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名もなき旅人の冒険譚  作者: 8の字
第一章 ここが冒険譚の始まり
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5 俺はなんとしてでも外に出る

夏は暑いですね。おかげで昨日はぐったりでした。

場所は村の南東部にある穴の中、俺は今母ちゃんもとい、アカメと対峙している。


「この姿を見ても怖じけず立ち向かうとはさっきと比べて成長したねえ。さすがは我が息子だ」


「いいや?そんなことはないぞ、今の俺を見た感じだとなんともなさそうだけど内心ガクブル状態だ」


今のアカメには角や紋様といった人間にはないものが付いており、その姿は外のどこかにいるとされるオーガというにふさわしい姿だった。

ユーナの説教のおかげで立ち向かうことができた今でもめっちゃ怖い。


でも、怖いからって理由で引き下がったりなんか絶対しない。もしここで引き下がったらみんなの期待を裏切ってしまう。

俺はつばを飲み込み手を強く握りしめ、アカメをにらむように目を合わせた。


「実の母をにらむとはこれは立派なこった。たくましくなったじゃないの、昨日と比べてまるで別人が乗り移ったみたいに変わったじゃない。立派よあんた、

あの人ほどじゃないけど」


あの人とは父ちゃんのことだ。夫loveのアカメは夫こそ男の頂点と思っているほどであり、村の男たちの熱い視線に対してはがんを飛ばし、夫に対してはまるで別人かのようにあまあまな声で擦り寄っていたとのことだ。そのため、村の男たちにとって夫と比べられると言うことは大変名誉とされていた。

幼かった頃の俺から見た俺の母ちゃんに父ちゃんと比べられて感激している男たちの景色はなんともひどいものだったよ。今でも脳から離れられない。


「さて、お話はこれで終わりだ。準備はいいね我が息子」


「ああいいさ、こっちは元から準備万端だ!

いくぞ!」


手をパチンと合わせ戦う準備はいいかと尋ねるアカメに俺はできてると答え早速攻撃を仕掛けた。


「先手必勝!おらっくらえ!」ブン!


アカメにめがけてトマトを投げた。

それをアカメは簡単に掴み握りつぶした。

潰したことによるトマトの果汁が溢れ出し彼女の正面の視界を遮った。

その一瞬の隙を見逃さず姿勢を低くして背後に回り込み、背中に向けて強烈なパンチをかました。


しかし、それがアカメに当たることはなかった。

彼女の左手が俺の拳をつかんだのだ。


(うっ動けない)


「今のはいい動きだったよ。でも、不意打ちなんて私には効かないよっ!」


「ぐっ…!」


アカメは俺の拳をつかみながら後ろ足で腹部にめがけて蹴った。恐らく手加減してくれたのだろうが、俺とアカメとの力の差は歴然、今ので肋骨にひびが入っただろう。

そして俺はアカメの発言に対して思い出したことを口にした。


「…もしかして気ってやつを読み取ったのか?」


俺は昨日の夜にアカメが言っていた「気」と言うものを思い出した。あの時もそれで自分の行動がばれたのだ。


「よく覚えてたじゃないか、そうだよ私はあんたの気を読み取った。この私だけがもつこの力でね」


母ちゃんだけがもつ?どういうことだそれはまた彼女から訳の分からないことが出てきた。


「またなんだそれはって顔をしてるね、こいつはスキル…って言ってもまだわかんねえか。いわゆる私が持つ能力だ。これは人から溢れる気っていう私しか見えないオーラを読み取ってその相手の行動、意思を知ることができるんだよ。」


(なんだよそれ、ずるすぎだろ。つまり俺の次にやる動きも考えも丸わかりじゃないか。そんなのどうやって倒せばいいんだよ)


「お前が私を倒す?青二才が私を倒そうだなんて百年も早いんだよ!もっと強くなってからいいな!」


(ああもう、早速心を読まれた。ここから先は慎重に動かなければ。さて、これはどうしたものか)


たとえ横や後ろといった死角から攻めようとしても俺の気を読み取って防がれてしまう。


――だったら、読み取ってしまうのならこうすればいい。


「んっ!」ダッ


「あっおい、何逃げてやがる!?」


俺は即座にバックのところに走り出した。

そしてバックの中から急いであるものを探った。


「私の前で背を向けるとはいい度胸だなあおい!」


アカメは俺が背を向けたことに対して怒りをあらわにして速からずとも恐怖心をわかせる足音で歩いてこちらに向かってきた。


(ええと、どこだどこに入れたっけ…あ、あった!)


そして遂にあるものを見つけたとき、すでに彼女は俺のすぐ後ろに迫っていた。


「さあてもう逃げられないぞ。もう容赦はしない、痛い目みて反省しな!」


俺の髪に右手を大きく広げて掴みかかろうとした。

そして彼女が油断したその隙を俺は見逃さなかった。

バックの中を探っていたあるもの、コショウの粉末を彼女の目に目がけて放った。


「うわっ!ゴホッゴホ…てめえ今何をかけた」


「この隙をさらに逃がさない!」


アカメは今目にコショウが入り開けない状態でいた。そこに俺の右足蹴りが彼女の腹部に見事くらい、少しだけ後ろに吹き飛んだ。


「母ちゃんの目をつぶすためにバックの中からコショウを取り出したんだ。ちなみに言っとくが俺は決して逃げたわけじゃ無いからな?」


アカメの目をつぶすこと、それこそまさに俺の狙いだった。

ほら、実際に今の彼女は


「ちっ、よく考えたじゃない。おかげであんたの気が見れなくなったよ」


結果は大成功、気を読み取ってこっちの行動を先読みしてしまうというのなら目を見えなくして気を読み取れなくすればいい。

もしアカメが俺がバックに向かってコショウを取り出して目をつぶすこと先読みしていたらということを懸念していたが、幸い彼女が俺が逃げたと思い込んで能力を解除し慢心してくれたのが助かった。俺は母ちゃんを信じてたぞ。

何はともあれ、これで俺とアカメは同じ土俵に立った。


「目を見えなくしたからって勝てると思うんじゃないよ」


「ああ、そんなの分かってるよ、何せあんたは俺がよく知る母ちゃんだからな」


―――――――――


かつてデンが足止めをしていた場所に戻ってきたユーナはデンとともに戦いの被害が及ばない距離のところで観戦していた


「あいつ意外に戦闘ってできたんだな」


「いや、これは多分彼のお母さんだからこそ戦えてるのだと思う」


「え、そうなの?ごめん俺戦いとかよくわかんないから詳しく説明して」


「私も戦いなんて知らないわよ。でもまあそうね、彼にとってお母さんは生まれた頃からずっと一緒にいてお母さんの性格、行動、癖を知っているからこそ戦える自信があるんだと思う。さっきあいつがバックに取りに行ったのはお母さんが自分に対して余裕であるという慢心をもって能力を使わずに歩いてくるって信じてたのでしょうね」


「お前、意外なところで才能を開花したな。…意外なところにも人って才能を持つんだなあ」


「うるさいわ!」


ユーナはデンの足をゲシゲシと蹴った。

そんなこんなでふたりはあの親子喧嘩を眺めていた。さっき話していた瞬間だろうと目を離したりしない。なにせこれは彼らの未来を賭けた戦いなのだから


(おあなたなら勝てると信じてる、がんばれ)


ふたりにできるのは心からの応援だけであった


―――――――――


ドオン!と響く衝撃音、この親子喧嘩は熾烈を増していった。この音がなるたびに上から土がポロポロとこぼれ落ちていた


「はあっはあっ母ちゃんの体いてえ、おかげで俺の手と足はボロボロだ」


「初戦デビューのあんたにしちゃなかなかすごいじゃないか。やっぱりあの人の血を受け継いでるからかねフフ」


(いや、言うのだとしたら父ちゃんというより母ちゃんの方が正しいと俺は思うよ)


戦いが長引くたびに両者の体力は差が開いていった。俺がボロボロなのに対しアカメはどこにも損傷がないのであった


(やっぱ母ちゃん化け物だわ。あれだけ殴ったり蹴っても全く効かないしそれどころかこっちに痛みが来るんだけど)


アカメの肉体はオーガの中でも特に頑丈であった。並大抵の武器では逆にそっちが壊れるほど、そんな彼女の肉体からすれば俺の攻撃はかゆいものだった。


(あの肉体に損傷をつけるのならあれと匹敵するくらい頑丈な奴じゃないと対抗できない。…本当にいやだけど今の俺が一撃を加えるのならあれしかない)


あることをする覚悟を決めた俺はアカメに対してこう言った。


「俺は今から正面攻撃をする。‘その頭かち割ってやるよ’」


そう言って俺は有り余る足の体力すべてを使ってアカメに向かって全力で走り出した。すべては俺の最強の一撃を食らわすため。


(ここまでの自信一体何が来る)


止まるな絶対に止まるんじゃない。俺は勝つ、母ちゃんに勝って――


「俺は、冒険に出るんだ!」


最強の一撃、自慢の石頭の頭突きがアカメの前頭部に喰らった

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