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第34話 消された嫁資布票
ロッテ嬢の目録を頼りに、私は王都から送られてきた嫁資布票の原紙を照合した。
表から見ると整っている。けれど裏へ灯りを当てると、削られた筆圧が浮き出た。
「ここです」
私はルーペを差し出す。
元の記載は《北方織房 婚約礼装試織布 一時預かり》。それが削られ、《アルメリン公爵家 持参布》へ書き換えられていた。
エルザが低く唸る。
「婚礼の布票を隠れ蓑にしたんだね」
さらに右端には、見慣れた記号があった。税台帳の追記に使われていたのと同じ、帳場書記の省略印だ。
「同じ手です」
「役場と商組合と南方商会が繋がっている?」
「ええ。継承争いを作って布票を書き換え、献上布と婚礼布を混ぜる。失敗しても『管理の混乱』で済ませるつもりだったのでしょう」
私は嫁資布票の下に、救い出した受取証を重ねた。反物番号、後見人名、仮預かり日。全部が一本の線になる。
誰かの婚礼も、誰かの工房も、彼らにとっては帳面の入れ替えでしかない。
でも私には違う。
布票一枚の向こうには、働いた人の時間がある。待っている花嫁がいる。守りたかった工房がある。
だから、この削り跡は絶対に見逃さない。




