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白昼堂々夢でも見てるわけ?

「さて、探してみるとは言ったけど、ここどこだ?」


 翔は森の中を適当に歩いた事によりすでに迷子になっていた。見渡す限り、木、木、木。そりゃ木が多ければ森か! と若干現実逃避をしながらも、今更ながら目印になりそうなものを探して歩いて早い5分。やらかしたなと背中に嫌な汗をかきながらも周りを見渡しただ真っ直ぐに歩き続けていると、どこからか子どもの泣き声が聞こえた。


 もしかして探しているひのか!? と翔は声のする方に走る。少し走ると大木の下に1人の少女が怯えながら立ちすくんでいるのを発見する。


「大丈夫か!?」


 すぐに少女の元に駆け寄り、声をかける。すると少女は怯えるように翔を見た。そして震える唇で言葉を紡ぐ。


「……お兄さんは、お化けじゃない?」

「? 俺は人間だからお化けじゃないよ? えっと、君は華奈の友達のひの?」


 不思議そうに首を傾げながら、翔はひのの視線に合わせて優しい笑みを浮かべる。


「華奈が心配していたよ? 一緒に帰ろう」


 自分が迷子になっていることも忘れて、翔はひのに手を差し伸べる。


「でも、この森怖いのがいっぱいいるの。アニメで見たお化けみたいなのが」 

「お化け?」


 翔はお化け等非科学的なものは信じていない。ここは木が鬱蒼と茂っている為、木の影が子どもにはお化けのように見えたのだろうと当たりをつけながらも、否定をせずに言葉を紡ぐ。


「それは怖かったね。何か出たら俺が守るからお家に帰ろ?」


 そう優しく伝えるとひのは震えながら、翔の手を取った。


「お兄ちゃんは華奈の友達? 私は雛乃(ひなの)って言うの。友達に陽菜(ひな)がいるから、ひのって呼ばれてるんだ」


 1人では無くなったことに安心したのか、雛乃は不安を紛らわすように話す。


「そうか、雛乃。俺は翔だ、よろしくな」

「翔お兄ちゃん」


 翔の名前を復唱すると出会って初めて雛乃は笑顔を見せた。翔は雛乃と手を繋ぎ、とりあえずまっすぐ歩いて来た筈だから、来た道を戻ればいいかと元きた道を戻り始める。


 数分ほど歩いていると、不意に雛乃が小さく悲鳴をあげた。慌てて雛乃を見ると顔を真っ青にして右側を向いて立ち尽くしている。


「どうした?」


 只事じゃないと気付き翔は声をかけると、雛乃は震える指で凝視している場所を指差す。


「あそこに、お化けが……」


 怯えたようにそう呟く。すぐに指の先を翔は確認するが、そこには何もなく、お化けと間違えそうな木の影もなかった。


 ガサッ


 不意に視線の先から何もないのに音が聞こえた。すぐに雛乃の手を引き近くの木の影に隠れる。

 何も見えないし、気配もない。それでも本能が警鐘を鳴らす。あそこに何かいる……と。そしてその何かを雛乃が見えていると言う事を。純粋な子どもにはお化けという非科学的な物が見えるのかもしれない。説明できないだけで、存在しているのでは? そんな疑問が次から次へと溢れ出してくる。


 これからどうしよう。雛乃を守らないとと背中に嫌な汗を感じながら翔は神経を集中させた。相手は見えない化け物だ。どう対処すればいい。無理ゲーじゃないかと思いながら雛乃と一緒に何かがその場を去るのを待つ。


「君達、こんなところで何してるわけ」


 不意に後ろから声が聞こえ、恐怖で翔と雛乃は抱きしめあった。声も出ない。恐る恐る後ろを振り向くとそこには先程忠告して来た少女がいた。


「お前はあの時の……!」


 小声でそう叫ぶと、少女は嫌そうな顔をする。


「今すぐ隠れろっ! そこに何かいるんだ!」


 小声で叫びながら危険を少女に伝えるも馬鹿にしたように笑う。


「何かってなに? 白昼堂々夢でも見てるわけ?」

「お姉ちゃん、さっきあそこにお化けがいたの」


 雛乃は先程恐ろしい物を見た場所を指差す。既にお化けはいなくなっていたが恐怖は消えない。


「お化け? そんな物いるわけないよ。幻覚でも見たんじゃないの」

「でも、何もないところで何かが動く音がした!」

「恐怖で風の音を錯覚しただけだろ。それよりもここにいられると邪魔だ。道まで案内する」


 少女は怯えた様子もなくそう言うと歩き出した。


「雛乃、もう怖いのはいないか?」


 翔が確認すると、雛乃は頷く。それを見て安心したように笑うと翔は雛乃の手をしっかりと握りなおして、少女の後をついて行くことにした。開いている方の手で雛乃が見つかったと和也にメッセージを送りながら。

 数分ほど歩くと、森が開けてガードレールと道、学校の校舎が見えて来た。道案内を終えると少女は「邪魔だからもう森に入ってくるな」と吐き捨てて、元きた道に戻って行く。


 翔は追いかけたい気持ちがあったが、そうすると雛乃が1人になってしまう。どうしたものかとガードレールを乗り越えて道に戻り考えていると、遠くから和也が駆け寄って来た。


「翔!!」


 大声で名前を呼びながら和也は近づくと、翔の隣にいる雛乃を見て安堵した表情を浮かべる。


「雛乃ちゃんだね? お母さん達が心配してたから一緒に家に帰ろうか」 


 雛乃の目線に合わせてしゃがみ込みながら、和也は優しく笑う。それを見て雛乃は小さく頷いて翔の手を離す。


「じゃぁ、和也あとは頼んだ! 俺はあいつ追いかけてくる!」


 そう言って、翔は和也の返事も聞かずにガードレールを乗り越えて、少女が消えた森の中へ戻って行った。


「おい、翔!!」


 和也は慌てて追おうとするが雛乃の存在を思い出し、思いとどまる。まずは雛乃を家に送り届けるのが先だ。笑顔を作り、雛乃に自己紹介をすると手を握り、雛乃の家に向かって歩き出した。

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