他の人の視点から
ある護衛、ザックの証言
美しいというのは色んなものを引き寄せるものだ。
俺の今度の主は元王太子殿下。
今だに気を抜くとつい「殿下」と呼びかけてしまう。
うっかり「殿下」呼びが続いてしまった俺に、その主は困ったように笑って
「これはもう、『デンカ』っていう名前だって言い張るしかないね」
と、それは花が綻ぶような笑顔を見せてくれて、俺は思わず呆けてしまった。
殿下は、まず女性にもてる。子どもにもてる。赤ん坊すら殿下の顔に見とれて泣き止む。
この間は老女に「冥土の土産にいい物を最後に拝ませてもらった」と拝まれてすらいた。
困った顔がちょっとツボだ。悪いと思ったが笑ってしまった。
微笑ましすぎて。
本人は気が付いていないようだが、若い、年頃の女性の事はちょっとだけ苦手なようだ。
迫られすぎて辟易しているのだろうか。
たぶんそんな所だろう。
もてすぎて、学園時代は殿下を巡って女性同士が角突きあったという噂もある。 嫉妬のあまり殿下の婚約者であった御令嬢が乱心なさったとか、有名貴族子息から付け狙われただの話題がつきない人物だ。
あまりにも殿下の寵を巡っての抗争が激しすぎて貴族社会が嫌になったとかで弟王子にその地位を譲り、臣籍に下ったという変わった経歴の持ち主でもある。
若いのに大変な目にあったのだなぁとしか分からないが、俺はこの主を大切にしたい。平民出身で花もない俺を引き抜いて部下にしてくれたのだから。
ある護衛ホップの証言
美しさというのは強さだろうか?
王城で騎士の仕事をしていた俺は、遠目に殿下の姿を見かける事があったが
その時まではやけにキラキラしい人だなという感想しかなかった。
が、ある日、鍛錬中の俺が、隊長に呼びつけられて、騎士団長に顔を出してみると、それはそれは美しい人が待っていて驚いた。
シンメトリーな身体、長い手足。
殿下はまったく、作り物めいたような美しさだった。
ほどよくついた筋肉のしなやかさが、その洗練された挙動から伺われる。
脳筋な俺はつい、その服の下の、程よくついた筋肉を纏った長い手足から繰り出される剣圧の強さと攻撃力を計算してしまう。
その結果は素晴らしいという一言につきた。
俺はひそかにほくそ笑む。
王子という立場だからだろうか、命令する事に慣れた物の言い方。
自信に溢れたその強い言葉になかなか反意を示せる者はいないだろう。
後日、テストと言われ剣を打ち合わせる機会があったが、その見かけに反してなかなか癖の強い、ある意味人を食ったような剣捌きに翻弄された。
「合格」
汗ひとつかいてない殿下に比べ、終わってみれば俺の方は汗だくになっていた。
殿下は強い。でも強くなかったら、その美しさから簡単に何者かに害されてしまうだろう。
綺麗な薔薇には棘があるって諺の通りだな。
ある護衛ステップの証言
美しいってちょっと可哀そうだって思う
殿下とは歳も近い事もあって、割と砕けた話もするようになった。
プライベートな殿下は気さくで気の置けない人物で何にでも興味を示して
郷里の弟を思い出す。
殿下も俺に気を許してくれるようで、よく何でもない事をしゃべってはお互いに笑っている。
そんな殿下でもちょっと困った事があるみたいなんだ。
俺達は殿下に慣れちゃってるけど、はじめて会った人は大抵、口をパクパクさせて言葉を失ってしまったり、赤面して逃げていってしまったり…つまり普通に接してくれる人は少ないんだ。
殿下は普通にしてほしいって思ってるみたいだけど、そういう態度に出られると少しだけ寂しそうな表情をする時があるんだ。
殿下は綺麗すぎる人だけど、中身は俺達普通の男子と一緒なんだって、なかなか思ってもらえないみたいだな。
ある買われた女奴隷の証言
今度のご主人様は若くてとても素敵なお方。
私という奴隷への扱いも優しくてとても大事にされている。
「エマ」という新しい名前ももらった。 とてもうれしい。
長く、ご主人様でいてもらえるように、私にできる事はなんでもしよう。




