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第33話 公爵令嬢の持参布目録

午後、意外な客がやって来た。


 西方アルメリン公爵家の令嬢ロッテ・アルメリン。王都でも名の通った家の次女で、冬の婚礼を控えているという。


「あなたのところへ頼んだ持参布が届かないの」


 開口一番、彼女はそう言った。


「正確には、私の持参布箱に入るはずだった反物が、途中で別名義へ振り替えられている」


 差し出されたのは、嫁資布目録の写しだった。封印付きの正式控えで、布箱番号と反物番号が細かく並んでいる。その中に見覚えのある番号がある。


《N-28》


 返ってこなかった婚礼反物の番号と一致した。


「なぜ公爵家の持参布へ北方織房の番号が」


「私はそれを聞きに来たのよ」


 ロッテ嬢は目を細めた。


「しかも管理人欄には、アデライーデ・レンツの後見人名がある。婚資管理の委託先として」


 私はすぐに気づいた。盗まれた反物は、単なる横流しではなく、公爵家の婚礼準備に紛れ込ませるつもりだったのだ。持参布箱へ入ってしまえば、所有権の線が一気に曖昧になる。


「ご協力いただけますか」


 私が問うと、ロッテ嬢は当然のようにうなずいた。


「私の婚礼布まで雑に扱われたのよ。むしろ徹底的にやるわ」


 頼もしい人だった。華やかだけれど、布札の番号を自分で覚えている人は信用できる。


 私は目録の写しへ新しい付箋を貼る。


『公爵家婚礼布 番号重複 後見人名義一致』


 相手は一つの嘘を通すために、他人の婚礼まで勝手に使っている。


 その雑さは、そろそろ隠しきれなくなっていた。


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