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第51話 魂のカケラと器

 時は少し遡る。朔夜達と昇降口で別れたゆうとコウは、体育館に向かって歩いていた。


「で、何を企んでる。天邪鬼にバレる可能性があったから、あいつらの前で言わなかったんだろ?」

『おお、流石、黄竜様。確かに周りに人はいないから、言ってもいいか』


 コウの質問に茶化すようにゆうが答える。そして、周りをキョロキョロと見回すと、1人で納得したように頷いた。


『実はさ、学校(ここ)に俺の本体の生まれ変わった肉体があってさ』

「はぁ? ってか、なんだその言い方は」

『ん? 事実だろ? 俺は魂のカケラで、本体ではない。知識は持っているが切り離されて以降の、俺としての自我を持ってからの本体の記憶ないし、別人だよ』


 呆れたようなコウに、ゆうは何を今更というように話す。宙を漂いながら、ただ淡々と事実だけを告げる。

 ゆうは幽霊だが、元々人だったのかと聞かれると答えに迷う。ゆう自身が自分を魂のカケラと思っており、人だと思ったことがないからだ。それでも長い年月、力はないが知識だけはずっと維持してきた。だから、ゆうという人格はあると断言できる。

 それでも人とは別のものだというのが遥か昔からゆうが自分に下した結論だった。


 そういえば、久遠とはよく酒の肴としてこの議論を交わしていたが、コウにはしたことがなかったかと気付く。驚いている様子のコウにこのタイミングですることじゃなかったか? と少し反省した。

 まあ、言ってしまったものは取り消せない。それに儚い時しか生きれない人間じゃない、悠久の時を生きる神獣だ。これぐらいのことで動揺して動けなくなることはないだろうと適当に流すことにした。

 だから無言になったコウを無視して、ゆうは続ける。


『それで、その学生の身体なんだけど、力は受け継いでるみたいでさ。封印されている様子もない。きっと、記憶がないから使い方を知らないだけ。で、俺は知識はあるけど力がない。……合わさったらちょうどいいと思ってさ』

「……っ!? 待て、もしかしてこれは」


 コウは自分が無造作に持っていた腕輪について気付いたようだ。驚愕した瞳でそれを見ていた。黄竜でも驚くことあるんだなとゆうはどこか冷めた感覚でその様子を見つめる。


『そういうこと! まあ腕輪には他にも久遠に色々とおまけ(・・・)つけてもらってるんだけどさ。これで、天邪鬼を永遠に追放しようかとな』

「……追放だぁ?」

『おう、これは奥の手だから秘密だけどな!』


 ゆうはそう言うと、悪戯っ子のように笑った。まだ上手くいく可能性は確実じゃない。下手に期待されて、失敗した時のリスクを考えると伝えるのは今じゃないと判断した。

 そもそも、翔の身体には取り憑けた。しかし、久遠の道具があるとはいえ、果たして上手くいけるかの保証はない。

 悠久の時を過ごしていながら、人に取り憑いたのが翔が初めてだったのだから。


「はぁ、何を考えているかわからねぇが、危険はねぇんだよな」

『……多分』

「……は?」

『やったことないからさ、100%安全とは言えないだろ? これで絶対大丈夫! とか言って、ダメだったら洒落にならないし』

「いや、後遺症とか大丈夫なのか?」

『そこは久遠作だからな! 信頼している!』

「……急に不安になってきた」


 コウが頭を抱えているのを見て、ゆうは笑う。深く考えるのは危険が近くにある時だけでいい。何もないのに気を張っていたら、本番で力が出せない可能性がある。長く人を観察してきたからこそ、ゆうはその結論だけは間違いないと信じていた。


『とりあえず、コウにお願いしたいのは、器の学生の確保と結界外に出すこと。それと、器に腕輪を装着する! あっ、出来れば意識は奪って欲しいな。気絶させた状況で! 意識がなければ、覚えてなくて普通の生活を今後も遅れるかもしれないからな!』

「注文が多い!」


 ゆうは思いついたことを深く考えずに、ポンポンと言う。それに、コウが少しキレた。相変わらず、短気だなと思いながら、ゆうはコウの目の前を逆さで浮く。


『でも、出来るだろ?』


 コウの力量は信頼している。これくらい造作がないことも知っていた。だから、ゆうは何気ないことのように尋ねる。出来ないという返答はないと初めからわかっているのだから。


「あー、もう、テメェのそういうところは気にいらねぇ」


 頭をガシガシと掻きながら、コウは不服そうだ。しかし、言外に了承された為、ゆうは笑う。

 本当に素直じゃないなと思いながら。

 それから無言で体育館まで歩く。体育館の近くまでくると、上空よりリンが降りてきた。神獣の姿から、降りると同時に人型となる。


「主様に何かありましたか!?」


 そして、コウに掴み掛かる勢いで詰め寄る。当然ながら、ゆうの存在はガン無視だ。


『さやには、酒呑童子がついてるから大丈夫だ』

「はい? 酒呑童子ですって? 鬼の首魁がなんでここにいるんですか? 待ってください、まさかあんな得体の知れない鬼に主様を任せたのですか!?」

『得体の知れないって……、コウといい、昔何かあったのか?』


 コウが酒呑童子を嫌っていることは知っている。しかし、この様子だとリンとも仲が悪そうだ。ゆうが知らないだけで、何かあったのか? と疑問には思うが、今はそれどころではない。


『まあ、いいや。あいつはさやの味方だから、安心して任せていい! 俺が保証する』

「貴方の保証は、一切信用ならないのですが……」

「テメェら落ち着け。今はそれどころじゃねぇだろ!」


 コウの一喝でリンがハッとしたように視線を逸らした。全くとゆうが呆れていると、お前もだぞ? という目でコウに睨まれる。やっぱり、俺もカウントされていたかーとゆうは遠い目をするが、本当にそれどころじゃないことを思い出す。


『リン、結界の中から1人外に出したい。可能か?』

「何を考えているのですか……?」


 ゆうの言葉にリンは怪訝そうに顔を歪めた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


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