26、作戦会議
「大変だー。王妃様が来るぞー。」
「アイリ、現実逃避しない。」
「そうですよ、アイリさま。」
「これはまた。」
場所は、ティークの家。
テーブルや椅子が増え、ソファまで増えている。
私が初めて来た時の殺風景は、どこへやら。
もっとも、商談のほとんどをここでやっているのだから、それなりにはなるのだろう。
今、この場にいるのは、私に、ティーク、ダニィさんにハート。
トップによる、密談である…。
「しかし、参ったな。まさか母君が出てこようとは。」
ティークも若干困っているらしい。
「店の信条を、少し変える羽目になりかねませんね。」
店の信条は、誰でもウェルカムな代わりに、分け隔てをしない。
何処ぞの貴族が来ようと、そこらの領主が来ようと、特別扱いはしない。
勘違いな貴族が来て、ティークが叩き出したこともある。
食べ物なのだから、そんなものは関係ないのである。
私も知ったこっちゃないしね。
「ボクは、出迎えにかかり切りになってしまうし…、ダニィも手は離せないだろうし…。」
「店を臨時休業にするのは、少し困りますしね。」
「そもそも、王妃様は、なんでこんな所まで、来るの?」
言ってしまえば、辺境なこの街。
わざわざ来るまでもあるまい。
「ティーク王子の顔を見に、と言うのは建前で、目当てはサクラ亭と、ハートでしょうな。」
この街のハート直営店は、私が縫った新作が並ぶ。
「それだけの為に?あ、ハート、ありがとう。」
「いいえ、アイリさま。」
ハートがお茶を入れて持って来てくれる。
最近出まわりだした、ハーブティだ。
ついでに私が焼いておいた、シフォンケーキも出してくれた。
「アイリさまはご存知ないでしょうが、王都でもその二つは有名になってますよ。」
「おかげで、この街の人口も増えた、増えた。」
街が発展しているのは、いいことだ。
「そうなのか…。」
そりゃ、間違いなく、服と料理が目当てだな…。
うーん…。
「いっそのことさ。」
王妃様とはいえ、来てすぐ帰る訳ではない。
最低でも、一泊はするはずだ。
そして、泊まるのは、ここ…ティークの家であるはずだ。
「私が、ここで料理を振る舞って、服も希望する物を縫ってみせたらいいんでない?」
そうすれば、街はそれほど騒がしくならない…はず…。
どっちの店も、休まなくて済む。
「まぁ…。」
渋い顔のティークとダニィさん。
「アイリさま、王族様に対する礼儀作法は…。」
「それは、気にしなくて済むんだけどさ…。」
ティークが頭抱えてるよ。
「あの母君だよ…。」
ダニィさんが、ティークの肩をぽんと叩いた。
「諦めて下さい、ティーク王子。」
「ふぅ…仕方ないか。アイリ。」
覚悟を決めたのか、ティークが私に向かい直った。
「ん?」
「母君はいい。その取り巻きが問題なんだ。そいつらの言うことは、聞かなくていい。気にするなよ。母君も多少は止めてくれるはずだ。そして…。」
そこまで、一気に言い切ったティーク。
そして、一息ついて、お茶を一口飲む。
ティークの口調が、変わるのを聞くのは、久しぶりだ。
「ボクと、結婚、してくれ。」
「………は?」




