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第36話 差し止められた王都献上
朝一番で、王都から騎使が駆け込んできた。
冬至献上布の正式差し止め命令。北方織房の納品資格を一時停止し、代替制作先を南方共同織房へ変更するという。
「早いですね」
私は封書を読み終えた。
「会議前に結論だけ決める気です」
書面の余白には、王都衣装商組合の緊急承認印。その横へ、またしてもイェルク・ベッカーの商印が添えられている。
クラウスが封書を取り上げた。
「二日、止める」
「止められますか」
「侯爵家名義の婚約披露献上と重なっている。照合会議が終わる前に制作先を動かせば、王都側も体面が悪い」
その理屈は強かった。相手が体面で動くなら、こちらも体面で縛ればいい。
昼過ぎ、アデライーデが自ら来た。
「まだ粘るのね」
「ええ。帳面が残っていますので」
「差し止めはもう出ましたわ」
「仮のものです」
私が返すと、彼女はふっと笑った。
「あなた、どうしてそんなに仕事へ執着するの」
私は考えるまでもなく答えた。
「執着ではありません。返してもらうだけです」
相手の目が一瞬だけ揺れた。
奪う側は、奪われた側が静かに取り返しに来ることへ案外弱い。




