第47話 戦の前
昇格の機会がなくて燻っていたすべての人材が集まったように大量の人間が溢れている。
話では1,000人近い数が集まっているというのだからすさまじい。
確かに、戦国時代の合戦では数十万とかの大勢で合戦をしたそうだが、それはあくまで人対人であるし、槍を持っただけの農民みたいなのも含めてだろう。
傭兵くずれや、冒険者達が多いということもあるが、それを差し置いてもかなりの量だ。
この世界は魔術あり魔物ありの世界で、人間自体体の作りが向こうよりかなり頑丈だ。
武将のようにごつい顔した鎧を着込んだ騎士たちがたくさんいるのだから、正直いってかなりビビる。
逆に、シルヴィアは気合が入っているようだし、マリオンは周りの露骨な視線にややげんなりとしながらも、平然としている。
「血が滾ってくるにゃ!」
「ふーむ。冒険者は数揃えって感じですね。Aランクの冒険者はあまり見ませんね」
「あれ、そうなの?」
人数を揃えて道を作り、Aランク冒険者に倒させればそれで終わりだと思うんだけど。
そもそも、Aランクは一般的にはかなりの脅威だ。
腕の一振りで人間なんて簡単に吹き飛ばしてしまう強さがある。
となれば貴族ならば命大事と詰めを任せるために強い人間を雇ってもいいと思うんだが。
「そうですね……。自分の領地が欲しいというのもありますが、自分たちの力と、蔑ろにするなというアピールも兼ねてますから、そこで冒険者が全てやりましたでは評価も上がりませんし、空気を変えることもできないのでは? Aランクなら自分の働きで十分貴族並みの生活をできるというのもあるでしょうが」
確かに、Aをバシバシ倒せるようなら、正直金には困らない。
それに、この戦いに参加してとなると新興貴族の雇われになるだろうし、すると、そこまでいい立場とは言えないかもしれない。
「とは言え、Bランクの上を目指すのが難しそうな冴えない奴らが集まってるにゃ。油断は禁物って感じだにゃ」
ヒーラーが貴重なこの世界で、長期戦になるオークアントの討伐は簡単なものではないが、一攫千金狙いで人生の逆転をかけて参加しているBランクチームもいるらしい。
後は単純に人数が揃っているから十分安全に稼げると貴族に雇われてきている感じだろうか。
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「貴様。見たことのない顔だが」
2Mくらいの巨体に、がっしりした筋肉。上等のミスリルの鎧を着こみ、剣を腰に下げた男だった。
鎧には帝国の紋章が描かれており、冒険者とは違うかしこまった立ち振舞だ。
周りの領地に夢見て浮かれている人間と違い、眼光は鋭い。
本物の武人だ。思わず尻込みしそうになるが、ぐっとこらえて前に出る。
「はじめまして。私はリオン。この国の生まれではありませんが、国を出て、ここで冒険者として生活しておりました。オークアントの女王を討伐し、皇帝陛下に願い出てこの国の貴族にしていただきたいと思っています」
「ふむ、貴族崩れか? 確かにSランクを倒して爵位をもらうものはいる。だが、オークアントは女王を倒したとて、蟻は残り、女王を倒したものに襲いかかってくるだろう。軍を出しぬいて倒したところで土地を治める力がないなら認められるまい。報酬を渡されるだけだろう」
やめとけ、やめとけと虫を払うように手を振るが、善意で忠告してくれているようだ。
彼は、リーゼに剣を教えた先生であり、爵位を得る夢にのぼせ上がった貴族の一人を死なないように守るために来ているらしい。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですが、女王以外も倒して見せるつもりですし、アンネリーゼ・フォン・アウグルクリス様から根回しいただけるよう確約を頂いております」
リーゼからの手紙を渡すと、ため息を付く。
「……アンネリーゼ様に良い方ができたのであれば喜ばしいが、アヒムにはばれないようにするんだな。いや、彼以外にも相手のいない姫を是非と言っている者は多い。余計な騒動を起こしたくなければ余計なことを話すのはやめるんだな」
「ご忠告ありがとうございます。それで、いつごろで、どんな様子ですか?」
そう、彼はリーゼから紹介してもらった情報源だ。いつ頃攻めるのか、どの程度の力があるのか。
「進軍は2日後で、新女王は1ヶ月後誕生といったところか。テンションは高いが、皆バラバラだ。討伐は運が良ければになるな。彼らは露払い程度で、後からくる帝国軍が本命になるだろう」
「じゃあ、2日後に突撃かな?」
「捕まれば死ぬほうがマシな目に合うだろう……というのは冒険者なら今更か。まあ、無理はしないようにな」
こうして俺達は最後の準備を行った後、オークアントの支配する領域に進むのだった。




