27、アイリ、危機一髪
聞き間違いは、無いはずだ。
私はまだ、そこまで耄碌してないはずだ。
難聴でもない。
もっと言えば、耳はいい。
地獄耳なので、店の女の子たちが、ハートの事を話している声を、時々聞いてしまうほどだ。
モテるな、ハート。
いや、そうじゃなかったな。
…なんだったっけ?
「正気ですか?ティーク様。」
うんうん、ティークもイケメンさんだよ。
ティークは、童顔の可愛い系なイケメンさんで。
ハートは、精悍なイケメンさん。
つんつん立った金髪と、切れ長で時々冷たく見えちゃう目と。
「正気だ。」
ほらほら、イケメンさん同士で喧嘩しない。
どっちもいい男なんだから。
そんなに顔を近づけてたら、おねーさん「腐」な想像始めちゃうぞ?
「と、言っても、母君対策の為だけど。アイリ、おーいアイリー。」
「はっ、ハートは攻めだよね?」
「何それ。聞いてた?母君対策に、ボクと結婚してる事にして。」
「あ、えぇ?」
回線が…、今混線中で…。
「アイリさま、兎に角、ティーク様の話を聞きましょう。」
「うん。」
とりあえず、お茶を一口。
ついでにふわふわなシフォンケーキも一口。
「しかし…なんで偽装結婚?」
「母君はね、可愛い女の子を集めて、側に侍らせておくのが好きなんだ。」
あ、ハートがお茶を噴き出した。
凄く百合百合な香りがします…。
「母君には、皇女が産まれなかった。可愛い女の子を産んで、可愛がりたかったみたいなんだけど…それが叶わなかったから、侍女でその欲求を解消してる。」
あぁ、百合ではないのか。
「でも、結婚や婚約者や恋人がいる人には、手を出さないから…。それで、偽装結婚。」
いや、待て待て。
それなら、恋人でいいはずだ。
「恋人でも、婚約者でも、この際なんでもいいや。アイリがボクのお手つきってことがわかれば。」
さいですか。
「うん、それなら構わないけど…、ティークはそれでいいの?」
何せ相手は王妃様。
嘘が真実になってしまう可能性も…。
「別に…。」
あ、ティークが目を反らした。
「それなら、俺でもいいわけでは?」
「まぁ、まぁ、ハートさん。」
くいくいとダニィさんが、ハートの袖を引いた。
「あぁ、王妃様は、あと二、三日でこちらに来られるそうです。アイリさん、何かいる物がありましたら、ハートさんに。ティーク王子は、ここの支度を。ハートさんは、仕入れや街の方への配慮を。」
この辺は、流石にダニィさんだ。
ハートが来るまでの、暫くの間、ダニィさんが店の色々を捌いていたが、それはもう、ほぼ完璧だった。
「はーい。うーん…。」
さて、料理を考えなくては。
お菓子の類も考えておかねば。
お酒は、甘口のアルコールの少ない物を用意しよう…。
服は…、好みの問題も…。
王妃様より、周りの侍女さんたちの方がいいかもなぁ…。
あれやこれやと考え出した私の横で、ティークとハートが何やら言い争っていたが、いつもの事だから気にしない。
ダニィさんも、お茶を啜っているし。
と言うか、いい加減、仲良くなって欲しいんですけど、ティークとハート。




