偶然に近く、足がもつれる。


「はっ!」


 不快な光を纏うその剣は振り下ろす勢いのまま、二撃目で俺の体を捉える。

 僅かに反らせたおかげで体を半分にされることはなかったが、肩からバッサリと腕が切り落とされてしまう。


「うわああぁ!」


 頭のすべてをうめつくしそうな、痛み。

 吸血鬼になったせいか痛みには強くなったと、いや、鈍くなったと思ったのに、痛すぎてなにも考えられないくらいだ。


「エヴァおねーちゃんなんだろ!? やめてくれ!」

「……吸血鬼が、リオンの真似をするな!!」


 彼女はローブをめくり上げる。

 久しぶりに見る彼女は全然変わらず、勝ち気な瞳も、人形のような愛らしさも変わらない。

 それはそうだ。まだあの時から何年も立っているわけではないのだから。

 変わらない彼女の、けれどその瞳からは一度も見てない涙が見える。


「ま、マネじゃない! 本物だ」

「リオンはもっと可愛かったわ! 殺しに来ておいていざ殺される時に命乞いなんてするな!」

「くそ」


 きっと、手紙にあったように俺の体を吸血鬼が乗っ取っていると勘違いしているのだ。

 エヴァは強く、俺の魔力は叔父様に消されてろくに使えない。

 仲間たちも、以外に手強い教団の刺客に手間取っているようだ。すぐに助けに来られる感じじゃない。


 一体、どうすればいいだ。

 死ぬかもしれない恐怖が、改めて襲ってきた。



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