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Silver Pendulum  作者: 迦月
7/11

a couple of affair−I

 ―午前8時26分 星宿館食堂―



万里「鴻なんてトリカブト塗りまくったバイクに引かれて死んじまぇ!」

 そう言って足早に榎璃の脇をすり抜けて外へ出て行く万里。

鴻「万里なんて…っ!サメにでも…食い千切られて死ん…じゃ…ぇ…っ」

 そう叫(?)んで鴻も榎璃の脇をすり抜けて奥へ逃げ込むように走っていく(半泣き)。

祥「ちょっ…万里!鴻!」

 どっちを追いかけたら良いのか解らず、不意に伸びた手もそのままで立ち尽くす祥。

 そんな光景が、起きたばかりで部屋から降りてきた榎璃の目の前にあった。

榎璃「…………はい?」



 12月10日午前8時26分。

 四人が『I.J.H.医療健康保険機関』で暴れまわってから2週間後。

 今、星宿館に居るのは、その後入った『情報』カテゴリの依頼でパソコンを叩いていた館の主の万里と、その幼馴染の榎璃。

 そして、すっかり元に戻った祥と鴻。 仕事も終わり、久しぶりにパソコンと書類の音が消えた星宿館に、朝から二人の怒声が響いた。

榎璃「…で?なんでそんな状況になってるワケ?」

 近頃寝不足だった為、他の皆より遅く起きた榎璃は朝食のジャムを塗ったトーストに齧り付きながらいささか不機嫌そうに聞く。

祥「榎璃まで不機嫌になるなよ。」

 祥はカフェオレの入ったマグカップを片手に言う。

 どうやら、あの二人にとばっちりを受けたらしい。

祥「実は―…




 ―回想 約1時間前―



鴻「祥ーおはよ…あれ?万里?」

祥「はよ。」

万里「おはようございます。」

 鴻が起きてホールから南側の『食堂』へ来た時。

 そこには祥と万里がいた。

鴻「祥が早いのはいつものことだけど…万里は珍しいね…。」

万里「そうですか?俺、ずっと部屋でゲームしてたんですけど、そしたらいつの間にか朝になってたんですよ。いやぁ、メイド服着たゴリラが強いのなんのって。」

 そう言いながら、あまり疲れた様に見えない万里。

祥「なにその『メイド服着たゴリラ』って…;どんなゲームしてんだよ。」

鴻「前から聞きたかったんだけどさ…」

 鴻は真面目に聞く。

鴻「あなた、不死身ですか?」

万里「いや、違いますけど?」

 いつも通り、やんわりと笑いながら言う万里。

 こんな調子で、朝食までは平和だった。

 しかし。

万里「そういえば、たまに俺の書斎に入ってる人がいるようなんですけど、あれ、鴻がやってます?」

鴻「…?違うよ?」

万里「や、鴻でしょう。」

鴻「榎璃じゃないの?」

祥「……放浪の人が入り込んだ、ってことも…」

鴻「それドロボーじゃん。つーか有り得ないっしょ。」

万里「榎璃ですかね…」

鴻「そうだよ。ってか証拠もないのに人を疑うってどうなんだろうね。」

 『ガタッ』

 椅子の音がして、万里がいきなり立ち上がる。

万里「『疑う』って何ですか!?俺は悪い意味で言ったんじゃありません!」

 それを聞いた鴻も『バンッ』と机を叩いて立ち上がる。

鴻「はいはい、すいませんでしたね!でも、そういう風に不用意に発言してるといつか痛い目見るって事なんじゃないの!?」

万里「な…!?そっちころ、いつもホールのソファで居眠りなんかして!そんなんじゃ、いつか殺されますよ!」

鴻「万里に言われたくないよ!いつも歩きながら本読んだり、ゲームしたり!そんなんじゃ、いつか殺されるどころか自分で事故るよ!」

 これを聞いて、万里は完全にキレたようだ。

万里「鴻のバカたれーーーー!」(回想終)


祥「―って事なんだよ。」

榎璃「へー…なんとまぁ下らない。」

祥「うっせ。」

榎璃(兄妹だ…!こいつと鴻、マジで兄妹だ…!)

祥「あ、俺、鴻の様子見てくるわ。」

榎璃「じゃ、あたしも万里追いかけるよ。」

祥「昼飯、どうする?」

榎璃「あの二人が落ち着いてからでいんじゃない?」

祥「じゃあ、夕飯には絶対な。」

榎璃「わかった。じゃ。」

祥「おう。」

 そう言って、祥は食堂を出て行った。

 残された榎璃もカフェオレを飲み干すと、『search// 佐藤 万里』と唱えた。





 ―前8時53分 羽生兄妹の仕事部屋―



 祥は仕事部屋のドアに掛かった『立入禁止』と書かれた銀のプレートを無視して、鴻が居るであろう双子の仕事部屋へと入った。

祥「鴻ー、いるー?」

鴻「ノックくらいしてよ…」

 デスクの椅子に座っていた鴻がムクリと顔を上げた。

 ずっと机に突っ伏していたのだろうか。額にはノートの痕がくっきりと赤く付いている。

祥「…ノートの痕、付いてるぞ。」

鴻「うぉっ!?」

 鴻は額に手をやると、痕を隠すように前髪を掻いた。

祥「なんか、お前にしちゃ珍しくハデにやったなあ…」

鴻「そーなんだよね…」

 鴻は立ち上がり祥の前に向かった。

鴻「ねぇ、祥…」

祥「ん?」

鴻「私、嫌われたかなぁ…」

祥「は?」

 鴻は祥の肩を掴んで、勢いよく揺さぶった。

鴻「だぁー!どーしよー!いや、私が一方的に悪かったんだし嫌われんのも当たり前だけどさー!でも、何か…よく分からんけど何かー!」

祥「落ち着けぃ!」

 そう言って鴻に正面からチョップを入れる祥。

鴻「ぁだっ…!」

祥「んな下らない事で嫌われるはずねぇだろ。」

鴻「そう…そうだよね!」

 鴻は『ポスッ』と音をさせてまた椅子に座り込む。

鴻「もともと仲良かったわけじゃないし…ってか、最初っから嫌われてんだから、こんな事で嫌われるはずないよね!」

祥「…なんでお前はいつもそういう方向に走るかなぁ…」

鴻「だってそうじゃん!」

祥「そんな事言ってたら、いつかホントにあの二人の方から離れてくぞ?」

鴻「だってもともと近くないもん!」

 ふてくされたように隣にあったクッションに顔を埋める鴻。

祥(…もん?)

鴻「どうせ、私なんか邪魔なだけなんだよ…皆表に出さないだけで。」

祥「だーかーらぁー…何でそういう方向に走るんだよ…」

鴻「じゃあ何?あんた自信過剰ですか?」

祥「ある意味お前がね…。つーか俺の事じゃないし。俺が自信過剰ならお前は被害妄想だよ。まあ、後でで良いから誤んな。」

鴻「…うん……」




 ―同時刻 万里と榎璃の仕事部屋―



 一方こちらは榎璃、ちょうど祥が双子の仕事部屋に入った頃。

 榎璃は今、館内を探している。

 榎璃は仕事部屋のドアに掛かった『立入禁止』と書いてある木製の四角い看板を考慮して、ノックをしてから万里がいるはずの部屋に入った。

 最初に見に行った庭にはいなかったからだ。敷地外に出るとは考えづらい。

榎璃「万里ー?」

万里「榎璃…」

 奥にあるソファーに陣取っていた万里が本から顔を上げる。

榎璃「また、窓から入ったんでしょ?」

万里「……。普通に入って誰かに会ったらやだし。」

榎璃「それよりも…何か、ハデにやらかしたみたいね。」

万里「あれは、鴻が悪いんだ!」

 ふてくされるように、持っていた本を閉じろ万里。

榎璃「祥から聞いたわ。まあ、鴻の言い方も悪いと思うけど…。あの子の言い方が悪かっただけで、内容は注意でしょ?あんた、ホントいつも危なっかしいし。(そうでも言わないと弁護できない)」

万里「そうかもしれないけど…」

榎璃「そうなのよ(たぶん)!」

万里「でも、これで決定的に嫌われちったかなぁ…」

榎璃「…はぃ?」

万里「だってさぁ!最近鴻、何つーか…避けられてるって言うか…何て言うか…」

 理由もなく本のページをパラパラとめくりながら言う万里。

榎璃「気のせいよ。」

万里「即答!?」

榎璃「だって、あたしなんかアレだよ!?『jet-black』よ!?」

万里「そっかぁ…」

榎璃「…」

万里「…そうだよな!」

榎璃「…そういう反応されると、むしろあたしが…」

万里「気のせいだよ!」

榎璃「即答!?…まあ、後でで良いから鴻に誤りな?」

万里「…ああ。…でも、許してくれるかな…」

榎璃「…大丈夫よ(多分)。」





 ―12時00分 食堂―



鴻「ねぇ、祥ー…マジでどーしよー…」

祥「だーかーらー!大丈夫だって!」

 喧嘩から数時間。

 昼食の時間。

 鴻は祥の説得で、早めに食堂へ行き万里達を待っていた。

 『ガチャ』

 ドアノブの回る音がした。

榎璃「おーい、祥!万里連れてきたよ!」

 そう言って榎璃が入ってきた。もちろん、後ろには万里がいる。

鴻「あ…万里…。えーと、その、さっきは…」

万里「?」

鴻「ご…ごめ…………っ!」

 そこまで言っておいて、何かのスイッチが入り、言葉を止めた鴻。

鴻「……さっきは、馬鹿丸出しだったね。やっぱり、いつか殺されるんじゃない?」

 『何かのスイッチ』とは、不運にも逆ベクトルへの起動装置のものだったらしい。

万里「なっ…!そっちこそ、いきなり何だよ!そういう礼儀知らずが殺されんじゃねぇの!?」

万里の瞳が一瞬、金色に変わった。

鴻「……っ!」

 (何かに)耐え切れなくなって逃げ出す鴻。

万里「あ…どうしよう榎璃ー!まだ怒ってるみたいなんだけど!」

榎璃「…何やってんの、アイツら?」

祥「…さぁ…。」

万里「やっぱり、許してくれないのかぁ!?」

 そう言いながら榎璃の襟首を持って揺さぶる万里。

榎璃「絞まってる!絞まってるよ万里サン!」

万里「ぁ!?…悪い…」

祥「…」

榎璃「…祥?」

祥「……アレだ。」

 祥が何か思い付いたように立ち上がる。そして、何も言わずにスタスタと部屋を出て行ってしまった。

榎璃「ええ!?ちょ、祥!アレってどれよ!ねえ!」

祥「ちょっとやる事思い付い…じゃなくって、思い出したから、部屋行ってくる!じゃ、夕飯にまた集合ってことで!」

榎璃「ちょっ、待って…!」

 部屋に残されたのは立ち尽くす榎璃と、半ば放心状態の万里だった。

榎璃(…この状況をあたしにどうしろと…?)





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